第441話 黒髪の幼女に気付いたカスミ

「流石はアレックス……分身で十八人になる事が出来るようになっているなんて。これなら、みんな公平よね……気絶していない人は」

「ねー、アレックスー! あの子は誰ー? レヴィアたんと同じくらいの子が混ざって居るんだけどー」

「あらあら、本当ねー。お兄さん……って、黒髪っ!? め、メイリン様に……んぅっ! や、やっぱり報告は後でぇぇぇっ!」


 六合とレヴィア、カスミたちが話していた事から、クララの転移スキルでシャドウ・ウルフもちゃんと移動出来ているようだな。

 チラっと目をやると、六合によって強制的に鬼畜モードにされた俺の分身から凄い勢いで突……ま、まぁ嬉しそうにしているから余裕はあるようだ。

 それから鬼畜モードの分身により、また一人、また一人と気絶していき、六合も気を失った。

 残っているのは、ヴァレーリエとレヴィアの竜人族コンビに、ソフィとカスミ、クララとシャドウ・ウルフの六人か。

 六合も気絶したし、分身を解除して良いだろう。


「あーっ! アレックス……ウチはもう少し続けて欲しかったんよ。レヴィア、少しだけアレックス本人と代わって欲しいんよ」

「やだー。アレックスはレヴィアたんのものだもん」

「……ふぅ。それより、お兄さん。私は、この女の子が気になり過ぎるんだけど。どうして黒髪の女の子が居るの?」


 相変わらずレヴィアが俺から離れてくれないが、まぁレヴィアは小さくて軽いのと、離した方がうるさくなるので、このまま話すか。


「いろいろあったんだが、闇ギルドの本部にシャドウ・ウルフが居てな。で、ビーストテイマーのスキルでテイムして、貰った屋敷へ連れて行ったら……いつの間にか女の子になっていたんだ」

「お兄さん。訳が分からないんだけど」

「いや、俺も訳が……っ! こほん。俺も、今以上の事は何も分からなくてさ。あー、あといつの間にか魔族を倒してエクストラスキルを得ていたみたいだけど」


 レヴィアが気を失ったので、ベッドに寝かせてあげると、すぐさまヴァレーリエが取って代わる。

 ヴァレーリエはレヴィア程に小柄ではないので、抱っこしながら……はやめておこうな。


「……エクストラスキルを!? まさか、それが獣人になるスキルだったの?」

「……たぶん。そのとおりだと、おもう」

「あれ? 話し方が、ちょっと変わっていないか?」


 この子は港町クワラドの屋敷に居たシャドウ・ウルフだよな?

 ……もしかして、凄い勢いで周囲から言葉を学習しているのか? だとしたら、凄い吸収力だよな。


「そうだ。何と呼べば良いのだろうか。名前はあるのか?」

「ユイというナマエ……だったキがする」

「そうか、ユイか。じゃあ、これからユイと呼ぶようにしよう」


 ユイの頭を優しく撫で……今更だが、ヴァレーリエとしながらする会話ではないよな。


「ユイ!? これは……うーん。お兄さん。もしかしたら、ただの偶然だったり、カスミちゃんの気のせいかもしれないけど……黒髪だしメイリン様に報告したいのだけど」

「そうだな。それは俺も思っていて、モニカが目を覚ましたら魔族領へ行ってくるよ」

「くっ。カスミちゃんもメイリン様の所へ行きたいけど……カスミちゃんには転移スキルは使えないし、この街へメイリン様の人形を連れてきていないのよねー。転移スキルに勝てないのは分かっているけど、とりあえず分身を走らせておくわねー」


 そう言って、カスミが分身すると、その分身が凄い速さで外へ向かって行った。


「……カスミは全裸で分身を使ったのに、服を着た分身が現れるんだな」

「もちろん。逆に、服を着た状態で全裸の分身を出す事も出来るわよー」

「それは凄いな。……っと、話を戻すが、メイリンに依頼して人形を増やしてもらうか。各街にメイリンの人形が居れば、何かあった時にすぐ連絡が取れるからな」


 人形の数は十分と言えば十分なのだが、大半は魔族領で働いてくれているからな。

 だが、それとは別に連絡要員として各街へ数人ずつ配置しておきたい。

 メイリンも妊娠していて今は控えているが、スキルだけ使って欲しいというのはダメだろうか。

 ひとまずヴァレーリエも満足したようなので、治癒魔法でモニカを起こし、転移スキルで魔族領へ戻る事にした。

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