第51話 食べられたリディアとノーラとニナ
シェイリーに俺のスキルについて話を聞いていたら、突然エリーが近付いて来た。
「アレックス……まさか、そんな事をする人だったの!?」
「エリー……いや、結果的にそうなってしまったから、言い訳はしない。エリーが思っている通り、俺はリディアたちを……」
「食べたのね!?」
「いや、そういう表現をされると困るのだが、流石にそこまでの関係では無いよ。ただ、今後どうなるかは、何とも言えないが」
エリーが俺から少し距離を置き、困惑した表情を浮かべている。
幼馴染であり、幼い頃からずっと一緒に居たエリーに、こんな態度を取られるのは初めてかもしれない。
「エリーさん、待ってください。アレックスさんには、私から言ったんです。お気持ちはわかりますが、ご理解いただけないでしょうか」
「ぼ、ボクもだよ」
「ニナも。ニナが、そうしたいって思ったからなんだー」
リディアに続き、ノーラとニナが俺をフォローしてくれるものの、エリーの表情は変わらず、一方で、
「ご主人様っ! でしたら、この私も食べて欲しいです! 私を食べていただけるのなら、四番目でも構いません。どうか、どうかお慈悲を……」
モニカが食べてくれと言い出した。
……いや、変な事を考えてはダメだ。
食べて欲しいと言うのは、エリーが言う性的な食べるではなく、物理的に食べて、スキルを得て欲しいって意味に違いない。
「ボクは、お兄ちゃんが良いっていうなら、構わないと思うよー」
「ニナもー。皆一緒の方が良いもんね」
ノーラとニナは、おそらく食べるの意味を分かっていないのだろう。
さっきもリディアに同調しただけ……食べるを恋人同士になるという意味だと思っているのではないだろうか。
いや、恋人同士になった以上、いつかはそういう事にもなるかもしれないが、流石にこの二人は知識が無さ過ぎるように思える。
そういう事は、きちんと理解した上でじゃないと。
「モニカさん!? 何を言い出すのよっ!? 食べられちゃうのよ!?」
「エリー殿には以前にも話したが、むしろ私はそうされたいのだ。ご主人様に助けられた命なのだから、ご主人様に食べていただきたい……というか、毎晩めちゃくちゃにされたい。許されるなら、今すぐにでも」
「えぇっ!? いくら治癒魔法で治るとは言っても、流石にそれはちょっと……そもそも、アレックスが人を食べるっていうのが、どうかと思うし」
ん? 治癒魔法……って、もしかしてエリーは、食べるって言うのを物理的な意味として話していたのか?
「エリー。もしかして、食べるって……俺がリディアたちの肉を食べたと思っているのか?」
「……あれ? 違うの」
「あぁ。どうやら唾液の提供で発動するらしくてさ。というか、いくら俺でもリディアたちの肉を食べたりする訳ないだろ?」
「そ、そっか。私ったら、てっきり……でも、唾液の提供っていうのも、ちょっと気持ち悪くない? リディアさんたちがスプーンとかに唾液を溜めて、それをアレックスが飲むんでしょ?」
「……なるほど。そんな手もあるのか」
舌を入れてもらい、直接唾液を取り込んでいたが、唾液の摂取だけであれば、確かにキスする必要は無い。
いやまぁ、リディアたちとは恋人関係なので、直接で構わないんだけどさ。
「え……ちょ、ちょっと待って。そんな手もあるのか……って、違うの!? だったら、どうやって? まさか……リディアさんから言ったっていうのは……」
「あぁ。俺とリディアは……いや、ノーラとニナも含め、恋人関係にある」
「な、何ですって!? リディアさんだけならまだしも、ノーラちゃんやニナちゃんにまで手を出す……って、アレックスは何を考えているのよっ!」
リディアたちは複数人で恋人関係になる事を承諾してくれているけれど、普通はエリーみたいに思うよな。
俺だって、恋人っていうのは、そういうものだと思っていたし。
「ねぇ、アレックス! どうしてリディアさんなの!? どうして、私じゃないのっ!? 昔から……子供の頃から、ずっとずっとアレックスの事が好きだったのにっ!」
「えっ!? そ、そうだったのか!?」
「どうしてアレックスは気付いてくれないのよっ!」
「……すまない。俺は、そういう事に疎いから、直接言ってもらえないと、気付けないみたいだ」
エリーが俺の事をそんな風に見てくれていたなんて、知らなかった。
「……アレックス。今からでも私を選……」
エリーが泣きそうな顔で俺に近寄って来たかと思うと、
「待つのだ。エリーとやら」
「待った! エリー殿、少し話がある」
シェイリーとモニカが同時に口を開き、強引にエリーを社の中へ連れて行ってしまった。
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