第72話 人形たちのスキル
「お兄ちゃん、おかえりー! 魔物とかは出なかった?」
「あ、あぁ。出なかったから、安心してくれ」
「良かったー!」
そう言ってノーラ抱きついてきて……いつのまにかニナもくっついていた。
一先ず二人を安心させたところで、
「ノーラ、ニナ。急な話で悪いんだが、色々あって小さな家を作って欲しいんだ」
「小さな家? どういう事?」
今日の活動内容を変更する。
というのも、小屋で見てしまった、俺とモニカの子供姿の人形アレスとモニーとのアレ。
そして、新たにメイリンが作り出した、それぞれ二体目となる人形のアレクとモカ。
どうして、そうなったかは分からないが、俺が小屋から出てすぐに、アレを始めていたように思える。
アレスとモニーは、最初はそんな気配は無く、モニカが教えたが為に、あんな事になってしまった。
そこはまぁ分かるのだが、どうして二体目のアレクとモカは、教わっていないのに、いきなりアレを始めてしまったのだろうか。
……まぁ理由はさておき、事実としてあんな状態なので、アレスとモニー、アレクとモカがそれぞれ愛し合う仲だと思われるので、住まいを分けてあげるべきだと判断した。
「小さい家っていうのは、メイリンの人形たちの家を用意してあげようと思ってさ」
「アレックス殿!? それはもしや……」
「まぁ、そういう事だ。流石に、あの四体で同じ部屋っていうのはな」
「た、確かに。二対二で事に及ぶなど……こほん。わ、分けるべきか」
メイリンは俺と違う事を考えていそうな気がするが……いや、まぁどちらにせよ、家は分けた方が良いだろう。
「よく分かんないけど、人形さんたちのおうちなんだよね? いいよー! でも、木材は手伝って貰って良い?」
「もちろん。じゃあニナ、手伝って貰って良いか? 木を切りたいんだ」
今回は人形用なので、既にある小屋を一回り小さくしただけの家を作る事に。
特に間取りも無い簡易な作りなので、材料さえあれば、ノーラとニナだけで作れるのだとか。
小屋の東側を、人形たちの住宅エリアとする事にして、先ずは俺とリディアで石の壁を拡張しようとしたところで、
「お母さん。ごめんなさい。一応、服みたいなの出来た」
一体目の人形たちアレスとモニーが、俺たちについて来ていたメイリンの元へ、胸と腰を毛皮で覆った姿で現れた。
二体目のアレクとモカが現れていないのは、まだ服が出来ていないから……という事だろう。……きっと。
「うむ。働く時は、しっかりと真面目に働くように。では、二人は作物を……アレックス殿。妾の子たちは、何をすれば良いのだろうか」
「じゃあ、ここの拡張が済んだら説明するから、少し待っていてくれ」
メイリンと人形たちに待っていてもらい、リディアの精霊魔法で壁を広げていると、
「お母さん。それなら僕も出来そうな気がする……≪石の壁≫」
アレスが精霊魔法を発動させた!?
「えっ!? どうして俺が精霊魔法を使えるんだ!?」
「アレックスさん。以前にシェイリーさんが、私とキスして、土の精霊魔法が使えるようになっていると仰っていましたが」
「あ……そういえば、確かにそんな事を言っていた気がするな。≪石の壁≫……うわ、俺も出来たっ!」
今まで気付いてなかったけど、俺も土の精霊魔法が使えるようになっていたので、リディアとアレスの三人で、シャドウ・ウルフが現れるよりも早く、壁を完成させる事が出来た。
使えるのは精霊魔法の中でも土だけで、水を出したりは出来ないが、リディアが生やしてくれた作物の苗を育てる事は出来るという事か。
とはいえ、シャドウ・ウルフが来た時に困るので、人形たちだけで壁を拡張させる事は禁止とするが。
「……待てよ。メイリンの人形は、今の俺のスキルを使えるんだよな。という事は、奴隷解放も使えるのか?」
「アレックス殿。奴隷解放とは?」
「悪魔を倒した時に得た、エクストラスキルというスキルで、メイリンを助けたスキルだよ」
簡単に奴隷解放スキルの説明をして、
「つまり、妾のように奴隷とされている者を助ける事が出来るのか。よし、アレスよ。その奴隷解放スキルとやらを使うのだ」
「奴隷解放……お母さん。何も起きないよ?」
「あー、奴隷解放スキルはエクストラスキルだから、人形には継承されないのかもしれないな。他のスキルは使えるんだろ?」
メイリンの指示でいくつかのスキルを使ってもらったのだが、パラディンのスキルは発動したものの、やはり奴隷解放スキルは発動しなかった。
とはいえ、作物の育成や収穫を任せられるだけでも、かなり助かるので、人形たちにしてもらう事を再検討しようとしたところで、ふと気付く。
「……待った。エクストラスキを除いた俺のスキルが使えるという事は、超回復と絶倫も……あ、アレクとモカを止めないとっ!」
慌ててメイリンを連れて小屋に行くと、二体目となる人形アレクが寝転び、その上にモカが座っていて……モカの目が完全にハートマークっ!
どうやらこの二体は、俺たちが小屋から出た後、ずっとこの調子だったようだ。
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