第375話 サンゴの離脱

 気を失ったレヴィアとネーヴをそのままに、シーナ国との壁の下を通るトンネルを抜けた。

 ここへ走って来るまで相応の時間があったので、元兎耳族の村の者たちも、もう十分だろう。

 分身を解除し、レヴィアとネーヴたちからアレを抜くと、俺自身と気を失っている二人に、状態異常回復の神聖魔法を使用する。


「≪リフレッシュ≫」

「……ん、あれ? アレックスー、ここはー? ううん。それよりどうして、止めちゃったのー? ……あ、でもいっぱい出て来た。レヴィアたん……もしかして、気を失っていたの!?」

「わ、私とした事が、アレックスのを受け止めきれずに気を失ってしまうなんて……も、もう一度しないか?」


 レヴィアは竜人族だからか、自身が気を失っていた事に驚き、ネーヴはもう一度……って、しないから。


「レヴィア、水を頼む。すぐそこが、朝食の時に話した村だから、身体を綺麗にしたら行こう」


 レヴィアに水を出してもらい、互いに身体を綺麗にすると、村へ向かう。

 村の北側には……ナズナが居るな。


「すまない、遅くなった。一体何が起こったんだ?」

「はい。それが……見ていただくのが一番かと。村長の家へ来てください」

「……行くのは構わないが、中の女性たちは大丈夫なのか?」

「はい。私がお母さんに合図しましたので、全員二階へ移動しているはずです」


 俺が近くに行くと魅了状態になってしてしまうが、流石に階が違えば大丈夫だろう。

 村の中にも例のポーションを飲んだ者が居るので、レヴィアとネーヴと共に村の中を走り抜け、先ずは家の中へ。

 ナズナの案内により、奥にある村長の部屋へ行くと、


「あー! お父さんだー! サン、パパが来たよー!」


 部屋に居たサンゴがツバキの人形であるツキに似た女の子の手を引いて、俺の事をパパと呼ぶ。


「……サンゴ。まさか……」

「はーい! 昨日、お父さんと沢山したでしょ? 朝起きたら、この子が居たんだー! で、サンって名付けたのー!」

「お兄さん。という訳で、こうなってしまった以上、サンゴちゃんは一旦魔族領へ戻そうと思うのー。ここより、そっちの方が安全かなーって思って」


 しまった。メイリンの人形は、俺のアレで子供を産むんだった。

 サンは、見た目こそツキにそっくりだが、メイリンのスキルで生み出された訳ではないので、ちゃんと育児をしないといけないんだよな。


「わかった。だが、連絡要員としてヴァレーリエが他の人形を連れて来るまで待ってもらえるだろうか」

「はーい。じゃあ、サン。それまで、パパに沢山甘えておきましょうねー!」

「ぱ、パパー!」


 サンゴの言葉でサンが抱きついてくるが、ツキと見た目が同じなので物凄く違和感があるのだが。

 しかし……ツキが抱きついてきたら引き離すところだが、この子はそういう事を知ら無さそうだし、少しの間でも一緒に居てあげようか。

 とりあえず、カスミが連絡してきた用件が、サンゴの離脱だという事が分かり、今後はカスミの人形は気を付けないと……と、そんな事を考えながらサンを抱っこしていると、


「アレックスー! レヴィアたんもー! 抱っこーっ!」


 レヴィアも抱きついて来たので、右腕と左腕それぞれに抱きかかえる事に。


「いや、レヴィアはさっきまで散々……こほん。そういえば、モニカはどうしたんだ? 先に来ているはずだが」

「モニカちゃんはねー、頑張って毒の葉を枯らしてもらっているのよー。結構な数が枯れたけど、見に行くー?」

「そういう事か。居場所が分かって居るなら、それで構わない……って、そんなに沢山聖水が出るものなのか?」

「ふっふっふ。カスミちゃん特性の利尿剤入りジュースを沢山飲んでもらったのよー。……本当は辱めに使うやつなんだけど、モニカちゃんは流石ねー。人前でする事に少しも抵抗が無かったもの」


 モニカは……いや、触れないでおこう。

 モニカにしか出来ない事をやってくれているのだからな。


「ナズナ。メイドさんたちは二階に居るんだよな? 悪いがネーヴを案内してあげてくれ。昨日話した村長をネーヴに頼む事にしたんだ」

「わかりましたー! お母さんと一緒に、この村の情報は収集済みなので、後で村の中も案内しますねー」


 ナズナがネーヴを連れて二階へ行った後、俺がひと段落したと思ったのか、


「パパー! 一緒に遊びたい」


 遠慮がちにサンが声を掛けてきた。


「レヴィアたんもアレックスと遊ぶのー!」

「じゃあ、サンちゃんとレヴィアちゃんは、お兄さんの上半身担当ねー。カスミちゃんは、お兄さんの下半身と遊ぼーっと!」


 いや、カスミは何を言って居るんだよ。

 あと、この状況では分身も出さないからなっ!?

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