第477話 玄武の居場所?
「アレックス。ここへ来るまで、皆してた。レヴィアたんも」
「ちょっと待ってくれ。それより、この天后が玄武の事を知っているみたいなんだ」
抱きついてくるレヴィアを何とか止めていると、
「おぉ、天后ではないか。また幸せそうに気を失っておるのじゃ」
ミオが現れた。
「ミオ? どうして、ここへ?」
「アレックスがピンチだと言われれば、来るに決まっておるのじゃ。ほれ、リディアも来ておるのじゃ」
「アレックスさん。落ちていた服を持って来ました。とりあえず、履いてください」
リディアから服を受け取り、着替えを済ませたところで、ミオが天后をペチペチと叩く。
「天后、起きるのじゃ。天后」
「ん……アレックス。素敵……」
「寝ぼけるでない。我はミオなのじゃ。天后ーっ!」
「あら? どうしてアレックスが小さな女の子に?」
「だから、我はミオだと言っておるのじゃ」
暫くミオが頑張り、ようやく天后が起き上がる。
「まぁ、私ったら。はしたない格好で失礼致しましたわ」
「今更なのじゃ。それより、アレックスと愛し合う女性に怒り散らし、攻撃までしたそうではないか。聖母とまで呼ばれ、全ての女性を助けるはずのお主が、どうしてそのような事になったのじゃ?」
「……それが、わからないんです」
俺の時と同じく、わからないという天后を見たミオが、ポロっと呟く。
「……この力は玄武かもしれぬな」
「ミオ。どういう事だ? 玄武が天后に何かしたのか?」
「いや、あくまで可能性の話なのじゃ。玄武は他人の能力やスキルを封じる力を持っておるのじゃ。聖母と呼ばれる程に慈愛の心を持ち、女性の守護者でもある天后が、嫉妬で攻撃するなど考えられんのじゃ」
「つまり、そう言った優しさが封じられ、攻撃能力だけはそのままだった……という事か?」
「おそらく」
あれ? という事は、玄武は悪い奴なのか?
だが、シェイリーと一緒に魔王と戦ったんだよな?
「あ! シェイリーは魔王の部下である土の四天王に力を封じられていたけど、玄武は四天王の誰かに操られているとか、魔王に何かを協力させられているとか?」
「なるほど。幾らあの玄武でも、我の友に攻撃などしないはずなのじゃ」
あの玄武……というミオの言葉が若干気になるが、魔王に戦いを挑む程の力を持つのだから、封じるだけではなく、利用しようとする魔族が居てもおかしくないか。
「天后よ。玄武は今どこにいるのじゃ? 同じ水を司る者同士、おおよその場所はわかるであろう?」
「……残念ながら、わからないんですの」
「何故なのじゃ? お主は海に居る者を探す事など容易であろう? 玄武は水を司る……待つのじゃ。シェイリー――青龍も地面の下に居たな。玄武も力を与えない為、海の近くには居ないという事か」
「そうかもしれませんわ。海に居れば、ある程度分かるはずですもの」
なるほど。玄武は海に居ないという事が分かった……まぁそれはある程度予想していたんだけどな。
元より、この北の大陸の魔族領に居ると思っていたし。
「とりあえず、玄武を探そうと思ったら、この北の大陸の内部へ進む必要があるという事か」
「そうかもしれませんわね」
「しかし、そうなるとラヴィニアをどうするかだな」
「ラヴィニア……とは?」
「あぁ、俺たちの人魚族の仲間なんだ。今は家……というか、船で待機してくれているんだけど、陸地には上がれないからな」
玄武を探す為に北の大陸まで来てもらい、このまま海で一人ぽっちにするというのは流石に申し訳ない。
ノーラの人形に大きな桶を作ってもらって、運ぶ……か?
「あらぁ……でも、こちらの女の子が居れば解決するのでは? 見た所、海竜の竜人族さんですわよね?」
「その通り! レヴィアたんは海竜」
「なら、水をいくらでも出せるのでは?」
まぁラヴィニアの事だけを考えれば、水さえあれば大丈夫だが、その考え方だと、下手をすれば街や建物を水浸しにしかねないんだよな。
「アレックスの船がどれくらいの大きさかは知りませんが、ここから陸沿いに北東へ進めば、大きな河があります。とりあえず、そこから進んでみてはいかがでしょうか」
「なるほど。そういう事なら、一度船へ戻ってみようか」
そう思ったのだが、天后が突然待ったをかける。
「待ってください。そちらのエルフの女性……貴女も船に乗るのですか?」
「え? もちろんです。私はアレックスさんのお傍に居ますから」
「なるほど。ですが、妊婦が船に乗るのはオススメできませんわ」
「え? あの、何を言って……」
「何って、貴女のお腹の中には赤ちゃんが居りますわよ? 私は女性の守護神。妊娠しているか否かは、一目見ればわかりますわ」
「え!? えぇぇっ!? や、やったぁぁぁっ! アレックスさん、私やりましたぁぁぁっ!」
天后から懐妊を告げられたリディアが、嬉しそうに抱きついてきた。
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