挿話11 間接キスな幼女に少し嫉妬するアークウィザードのエリー
アレックスのおかげで、土の四天王だと名乗る魔族を倒す事が出来た。
幸い、ここは魔物が現れない場所みたいなので、後はアレックスがパラディンのスキルで魔力が回復するまでの数分間を守るだけだ。……リディアさんとニナちゃんから。
リディアさんは周囲に石の壁を生み出していたし、更に安全性を高めた上でアレックス争奪戦に参加しているけど、問題はニナちゃんだ。
アレックスのスキルの事を知らずに、偶然近くに居ただけで、あんなに密着して……いや、違う。
今回は近くに居て、こんな事になったけど、それは運が良かっただけではなくて、常日頃から自然とアレックスの近くに居るからこそ、こんなチャンスを引き寄せられたんだ。
私も、もっと積極的にアレックスの傍に居なくっちゃ!
そんな事を考えていたら、突然背後に気配を感じた。
何事かと思って振り向くと、
「――っ!? う、嘘……よね!?」
「な、何ですって!? ……そ、そんな!? どうしてっ!?」
「エリーもリディアもどうかしたの……ひゃゎっ!」
暗闇の中に、淡く光り輝く巨大な蛇? みたいな魔物が居た。
魔族の四天王を倒した直後に、その魔族よりも遥かに巨大な魔物が現れるなんて。
と、とにかくアレックスを守らなきゃ!
「り、リディアさん! 壁をっ! アレックスを守るわよっ!」
「え、えぇっ! ≪石の壁≫……あ、あれ!? 精霊魔法が発動しない!?」
アレックスに続き、リディアさんまで魔力切れなのか、石の壁が出てこない。
だったら、私が!
「≪ブリザード≫……って、なんでっ!? どうして魔法が発動しないのっ!?」
見た所、魔族では無さそうなので吹雪を起こす魔法を使用したのに、何故か発動しない。
アレックスを……アレックスを守らなきゃいけないのにっ!
こうなったら、三人でアレックスを運んで逃げよう……そう思った所で、
「待て。我は敵ではない……そうか、この姿がいかんのだな。ならば、これでどうだ」
突然目の前の巨大な蛇が話し掛けてきた。
しかも、私たちの三倍くらいはありそうな巨体が、一瞬でニナちゃんよりも幼い女の子の姿に変わる。
「え? ど、どういう事? 蛇が光る女の子になった?」
「蛇などではない! 我は青龍。この世界を守護する者の一つ。魔王に力を封じられていたが、そこの男性――ふむ、アレックスと申すのか――が、この地を任された魔族を弱らせてくれたおかげで、こうして再び具現化する事が出来た。感謝する」
世界を守護する者? それに、具現化……って何? 女の子になる事? それとも、蛇になる事?
よく分からないけど、一先ず敵意は無いみたい。
でも青龍って、ブルードラゴンの事よね?
さっきの姿は、どう見てもドラゴンっていうより、蛇だったんだけどな。
「我は蛇では無いと言っておるであろう!」
「あ、もしかして思考が読めたりするの?」
「うむ。お主ら三人が、全員そのアレックスに好意を抱いている事も全て分かる……が、そこのエルフよ。そういう事は、安全な場所でするのだな」
幼い女の子になった青龍さん? に指摘されたリディアさんが赤面しているけれど、こんな状況なのに、一体何を考えていたのよっ!
「えっと、青龍さんは私たちの敵では無いんですよね?」
「もちろんだ。先程言った通り、感謝しており、こちらから敵対する気などは無い。その証拠に、お主が我に放とうとした氷の魔法も、発動を止めただけで、反撃はしなかったであろう?」
「……さっき魔法が発動出来なかったのは、貴女の力だったんだ」
「その通り。それより、先ずは功労者である、アレックスを回復させよう」
そう言って、青龍さんがテクテクと近寄って来る。
だけど、完全に信じてよいのかも分からず、アレックスを庇おうとして……動けない!?
「えっ!? あ、あれっ!? か、身体が動かないよっ!?」
どうやら私だけでなく、ニナちゃんも同じらしい。
つまり、この青龍さんは、私たち三人の動きを魔法も使わずに止める事が出来る程の存在なのだろう。
青龍さんが小さな手で、うつ伏せのアレックスを軽々と仰向けにすると、右手で自身の左手の人差し指を少しなぞる。
すると、指先から紅い血が垂れてきて、
「って、アレックスの口に指をっ!?」
「案ずるな。我が血は霊薬の材料となる程の回復効果があるのだ」
青龍さんが説明してくれるけど、その絵面は幼女がイタズラでもするかのように、アレックスの口に指を突っ込んでいるだけ。
しかし、アレックスの身体が一瞬淡く光り輝き、その直後に目を覚ます。
……確かに青龍さんの血には回復効果があるみたいだ。
だけど、私は見たんだから!
青龍さんがアレックスの口に突っ込んだ指を、自分の口に入れた所をっ!
「我の傷を治す為だ。お主のように、邪な考えではないっ!」
「ん? 何の騒ぎだ? しかし、ステラが居ないのに、随分と身体が軽いな。魔力も回復しているみたいだし……って、この女の子は?」
「ここに居るエルフやドワーフたちと同じく、お主に助けられた者だ。感謝する」
青龍さんが深々と頭を下げ、先程私たちに説明してくれた内容を、改めて話し始めた。
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