第475話 逃げてくれない結衣

 サマンサを抱きかかえたまま少し走ると、洞窟の出口にモニカと俺の分身が居た。


「モニカ! ここを出るぞ! ここはアマゾネスの聖域らしい!」

「ま、待ってください! もう少しなんですっ! 寸止めは酷すぎますっ!」

「そんな事を言っている場合じゃないんだ! そうなんだろ、サマンサ!?」


 状況を確認しようとサマンサに目を向けると、口を開きっぱなしにして、ビクンビクンと身体を震わせていた。

 あ……気絶してる。

 これ、非常にマズくないか!?

 そんな事を思っていると、


「~~~~っ! ご主人様。お待たせいたしました。素晴らしかったです」


 顔をツヤツヤさせたモニカが歩いて来た。

 だがその直後に、奥から大量の水が流れて来る!


「≪ディボーション≫」

「えっ!? どうしてこんな所に水が……か、海水っ!? どうなっているのっ!? そ、それよりご主人様っ! 早くお逃げくださいっ!」


 大量の水が洞窟に流れ込んで来るが、この先にはヴィクトリアたちが居て、アマゾネスの村があって……非常にマズい。

 ひとまず、モニカと一緒に居た分身にサマンサを預け、モニカを洞窟の中へ押し込むと、


「≪石の壁≫!」


 水が洞窟の中へ入らないように壁を出す。


「ご主人様っ!? な、何をっ!? ご主人様もこちらへ来てくださいっ!」

「俺の事なら気にするな! それより、サマンサを連れて状況をヴィクトリアたちに伝えてくれ! あと、ユーリに話して、メイリン経由でレヴィアを呼んでくれっ!」

「は、はいっ!」


 相手が水を使うのであれば、レヴィアなら水に強いし問題無いだろう。

 モニカがサマンサを皆のところへ運び次第、分身を解除しようと思うのだが……水の量が思っているよりも、遥かに多い!


「この場所を男のアレで汚す不届き者よ。村を守ろうとする気概は買いますが……溺れ死になさい」


 水が膝まで来て、どんどん上昇していく中、再び謎の声が聞こえてくる。

 そんな中、何処からともなく結衣が現れ、俺のを……って、こんな事をしている場合じゃないって!


「結衣、戻れっ! 俺から離れるんだ!」

「やだ! 結衣はご主人様と一緒!」

「違うんだっ! 俺は水中で呼吸出来るスキルを持っている。だから、ただの水攻めでは死なない」

「あ、そうなんだ。じゃあ、もう少ししたら隠れるね」


 どうやら結衣は俺が死ぬと思っていたらしく、一緒に死のうとしていたらしい。

 そんなの絶対に許さないし、俺はちゃんと考えがあって一人で残ったんだからな?

 レヴィアを呼んだのも、レヴィアなら水中で呼吸が出来るだろうから、問題無いと判断した訳だし。

 だが、この結衣との話が相手に聞かれていたのか、突然水が減り始める。


「……まさか人間族が水中で呼吸出来るとは思いませんでしたね。よく見れば、いろんなスキルを持っているようですね」

「あぁ、その通りだ。それより、ここが聖域と知らずに申し訳なかった。謝罪をしたいのだが、聞き入れてもらえるだろうか」

「……それが謝罪をする者の状態ですか?」


 どういう事かと思ったら、未だに結衣が俺に抱きついているし、分身を解除していないので、アレが出続けている。

 モニカは未だヴィクトリアたちと合流していないのか?

 分身を解除したいのだが……とりあえず結衣を俺のアレから離す事に。


「じゃあ、結衣はご主人様の傍に居る」


 そう言って結衣が俺から離れて横に並んだのだが、俺のは未だに臨戦態勢で、更に丸出しのままで居る事になってしまった。


「……な、何ですかっ!? そ、その巨大な物は!」

「何と言われても……」

「それで、アマゾネスたちを誘惑し、私の作った掟を破らせたのですねっ! 許しませんっ!」


 何処から見ているのかは分からないが、依然として声は響き渡り……いや、何か現れたな。

 シェイリーや六合のような存在感を感じる。


「ご、ご主人様っ! 気を付けてくださいっ! 何かが……」

「あぁ。おそらくだが、神獣のような存在だな。もう一度言うが、結衣は隠れて居るんだ」

「嫌です! ご主人様が居るところに、結衣も居ます!」


 結衣が退いてくれないので、せめて……と、パラディンの防御スキルを使用して、ダメージを肩代わり出来るようにした直後、何かの影が向かって来る。


「は、速いっ! ご主人様っ!?」

「ぐっ! だ、大丈夫だっ!」

「私の突進を止めたっ!? な、何者なのっ!?」


 何とか吹き飛ばされずに済んだが、突然凄い速さで体当たりしてきたのは、ムチムチした女性だった。

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