挿話23 アレックスの最初の人となる事にしたアークウィザードのエリー
アレックスが、既にリディアさんと、ニナちゃん、ノーラちゃんの三人を恋人にしていたという、衝撃の事実を知ってしまった。
ノーラちゃんは最近来たばかりだけど、リディアさんとニナちゃんは私が来る前から魔族領に居た二人だ。
やはりタバサさんの作戦は正解だったんだ。
ほんの数日だというのに、何も無い魔族領でアレックスを助けた二人と親密になっている。
うぅ……私が、もう少し早くここへ来れて居れば良かったのに。
「……アレックス。今からでも私を選……」
「待つのだ。エリーとやら」
「待った! エリー殿、少し話がある」
アレックスに、リディアさんたちではなく私を選んで欲しいと訴えかけようとした所で、突然シェイリーさんとモニカさんに止められ、社の中へ連れて来られてしまった。
「二人とも……何なの!? どうして止めるのっ!?」
「我は思考が読めるからな。お主、アレックスに自分だけと恋人関係となるように……と、言おうとしていたであろう」
「そうよ! だって、恋人が三人も居るなんて、おかしいじゃない! だから、アレックスには私だけを見てもらうのよっ!」
「なるほど。お主の育った環境では、男女一人ずつで夫婦だったのだな。だが、元々ここに住んでおった黒髪の一族は、一夫多妻が普通であったぞ? エルフやドワーフに獣人族……多種多様な種族が居るのだから、お主だけの風習を押し付けるのは良くないであろう」
一夫多妻が普通で、多種多様な風習……それは確かにそうかもしれないけど、だからってアレックスが私以外の誰かとキスしているのは耐えられない!
「エリー殿。ご主人様は既にリディア殿たちと恋仲にある。ハッキリ言わせてもらうが、あの三人を遠ざけ、エリー殿だけがご主人様と恋仲に……というのは、今からでは無理だ」
「そ……そんなの、分からないじゃないっ! 私は幼いころからずっとアレックスを……」
「エリー殿。ご主人様が誰とも恋仲でなければ、それも通じていただろう。だが、ご主人様が恋仲になった相手を捨てるような男だと思うか? 私には、到底そのような方には思えん」
「だったら、どうすれば良いのよっ!」
「今、シェイリー殿が教えてくれたではないか。あの三人は、おそらく一夫多妻制の文化で育っているのであろう。であれば、我々もご主人様の妻の一人になれば良いのだ。ここは魔族領……我らの常識や文化を押し付けるべきではない」
私の文化を押し付けてはいけない……確かに、ここはフレイの街から遠く離れた魔族領だけどさ。
「それに、先程ご主人様が素晴らしいスキルをお持ちである事が分かったではないか」
「素晴らしいスキル?」
「あぁ。ハーレ……こほん。一夫多妻において、妻たちを満ぞ……安心させられるスキル――絶倫を! つまり、我らが満ち足りるまで、きっとメチャクチャにしてもらえるハズっ!」
「……わ、私は普通で良いもん! そんなメチャクチャになんて……」
「私も経験は無いが、メイドたちの話では、男性のは凄いらしいぞ! こう、身体の奥から幸せに満たされるそうだ……私も早くご主人様に抱かれたいっ! ……という訳で、私は一夫多妻を受け入れ、妻の一人にしてもらう。エリー殿はどうするのだ?」
モニカさんのだらしない顔が、急に真面目な表情となって私を見つめてくる。
三人と別れて私一人を恋人にしてもらうのは、モニカさんの言う通り、成功する可能性は低いかもしれない。
一方、モニカさんと一緒に、私もアレックスの恋人の一人にしてもらうのは、既に三人が恋人なんだから、二人くらい増えても大丈夫よね?
それになにより、三人が恋人関係になったと言っていたけど、その……こ、子作りとかは未だみたいだし。……ま、未だよね!?
恋人は先を越されてしまったけど、その……私がアレックスの初めての人になるんだからっ!
「分かったわ。私もアレックスの恋人の一人にしてもらう! そしてアレックスと、こ……子供を作るのっ!」
「そうか。エリー殿が考えを改めてくれて良かった。では、ご主人様の元へ行こうか」
モニカさんと共に社を出ようとすると、
「うむ。では、我も行くかな」
「えっ!? まさかシェイリーさんも、アレックスの事を……!?」
「嫌いではないぞ。いや、命の恩人であるし、好意は抱いておるな。だが流石に、我が恋人という訳にもいかぬだろう。だから、時々相手をしてもらうくらいだ」
「あ、相手をしてもらう……って、その姿でですか?」
「そうだが? 何か問題でも?」
シェイリーさんが不思議そうに小首を傾げるけど、十歳にも満たない少女の容姿で――そんなに小さな身体で大丈夫なの?
その、アレックスのアレを見たのは五年くらい前だけど、あの頃でもかなり……って、他の人のを見た事がないから、基準が分からないんだけどさ。
一先ず、私の心も決まったので社を飛び出し、アレックスに向かって一直線に駆けて行くと、その胸に飛び込んだ。
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