第476話 アレックスのお薬

 割と身長が低めの、珍しい形の獣耳が生えた女性が、俺の腹に顔を埋め、押し続けてくる。

 くっ……この小さな身体に、ここまでの力があるなんて!


「私は、男になんて負けませんっ! 絶対に貴方を……んっ!?」

「あっ! ……す、すまん。こ、こんな状況で。その、分身が他の女性たちと……」


 何とかして俺を力で負かそうと思ったのだろう。

 女性が頭を俺の腹に押し付けながら、大きく叫んだところで、アレが出てしまった。


「な、なんて物を飲ますのよっ! ……あ、あら?」

「だ、大丈夫か?」


 どうやら俺のアレが口に入ってしまい、更に飲んでしまったようなのだが、先程まで凄い力で押してきていたのに、突然動きが止まる。

 かと思ったら、そのまま顔を下げ、


「あぁっ! ズルいっ! さっきまで結衣がご主人様のをいただいていたのにっ!」


 今度は俺の腰に抱きつき、自らアレを飲み始めた。

 この状態で攻撃する訳にもいかず、分身とヴィクトリアたちも止める気配が無く、かなりの量を飲んだところで、ようやく女性がアレから口を離す。


「ありがとうございます。私は水を司る、天后と申します。貴方の、このお薬で私を蝕んでいた闇の力が消えたようですの。本当に感謝いたします」

「え? 薬……レイがポーションにした訳でもないのに?」

「はい、お薬です。飲ませていただいた後は、身体の奥が熱くなり、長年に渡って頭と心を覆っていた闇色のモヤが晴れたような気分ですわ」


 そう言って、天后と名乗った女性が深々と頭を下げる。

 話を聞くと、元々は女性を守る、アマゾネスの守護神だったのだが、ある時から自分が自分でなくなったような変な感じがしていたのだとか。


「何者かに操られていた……とかか?」

「わかりません。しかし、私にそのような事が出来る者と言えば、相当の力の持ち主なのですわ。魔王や、その四天王に、玄武とか……」

「玄武!? 玄武を知っているのか!?」

「はい。勿論知っておりますわ。あっ! それより、貴方のお薬が飛んで……勿体ないですの! そ、そうですわ。貴方のお薬を飲んでから、身体の奥が熱くて……どうか、こちらにもお薬を注いでくださいませ」


 そう言って、天后が地面に寝転ぶと、自ら開く。


「待った。何をしているんだ!? 俺は見ず知らずの女性に……」

「しておられますわよね? アマゾネスは私が守護している部族です。たいていの事は存じておりますわ」

「うぐっ。いや、あれには訳が……」

「それとも、私のように猪耳で、ムチムチした女性は抱く価値もありませんの? 悲しいですわ。これは、猪耳の特性のようなもので、わたしの不摂生などではありませんのに」


 えぇ……泣きだした!?

 いったい俺にどうしろと。


「ご主人様。こちらの方は、ご主人様のを熱望されていますし、未だに沢山出てますし、その……挿れてあげてください」

「えぇ……」

「貴方……お願いしますわ。私もサマンサさんやヴィクトリアさんのように、悦びを感じたいのです」


 天后がずっと同じポーズで俺を見つめ……これは、するまで終わらないパターンか。

 本人がずっと俺を待っているし……仕方ないな。


「あっ……これが男性なのですねっ! 凄いですわっ! 奥っ! 奥まで届いてますのっ!」

「天后さん、良かったねー」

「それに、これは……ビーストキラーに、チャージ? 棍棒修練や穴掘り……なんて沢山のスキルをお持ちなの〜〜〜〜っ!」


 天后は結衣の言葉が届いていないようで、何度も身体を震わせ、唇を重ねてきて……あ、気絶した。

 というか、もう危険もないだろうし、分身を解除しておくか。

 水を塞いでいた石の壁を消すと、


「パパーっ! だいじょーぶ!? ケガとかしてない!? いたいのいたいの、とんでけーっ!」


 真っ先にユーリが飛び出て来て、抱きついて来た。

 何でも、モニカだけ戻って来て、俺が一向に戻ってこないので、ずっと壁の前で待っていたらしい。


「ユーリ、心配させてすまないな」

「ううん。パパがぶじで、よかったよーっ!」


 ユーリに少し遅れ、


「アレックスーっ! レヴィアたんに助けを求めたって聞いたの! 何を倒す?」


 レヴィアもやって来た。

 すまない。凄い量の水を生み出す相手だったからレヴィアを呼んだけど、もう大丈夫だ。


「そうなの? ……あ、このビクンビクンしてるのって、誰かと思ったら、もしかして天后?」

「知っているのか?」

「噂だけー。実際に見るのは初めて。船の守り神って呼ばれてる、海では有名な女神だよー」


 へぇー、海で有名な女神……って、神様なのっ!?

 ……これはまた、とんでもない事をしてしまったな。

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