第103話 第四魔族領の東端
翌日も、その翌日も……数日間、朝から夕暮れまでリディアや人形たちと共に東に向かって通路を作り続けていると、
「アレックスさん。あれ……何か変ではありませんか?」
リディアが何かに気付く。
リディアが指し示す先を見てみると、確かに違和感がある。
まるで、地面がそこで途切れているような……って、実際に途切れている!?
一先ず、石の壁で通路を作って行くと、
「……ここが魔族領の端なのか」
断崖絶壁というか、テーブルの端というか……突然地面が無くなり、遥か下に地面があった。
ただ、恐る恐る覗き込んだ真下は、ここと同じ土がむき出しになった地面のように思えるが、その先――といっても、それなりに距離はあるが――には、ユーディットが見たという大きな湖や、村っぽいものも見える。
「確か、この第四魔族領は、魔族によって更地にされたという話だが……元々あった土地の上に、大量の土をかぶせて固めたって事なのか?」
「そういう事ではないでしょうか。地下に物凄く広い洞窟があったり、巨大な地底湖があったりする訳ですし」
魔族の事はよく分からないが、元々ある地形を更地にするよりは、上から土をかぶせた方が楽だった……という事か?
それはそれで、大量の土を生み出す魔力なり、どこかから運んでくるなり、相応の労力は必要な気もするが。
「一先ず、あの村へ行くには、ここを降りる必要がある。ニナを呼んでくれないか」
人形たちにそう伝えると、人形たちの武器や鍋などを作ってくれているニナがメイリン経由で呼ばれ、暫くして姿を現す。
「お、お待たせ。お兄さん、どうしたの?」
「遠くまで済まない。あの村へ行きたいんだが、ここで地面が途切れていて、かなり下まで降りないといけないんだ」
「なるほど。つまり、ニナが斜めに地面を掘って、あの辺りに出る様にすれば良いんだね?」
「あぁ。小屋の北側にある洞窟のように、緩やかに下って行くのが理想なんだが、出来るか?」
「んー、目測だし、ちょっと難しいけど、とりあえずやってみるよ」
断崖絶壁を覗き込んでいたニナが立ち上がり、通路を西へ戻って行く。
かなり歩いた所で、
「あんまり自信はないけど、この辺りなのかなー? とりあえず掘っていくね」
ニナが足を止めた。
「すまないが、頼む。……そうだ。確か、シェイリーの話では、ニナから貰った、鉱物専用のストレージスキルが使えるはずなんだが、俺や俺の人形に手伝える事はあるか?」
「んー……じゃあ、お兄さんが側で応援してくれると嬉しい」
「分かった。任せろ!」
一先ず、リディアや人形たちは別の開拓作業へ移ってもらい、代わりにニナの人形を呼んでもらう。
それから、斜め下に向かって地面を掘り始めたニナの側で応援していると、
「お兄さん。その声を掛けてくれるのも嬉しいんだけど、応援で、その……キスとかしてくれると嬉しいな」
具体的な応援方法のリクエスト……というか、おねだりされてしまった。
ニナがサクサクと地面を掘っていき、時折手を止めて俺を見て来たら、キス。穴を掘ってはキス。そんな事を数回繰り返していると、
「パパもママもラブラブーっ! ねぇ、パパー! ニアにもチューしてーっ!」
呼んでもらった事をすっかり忘れていた、ニナの人形、ニアが来ていた。
そこからはニアも加わり、キスをせずに掘り進め、
「パパー! もう、お外が暗くなり始めてるってー」
メイリン経由で連絡があったのだろう。
ニアから指摘され、今日の作業を終える事に。
掘ってもらった洞窟を皆で戻り、地上に出ると、
「おかえりー! お疲れ様」
ノーラやフィーネが出迎えてくれて、洞窟のすぐそばに、少し大きめの家が建っていた。
「ノーラ、これは?」
「勝手に建てちゃって、ごめんなさい。ここから家まで戻るのは大変だと思って、ボク、人形さんたちと一緒に休憩するお家を……」
「あ、いや。怒っている訳じゃないんだ。ただ驚いただけだよ。ニナの事を想って建ててくれたんだよな。ありがとう」
ノーラの頭を撫でると、嬉しそうに抱きついてきて……って、右腕に柔らかい感触!?
「アレックス様ー。フィーネも沢山魔物除けを作って、人形さんたちに壁を広げてもらったんですー。褒めてくださいよー!」
「あぁ、フィーネも、ありがとう」
くっ……フィーネが俺の右腕に抱きつき、胸で腕を挟んできたっ!
今はノーラが居るのにっ!
かと思えば、今度は左手が握られた?
「お兄さん。ニナも褒めて褒めてー!」
「もちろん。ニナが一番頑張ってくれたからな」
俺の左手を握っていたニナを褒めると、
「パパー! ニアもーほめてーっ! ママみたいに、チューしてー!」
ニアも色んな事を言い始め……とりあえず疲れを取るためにと、ノーラが建ててくれた家へ入る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます