第50話 エクストラスキルで得たスキル

「お兄ちゃん、おはよー!」

「お兄さん……おはよ」


 俺の右隣と左隣に居る、ノーラとニナから抱きしめられて、目を覚ます。


「アレックスさん。おはようございます」

「アレックス、おはよ。もうすぐ朝食が出来るわよ」

「皆、おはよう」


 既にリディアとエリーが朝食を作ってくれているらしく、美味しそうな匂いが鼻をくすぐってくる。

 ノーラやニナと共にベッドから出ると、


「おはようございます、ご主人様」

「おはよう、モニカ」

「お飲み物は何が宜しいですか? オレンジジュースとアップルジュースがございますが」


 メイド服姿のモニカがテーブルの傍に立ち、メイドさんみたいな事を聞いてきた。


「モニカ、どうしたんだ?」

「いえ、ご主人様に仕えるメイドとして、お飲み物を用意しようとしているだけですが?」

「……じゃあ、オレンジジュースで」

「畏まりました……はぁっ! ……お待たせしました。オレンジジュースです」

「あ、今絞るんだ。というか、そんなの俺がやるぞ?」

「だ、ダメですっ! 私の……メイドとしての仕事がっ!」


 いや、メイドさんは握力だけでオレンジを絞ってジュースを作ったりしないと思うんだが。

 ……まさか、アップルって答えていたら、それも手で絞れたりするのか!?


「というか、どうして急にこんな事を始めたんだ? 今までも、こっそり掃除をしてくれていたじゃないか」

「あ……気付いてらしたんですか? ……くっ! でしたら、私にも何かご褒美をっ!」

「えぇっ!? ど、どうしたんだっ!?」


 昨日の寝起き……全裸スタイルとのギャップが激し過ぎて困惑していると、


「……昨日、アレックスとニナちゃんやノーラちゃんが、更に距離が近くなっている気がしたんですって。で、モニカさんも、アレックスと仲良くなりたいみたいよ?」


 物凄いジト目のエリーが、モニカの行動の説明をしてくれた。

 だがこれは……昨日、ニナとノーラが裸で抱きついてきた事を、まだ引きずっているな。

 この状態でエクストラスキルの事を話しても、エリーは信じてくれないような気がする。

 エリーのジト目をどうしたものかと考えつつ、


「えっと、俺はモニカと仲が良いつもりなんだが……もしかして、モニカはそう思ってくれていないのか?」

「い、いえっ、そういう訳ではないのです! その、私も……ニナ殿やノーラ殿のように、裸で抱き合いたいのです!」

「いや、それは普通にダメだろ」

「えぇっ!? そんなっ!」


 モニカの話を聞いてみると、予想の斜め上の言葉が出て来た。

 しかし、意外だな。モニカがニナたちと同じ事をしたいだなんて。

 理由もニナと一緒で、仲間外れが嫌……とかなのか?

 ただ、ニナやノーラがお風呂で俺にじゃれつくのと、モニカが裸で抱きついて来るのでは、全然意味が違う。

 今の胸を強調したメイド服でさえ、俺にとっては刺激が強いのに……うん、絶対にダメだ。

 流石にそれは、精神修行の域を超えて暴走してしまいかねない。

 ノーラは俺とリディアがキスしている所を見てマネしてきたし、そんな所を見られたら……よし、この話は忘れよう。危険過ぎる。


「ごちそうさまでした」


 朝食を食べている間もエリーはジト目のままだし、これではいつまで経っても説明が……そうだ!


「さて今日の活動なんだが、シェイリーの所へ行く用事があるんだ。エリーとモニカが一緒に行くとして、ノーラは未だシェイリーに会っていないよな?」

「うん。ボク、シェイリーっていう人は会った事ないよ」

「じゃあ、ノーラも行こうか。となると、残るのはリディアとニナなんだけど……」


 最後まで言い終える事なく、寂しそうな眼差しを向けるリディアに気付く。


「わ、私も行きますっ!」

「お兄さん。ニナも一緒に行くからねー!」


 リディアがニナと共に、一緒について行くと手を挙げたので、結局全員で行く事になった。

 地下洞窟へ入ると、先頭を俺とモニカが進み、すぐ傍にノーラとニナ。最後尾をリディアとエリーという並びで進んで行く。

 怖がるノーラの頭を撫でながら進んで行くと、


「おーい、シェイリー。ちょっと良いか」

「む……アレックス。会いに来てくれたのか。嬉しいではないか」

「あぁ。二つ用事があって、先ず一つ目が、新しく仲間になったノーラを紹介しようと思ってさ」


 何事も無くシェイリーの社へと到着した。


「えっと……ノーラです」

「シェイリーだ。……そんなに怯えなくとも、とって食ったりはせぬぞ?」

「すまない。ノーラは少し人見知り……なのかな? 慣れると、普通に話してくれるんだけどな」


 俺から降りてシェイリーに挨拶したノーラが、凄い速さで再び俺にしがみ付く。

 というか、いつもより位置が高くないか?

 普段は俺の胸に顔を埋めているのに、俺の首の横にノーラの顔があるんだが。


「む? まさか、いつもそうやって抱き合っているのか? 羨まし……こほん。それで、アレックス。まだ何か用事があるのではないのか?」

「あぁ。ちょっとシェイリーに俺を見てもらいたいんだ。何か新しいエクストラスキルが備わっていないか」

「神のスキルが……か? いや、前に見た時と同じで、二つしか……というか、二つもある時点で十分凄いのだがな」


 やはり、そうか。

 リディアたちとキスして光ったのは、既存の魔物を食べて強くなるスキルが発動しているという事だな。

 一先ず、スキルの正体が俺の思っていた通りだと分かったので、改めてエリーとモニカへ説明しようとしたところで、


「しかし、アレックスよ。魔物を食べて強くなるスキルの効果だとは思うが、どのような魔物を食べたのだ? 土の精霊魔法に、木登りスキル、鉱物限定で格納出来る倉庫スキル、絶倫……こほん。短期間で様々なスキルが増えているぞ?」

「精霊魔法!? 俺が!? それに鉱物限定の倉庫スキル……って、ニナのストレージスキルの事か!?」


 シェイリーが普通の? スキルについて教えてくれた。

 しかし、精霊魔法はリディアだろうし、木登りはノーラか?

 最後のは良く分からなかったが、スキルが増えるなんて、そうそう無いだろうし、S級のオークキングを食べて増えたのだと思う。

 そんな事を考えていると、


「ちょっと待って! 絶り……は一先ず置いといて、シェイリーさんが言った他の三つのスキルって、もしかしてリディアさん、ノーラちゃん、ニナちゃんの……」


 背後からエリーの声が届いてきた。

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