第759話 牢屋の朝
翌朝。牢屋の中で目を覚ます。
とはいえ、窓も何もない、光苔の灯りしかないので、朝かどうかはわからないのだが。
流石に今までに体験した事の無い起床だなと思っていると、いつからそうしていたのか、俺の上に結衣が座っていた。
その一方で、ニナはまだ眠っているのだが、レミの姿がない。
「結衣……レミはどうしたんだ?」
「ご主人様、おはようございます。レミさんは、あちらで~~~~っ!」
結衣が身体を震わせ……うん。とりあえず、分身を解除しよう。
ニナがまだ俺に抱きついて眠っているので起き上がって確認出来ないので、一体だけ分身を出して、レミの様子を見てみると、
「……って、こ、これは!? い、一体何があったんだ!?」
昨晩俺のところへ来たモニカやシアーシャたちだけでなく、ニナと同じくらいの背丈の女性が全裸で大勢倒れている。
「アレックスよ。もう終わりなのか? 我はまだまだ出来るのじゃ」
「ミオ……これは一体何がどうなっているんだ?」
「む? あぁ、乳娘が大きな声を上げ過ぎて、ドワーフの兵士たちが大勢様子を見に来たのじゃ。ここは地下で空気が……香りが充満しているため、アレックスのアレの香りを嗅いだ兵士たちが自ら鎧を脱ぎ、こうなったのじゃ」
「えぇ……しかし、この状況は非常にマズくないか?」
「皆、気絶する程満足しておるのじゃ。大丈夫なのじゃ……たぶん」
とりあえず、皆の身体がかなり汚れているので、泡魔法で綺麗にしようと思ったところで、俺に気付いたレミが近付いてくる。
「おとん、待ってー! せっかく貴重な材料を集めてるんやから」
「いや、貴重って……」
「だって、おとんはウチにアレをくれへんやろ? あ、おとんがウチにもアレを直接くれるなら、今すぐ洗い流してもえぇで?」
「……ひ、一人ずつゆっくり丁寧にするから、早く必要な分を集めるように」
「はーい」
レミがとんでも無い事を言い出したので、全員に泡魔法を使用するのは止め、まずは起きているミオを泡魔法で洗っていく。
「アレックスよ。せっかくの泡魔法の使い方が誤っておるのじゃ」
「え? そうなのか? 俺は今まで、洗浄に使っていたんだが」
「いや、それは間違っておらぬのじゃ。そうではなく、せっかくきめ細やかな泡を作っているのじゃ。我の身体を泡で覆ったら、そのまま排水溝へ流すのではなく、ほれ……こうしてアレックスの手で我の身体を撫でるのじゃ」
そう言って、ミオが俺の手を取り、自らの胸へ押し付ける。
手で身体を洗えという事なのだろうが、一人一人そんな事をしていたら時間が……あー、分身してやれという事か。
とはいえレミが材料を集めているので、まずはミオに合格と言われるまで、泡魔法を試してみる事に。
「おほぉっ! う、うむ。小さな手で……き、嫌いではないのじゃ」
「そろそろ良いか?」
「そ、そうじゃな。ではそろそろ、こっちへ……って、何故泡を流してしまったのじゃ!?」
「え? もう良いってミオが言ったからだが……」
「まだイッておらぬのじゃ! これからなのじゃ!」
ミオが良くわからない事を言い出したところで、レミが戻ってきた。
「おとん、ありがとー! かなりの量を回収出来たから、もう大丈夫やでー!」
「わかった……≪アクア・バブル≫」
一人ずつ綺麗に……と思っていたが、レミがもう大丈夫だと言うので、俺の本体と結衣に、ニナとレミを除いて泡魔法を使うと、分身を出してミオに教わった通り手で身体の汚れを落とすように、自動行動で指示を出す。
という訳で、俺も意識を本体に戻すと、分身たちが女性たちの身体を洗う感触が手に集まり……あ、あれ? 何故か手だけじゃないぞ?
この感覚は……な、何故だ!? 俺は分身たちに身体を洗うように指示しただけなのに、これでは……くっ! どうして……
「ご、ご主人様ぁぁぁっ~~~~っ!」
俺が耐えられなくなった結果、結衣が俺の身体の上で身体を震わせ、くてっと俺の胸に倒れてきた。
「ん……あれ? お兄さん。おはよー。いつの間にか、レミが結衣に代わって……って、うわぁ。お兄さん。朝から凄いね」
身体を起こしたニナが周囲を見渡し、ちょっと引いている。
俺も身体を起こして、周りに目をやり……うん。何故か女性陣と分身たちがおかしな事になっているが、ミオに教わった通りに身体を洗っていただけなのに、どうしてこうなったんだ。
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