第104話 ご休憩所

 ノーラが建ててくれていた休憩用の家は、広い部屋が二つと、お風呂だけの簡易な造り。

 だが疲れているニナを、遠い南エリアにある家まで歩かせなくて良いというだけで十分だ。

 頑張ってくれたニナとその人形のニアを労い、リディアが用意してくれていた食事に。

 ちなみに、事前にメイリン経由で連絡がいっていたらしく、地下洞窟探索組を含めて全員集合しているのと、ニアの家族……というか、ペアになっている俺の人形や、ニアの子供たちも居る。


「わーい! パパやママと一緒にご飯って初めてだから、嬉しいっ!」


 俺とニナの人形と、その子供たちが居るからか、普段にも増して賑やかで……って、モニカは俺の人形にくっつき過ぎだ。

 妻のニアが頬を膨らませているぞ。


「お兄ちゃん。エリーに言われて、寝室は二つ作ったんだけど、お風呂は流石に一つしかないんだー。どういう順番で入るー?」


 ノーラの言葉に、小さな子供が居る人形たちから……と言ったのだが、我々が先に入る訳にはいかないと、人形ちが頑なに断るので、いつも通りユーディットとソフィから入ってもらう事に。

 続いて俺たちが入るのだが、


「おぉ、木で出来たお風呂か。また雰囲気が違って良いな」

「ニナちゃんが居なかったから、なんとか木で作ってみたんだー」

「そうか。ありがとうな」


 ノーラの頭を撫で、抱きつかれ、分身スキルを使い……まぁ要はいつも通りだ。

 明日も頑張ってもらう為に……と言いながら、メイリンが俺とニナの人形を二組作って居たし。

 その後、俺たちがお風呂を出てから、やっと人形たちがお風呂へ。

 別に人形たちが俺たちよりも先に風呂へ入るくらい気にしないのに。


「あ、アレックス。えっと、今日の分の聖水なの」

「あ、あぁ……ありがとう」


 お風呂から出ると、ユーディットが恥ずかしがりながら、温かいカップを差し出してくれた。

 ……これ、どうしようか。

 南の家だと、フィーネの魔物除けを作る部屋があるんだが、ここにはベッドの無い、毛布を床に敷くだけの寝室しかない。

 寝ている間に、誰かが蹴ったりしてしまったら、大惨事になってしまう。


「旦那様。その聖水……妾が使っても良いですか?」

「あぁ、構わないが……ユーディットの人形を作るのか?」

「はい。天使族の人形が作れるか確認しようかと……出来ましたね。では、ユーリと名付けたいと思います」


 メイリンがユーディットの聖水で人形を作ると、小さな羽が生えた、六歳くらいの可愛い女の子が現れた。


「おぉぉ……ご主人様っ! この子の可愛らしさは、マジ天使ですっ!」

「いや、ユーディットは天使族だって」

「そうですが……この純白の天使に、あんな事やこんな事を教えたいっ!」

「……とりあえず、モニカは一旦落ち着け」


 今日はもう寝るだけだから、メイリンが俺のアレを入手する事はないし、ユーリが俺の人形とあんな事やこんな事をする事はないだろう。


「……って、あれ? どうして、ユーリのペアとなる、俺の人形まで増えているんだ?」

「先程、お風呂で旦那様が妾の中に出してくださったのを使わせていただきました」

「……そ、そうか」


 確か人形生成スキルは、メイリン自身の人形は作れないんだったな。

 だからメイリンのと混ざっていても、俺の人形だけが作られると。

 ユーディットには、ノーラ同様にそういう知識が無さそうなので、大丈夫だろう……たぶん。


「なるほど。どうして、小さい子供が沢山居るんだろうって思っていたけど、メイリンのスキルだったんだねー。まるで私の子供が出来たみたい」

「そうなんだが……そういえば、ユーディットはジョブを授かってはいないんだよな?」

「ジョブ? もちろん授かっているよー。天使族は、千二百歳で授かるの」

「千二百歳!? ユーディットって何歳なんだ?」

「私? んー、たぶん千三百歳くらいかな?」


 これは、エルフとかと同じで、人間とは寿命が全然違う種族って事か。

 それにしても、この容姿で千歳以上っていうのは凄いが。


「話を戻すとー、私はヴァルキリー……戦乙女っていうジョブだよー。槍と神聖魔法が使えるの」

「空を飛べて、戦えて、神聖魔法が使えるなんて凄いな」

「あ、あと……せ、聖水も作れるよ?」

「そ、そうだな。うん、凄い」


 ユーディットは、恥ずかしそうにするなら、聖水の事を言わなければ良いのに。

 そんな話をしているうちに、人形たちがお風呂から上がって来たので、就寝する事に。

 エリーが、人形たちには人形たちの営みが。私たちには私たちの営みがあるから、人形たちは隣の部屋へ行くように……と言っているが、エリーは何をするつもりなんだ?

 さっき風呂であれだけしたじゃないか。

 そう思った直後、


「≪夢見る少女≫」


 フィーネのスキルで皆が毛布の上に倒れ、いつも小部屋でしている事が始まりそうになった所で、隣の部屋から嬌声が聞こえてくる。

 なるほど。フィーネのスキルが有効なのは、この部屋の中までか。


 フィーネを満足させ、そろそろ寝ようと、意識がまどろんできた所で……あれ? ソフィと目が合った?

 まさかソフィには、フィーネのスキルが効いていない!?

 ……と思ったが、再び目を向けると、眠っているように見える。

 気のせい……気のせいだよな?

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