第93話 防衛装置
「変質者に警告……防衛装置起動」
「違っ……これは、唐突だったから服が間に合わなかった訳で、変質者とかじゃないんたっ!」
「警告。防衛装置の到着まで、十五秒」
変な意図があった訳では無いのだが、全裸で少女に抱きついてしまったのは事実。
暫く言い訳してみたり、謝ってたりしたのだが、少女は防衛装置とやらのカウントダウンを続けて話にならない。
「到着まで五秒」
「アレックス! 何か来るわっ! 凄く速くて、とても巨大な魔力よっ!」
少女とエリーの言う通り、北東から轟音と共に大きな鉄の塊がやって来た。
馬車を三倍くらいに大きくして、幌の代わりに全てを鉄で覆った何か……と言った感じだろうか。
ただ、馬が引いている訳では無いので、どうやって動いているのかは不明で、御者台の代わりに大きな筒が乗っている。
「防衛装置到着。以降は、魔力消費節約の為、活動停止。生命維持以外の機能を停止する」
謎の鉄馬車? が現れると、少女が良く分からない事を言って……その場で崩れ落ちた!?
慌てて少女を抱きかかえると、
「……寝てる?」
とりあえず呼吸はしているが、どうして、突然眠ってしまったのだろうか。
その直後、
「アレックス様っ! 避けてくださいっ!」
サクラの叫び声が聞こえ、大きく後ろに跳ぶと、目の前を大きな白い光が通過していく。
その光は、俺の言葉で動きを止めたままのゴーレムを貫き、かなり遠くの方まで飛んで行った。
「あ、危なかった。ありがとう、サクラ」
「それより、アレックス様。如何致しましょう。連射は出来ないようですが、先程の赤い光よりも、更に強力な攻撃のようですが」
見れば、先程の光に貫かれたゴーレムが消滅していた。
逃げようにも、先程の様子を見る限りでは、逃げ切れないだろう。
「≪サンダーストーム≫」
何とかこれを止めなければ……と思っていると、エリーが魔法を放つ。
だが、先程のゴーレムや少女たちと同じ様に、魔法が防がれている。
ならば、
「≪石の壁≫」
鉄馬車の前に、高さを低めにした代わりに、分厚くした石の壁を生み出す。
すると、鉄馬車が少し後ろへ下がり……勢いをつけて突撃してきた!
周囲に壁の破片が飛び散るものの、砕けてはいない!
「≪石の壁≫」
「≪石の壁≫」
「≪石の壁≫」
鉄馬車の前後を石の壁で塞いで行くと、壁を壊す事も、方向転換も出来ずにジタバタと……って、大きな筒の中が白く光りだした?
その筒の先には、
「モニカっ! …… ≪石の壁≫っ!」
「えっ!? きゃあっ!」
モニカの足元に石の壁を生み出し、モニカを白い光よりも高い位置へ運び……何とか回避出来た。
それから何度か白い光を放つものの、全員筒が向けられた瞬間にその場から逃げるので、誰もダメージを受ける事は無かった。
……威力は物凄いが、連射出来ない事と、撃つ前に溜めが必要なのが幸いしたようだ。
ただ、残っていた、もう一体のゴーレムは、流れ弾? を受けて消滅してしまったが。
そして、
「ん? 鉄馬車から、あの大きな音が止んだな」
「魔力も感じなくなったわ。……もしかして、魔力切れじゃない?」
「これだけの大きさと、あの高火力の攻撃ですからね。魔力を動力にしているのであれば、人間で言う魔力枯渇を起こすのも無理はないかと」
エリーとモニカが、魔力切れを起こしていると判断した。
だが念の為だ。
「ニナ。これ……採掘出来るか?」
「もちろん。攻撃してこない今の内に、壊してくるねー!」
かつてゴーレムを倒した時と同じ様に、ニナが採掘スキルを使って、ガシガシ鉄馬車を破壊していく。
そして、
「お兄さん。このキラキラ光る石って、これの核じゃないかな?」
「わかった。後は任せろ! ≪ホーリー・クロス≫っ!」
ニナが壊してくれた外装の中にあった、大きな核を破壊した。
ゴーレムを倒した時と同じく、これで大丈夫ではないだろうか。
「さて。とりあえず脅威を排除した事だし、あとはこの少女の回復を待って……って、あれ? 呼吸してな……い!?」
ずっと抱きかかえて走り回って居たのが悪かったのだろうか?
しかし、あの状況でその辺に置いて置くわけにもいかなかったし……って、それより治癒魔法!
……ダメか。蘇生魔法なんて流石に使えないし……じ、人工呼吸っ!
「ご主人様。そのような見ず知らずの者にキスするくらいなら、どうか私に……」
「違うっ! この子、息をしていないんだっ!」
「えぇっ!? 何とかしないと! 何か、何か……あの、これを飲ませてみてはいかがでしょうかっ!」
モニカが何処からか取り出した小瓶を渡してきたので、藁にもすがる気持ちで少女に飲ませてみると、
「……魔力が回復しました。前回、強制終了した為、一部のデータが破損。復元……失敗。初期化……一部を除いて成功。再起動します」
目を覚ましたものの、訳の分からない事を言い出した。
「流石、ご主人様ですね。息を吹き返しましたね」
「……あの瓶には何が入っていたんだ?」
「すみません。咄嗟に何か薬のような物をと考え、ご主人様が私の中に出してくださったアレをお渡ししました」
「……って、何てものを飲ませているんだよっ!」
「き、機会があれば、メイリン殿に人形を作ってもらおうかと思っておりまして」
少女が目を覚ましてくれたから良かったのは良かったのだが……何故、そんな物で?
とりあえず、大丈夫なのだろうか。
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