第621話 巻き込まれる司祭

「あ、アレックス様! もっとお願い致しますっ! 物凄く……物凄く久しぶりなんですからぁぁぁっ!」

「アレックス様っ! 前にしていただいた、歩きながらの……アレをお願い致しますっ! ……こ、これっ! これですぅぅぅっ!」

「えっ!? 何それ、クララ! わ、私にもっ! 私にもその歩きながらというのを……おほぉぉぉっ!」


 メイドさんたちの大半が気絶した中で、ヘレナとクララが大変な事になっていた。

 特にクララは、聖女と呼ばれるジョブで……うん。そんなの関係ないと言わんばかりに激し過ぎるからか、サクラとナズナが引いているのだが。


「ふ、ふぅ。久々の歩きながらのは衝撃が凄すぎて……あ、あれ? サクラさんやナズナさんは、どうされたのですか?」

「え? 流石に理性までは捨てられ……こほん。え、えっと、まだ次がありますので」

「次? あ、そっか。アレックス様を待っている方々が他にも大勢いると……そうだ! ≪転移≫」

「え!? クララ殿……」


 サクラとナズナが驚きの表情を浮かべたところで、景色が一瞬で変わり、見慣れた教会に居た。

 広く天井の高い礼拝堂で、司祭が高々に神様の話を説いている。

 話しているのは知らない女性だが、この場所は六合教の教会で……クララが転移スキルを使い、ベイラドの街へ来たようだ。


「えっ!? きゃぁぁぁっ!」


 すると、突然悲鳴が聞こえて来た。

 どうやら前で話をしていた司祭が悲鳴を上げたようだが……こっちを見て叫んでいるようだ。


「何かあったのか!?」

「へ、変態が……し、シスター! 兵士さんに連絡をっ!」


 変質者か。

 魔物などでなくて良かったが、放置は出来ない。

 とりあえず、おかしな事をしないように剣を見せて牽制を……って、剣がないぞ?

 ……って、裸なんだが!

 というか、全裸のクララが俺に抱きついていて、入ったままなんだが!

 周囲には司祭の話を聞いていたであろう街の人たちが数人居て、思いっきり俺とクララを見ながら、後ずさっていく。

 しかも間の悪い事に、転移前に出していた分身たちとヘレナが頑張り……出てしまって、クララがビクンビクンと身体を震わせる。

 司祭の叫んだ変態って、俺たちの事かぁぁぁっ!


「し、司祭様! 突然全裸の人たちが隣に現れて……お、女の人がビクビクって。き、気持ち良さそうだけど……あれ? この女性は何処かで見た事ある気がする。もしかして、聖女様!?」

「せ、聖女様がそんな変態のような事をするはずがありませんっ! それより、シスター! 早く兵士さんたちをっ!」

「~~~~っ! ……ふふ、アレックス様。是非、この街の方々にも愛を授けてあげてくださいま……せ」


 隣の女性がクララに気付き、前に居る司祭が慌て、そしてクララが気を失った。

 つまり、転移スキルでクワラドの街の屋敷に戻る事も出来ず……ど、どうすれば良いんだっ!?

 絶対絶命のピンチだと思っていると、奥からシスターが女性の兵士たちを連れてきた。


「司祭様。兵士を呼んで参りましたが、何事ですか?」

「あ、あっちに変質者がいます! おそらく、今日が女性信者限定の祭儀だと知って忍び込んだのでしょう! 捕らえてください!」

「うわっ! 本当に全裸の男女が……ん? あれはまさか……」


 シスターもクララに気付いたのか、連れて来た兵士に何と指示してよいか考えだすと、突然礼拝堂の奥、司祭の後ろにある女性の像が輝き始める。


「アレックス……来るのが遅すぎます」

「その声は……六合か?」

「えぇっ!? り、六合様が降臨されたのっ!? この教会で神様が降臨されるという噂は本当だったんだ……でも、何もこんなタイミングで降臨されなくても!」


 教会の天井から光り輝く兎耳の女性が降り立ち、司祭が恭しく頭を下げ、クララの事を知っているシスターたちが……どうして、服を脱ぐんだっ!

 連れて来た女性兵士たちが物凄く困惑しているし、周囲に居る教会へ来ていた人たちも、どよめいているんだが。

 まぁ、アレを周囲に晒す訳にもいかず、全裸のままで、いまだにクララの中に入れっ放しの俺が、この中で一番おかしいんだけどなっ!

 そして、六合が俺に近付いて来ると、


「さぁ私にも……というか、ここに居る全員を公平に抱いてもらうぞ! ……分身」


 六合が勝手に俺の分身を解除し、再発動させた。

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