第381話 森の中の激しい戦い

 ドリュアスが声を上げ、黒く染まっていた根っこの一部が白くなり、白くなった根っこは動きが止まる。

 この隙にリディアの人形が投げた物が何か確認しようと思ったところで、


「ご主人様! 私の出番ですねっ!」


 何故かモニカがやって来た。

 しかも、真っ直ぐドリュアスに向かって突っ込んで行く。


「モニカっ! 不用意に近付くなっ!」

「大丈夫です、ご主人様。私にお任せください!」


 そう言って、モニカがおもむろにスカートをめくり上げ、


「この樹の弱点は把握しています!」


 立ったまま聖水を放出した。

 聖水が掛かった根っこがどんどん白く染まっていき、それを吸い上げているからか、徐々にドリュアスの幹が白く戻っていく。

 流石に女性が立ったままというのは初めて見た……というか、そもそも女性のこんな姿はモニカしか見た事がないが。


「うぅ……ご主人様。体中の尿を……聖水を出し切ってしまったようです。どうか、ご主人様に触っていただくと出てくる方の聖水をお願い致します」

「……モニカはどうして聖水でドリュアスが戻ると分かったんだ!? いや、理由はともかく、事情はわかった。触れば良いんだな」

「はい! 是非お願い致します!」


 緊急事態という事で、ヴァレーリエを安全な場所に下ろし、モニカの言う通り手ですると、量は少ないが濃い聖水が飛び散る。


「おほぉぉぉっ! いつもより激しいですぅぅぅっ!」

「あぁぁぁっ! 熱い……この力は一体何なのっ!? 身体の中に入ってくりゅぅぅぅっ!」


 モニカの聖水を根っこから吸い込んだドリュアスが光り輝き……消えた!?


「モニカの聖水で浄化された……のか?」

「おそらく。ナズナ殿に言われ、飛んで参りましたが、間に合って良かったです」

「ナズナに? とりあえず説明してくれないか?」


 モニカと、瞬時に姿を現したナズナに話を聞くと、詳細はわからないが、毒の葉畑で異変があった事を察したナズナが、再び聖水が必要だと考えたらしい。

 だが、タイミング悪くモニカがトイレに入っていたので、聖水の代わりになる物を……と考え、漏らした聖水を拭いた雑巾を人形に投げてもらったのだとか。

 それで、聖水に効果があると判断したナズナが、モニカに説明して向かわせたという事らしい。


「つまり、モニカはドリュアスの事などは知らずに、聖水を使うようにと……まぁ上手くいって良かったよ」

「それよりご主人様。続きを……指だけでなく、ご褒美をお願い致しますっ!」

「いや、そんな事よりレヴィアの治療が先だ。≪シェア・マジック≫」


 魔力枯渇を起こしているレヴィアに、魔力を分け与えるスキルを使ったのだが、目を覚さない。


「アレックス。竜人族であるレヴィアは、元々持っていた魔力が非常に高いのじゃ。おそらくそのスキルで与えられる魔力では、全然足りないのじゃ」

「な……となれば、マジック・ポーションなどを飲ませる必要があるが、手元に無いんだよな」

「マスター。あるではありませんか。レヴィアさんに大量の魔力を与える方法が」


 ミオにスキルでの魔力譲渡ではダメだと言われた直後に、いつの間にか来ていたソフィから、別の方法を提示される。


「ソフィの言っている魔力を与える方法って、その……アレだろ? 気を失っているレヴィアにアレを飲ませるというのは……」

「マスターは、よく私に目隠しして飲ませてくださいましたよ? まだ私が何を飲まされているか知らない時に」

「……わかった。レヴィアの治療が優先だよな」


 リディアから、お手伝いしましょうか? と言われたり、モニカからご褒美を求められ、ミオとヴァレーリエに、ナズナとソフィから分身しろと求められ……結果的に、レヴィアへ凄い量のアレを飲ませる事になってしまった。


「アレックスー! もっとー!」

「ご主人様。私にも沢山欲しいですっ!」

「ご主人様ぁ。しゅごい……人間族ってしゅごいのぉぉぉっ!」


 レヴィアが無事に目を覚ましたのは良かったが、森の中で物凄く求めてきて、モニカはモニカで、頑張ったのだからと分身の一体を占有して激しく動く。

 結局いつも通りになってしまったのだが……あれ? モニカが二人居るような……いや、そんなはずはないよな。

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