第137話 暴走が止まらないツバキ
「ごちそうさまでした」
シェイリーに送ってもらい、家で昼食を済ませた……が、未だにツバキが目を覚さない。
「レイ。飲ませた睡眠薬って、どれくらいで効き目が切れるんだ?」
「あの量やと、もうそろそろ目を覚ましても良い頃なんやけどなー」
「そうか。じゃあ、俺とサクラとメイリンはツバキが目覚めるまで待って、他の皆は開拓作業を頼む」
流石に目を覚まして、誰も居なかったら驚くだろうしな。
……いや、もしかして俺も居ない方が良いのか?
俺の事を妖術使いだと思い、メイリンやサクラを操っていると思い込んでいるようだし。
「ご主人様。あの、私はリザードマンの村へ行ってはダメでしょうか」
「モニカ。いきなり、どうしたんだ?」
「その……先程シェイリー殿から必要だと言われた材料の中に、聞いた事の無いものがあったため、リザードマンの村にないかと思いまして」
「……それなら、俺と一緒に行こうか。だが、今日はもう昼を過ぎているからダメだ。この前の二の舞になる」
今からリザードマンの村へ行くと、夕方になってしまい、遅いから泊まっていけ……となって、その翌日が大変な事になるのが目に見えている。
俺の言いたい事が伝わったのか、モニカが頷き、
「確かに。まだ犬用の首輪がありませんね。どうせ向こうで夜を過ごすなら、ちゃんと準備を済ませたいですね」
伝わっていなかった。
首輪って何の事だ? リザードマンの村に犬なんて居なかったはずだが。
「ところで、一体どういうスキルを使おうとしているんだ? フィーネよりも、モニカの方が張り切っているようだが」
「そ、それは……今言えるのは、よ、夜を激しくする為とだけ」
「レイの精力剤みたいなものなのか? それなら禁止だぞ?」
「違います。そういうドーピングではなく、ご主人様の好みに合わせるといいますか、ショ……な、何でもありません」
モニカは何を言いかけたんだ?
ショ……って、何だ?
とりあえず俺は、子供でなければ、それだけで良いのだが。
……シェイリーとミオなどが大人の姿になるというのであれば、大歓迎なんだがな。
とはいえ、本人たちの了承は要るが。
それから皆がそれぞれの場所へ移動し、少しした所でツバキが目を覚ます。
「ん……ここは? き、貴様っ! 私を眠らせ、一体何をしたっ!? ま、まさか……」
「いや、何もしてないから。いや、本当だってば。確認しなくても大丈夫だってば!」
ツバキが俺の言葉を信じずに、後ろを向いて、スカートをまくり上げると、パンツの中に手を……女性の身体の事はよく分からないが、それで分かるものなのか!?
「……何も、されていない……?」
「だから言っただろ? 俺は何もしていないって」
「くっ! サクラ姉やメイリンさまにはあんな事をしておいて、私には女としての魅力が無いという事かっ!?」
「ん? 何を言って……」
「こほん。な、何でも無いっ! とにかく、サクラ姉もメイリン様も、変な妖術を使われる前に、逃げましょう!」
そう言って、ツバキがメイリンの手を取る。
しかし、メイリンとサクラが、どうしたものかと顔を見合わせ、動かない。
「そうだ。妾と旦那様の子供を見せよう。そうすれば、お主も分かってくれるであろう」
「メイリン様。この者に幻術を掛けられているのですね? 確かに先程大変な事になっておりましたが、短期間で子供は生まれないのです」
「……あー、ツバキにはメイリン様の事を詳しく話してなかったか。まぁでも見た方が早いか」
二人で話した結果、魔法人形を呼んだらしい。
だが、メイリンのスキルを説明していないのはマズくないか?
更に混乱させるのでは?
そう思ったのだが、
「お待たせしました。母上、どのような御用でしょうか?」
流石はサクラの人形と言うべきか。
すぐに現れた。
「えっ!? えぇっ!? さ、サクラ姉そっくりの女の子!? でも、十歳くらいに見える……サクラ姉っ! 十歳の時に隠し子が居たのっ!?」
「居る訳ないだろう。十歳で出産なんて出来……るのか?」
「でも、さっき、この子より幼い女の子としていたし……はっ! まさか、このサクラ姉の子供とも!? ……やっぱりこの変態を成敗しなくてはっ!」
あ、そうなるのか。
ツバキが俺に向かってくるけど、眠っている間に、サクラが武器は全て取り除いたと言っていたし、大丈夫だろう。
一先ず、攻撃を防ごうとした所で、
「父上に何をするっ!」
サクラの人形が足を払い、ツバキを転倒させた。
「うぅ……いくらサクラ姉の子とはいえ、こんな子供にやられるなんて。これも、妖術のせいねっ! 首を洗って待っていなさいっ! 修行して絶対に貴様を倒してやるんだからーっ!」
そう言って、ツバキが飛び出して行ったけど……修行って何をする気なんだ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます