第620話 物凄く久しぶりに訪れるクワラドの屋敷

 オリヴィアに続きたいと言うクロエやシャーロットたちに襲われてしまったが、ひとまず昼にランランの塔へ戻って来た。

 ……野菜村で、オリヴィアの母親たちから、赤飯という特別な時に食べるという料理をいただいてしまったが。


「アレックス様ぁぁぁっ! 遅いですのぉぉぉっ! どうしてもっと早く、戻ってきてくださらなかったんですのぉぉぉっ!」


 塔へ着くなり、シアーシャが半泣きで抱きついて来たが、一体何があったのか。


「……シアーシャがね。お腹が空いたからって、ヴァレーリエさんの血を飲もうとしたんだよ」

「だって、ドラゴンの血って飲んだ事がないんですの。どんな味か興味があったんですの」


 ザシャが説明してくれたが……どうして、シアーシャはマズそうな行動ばかりしてしまうのか。


「シアーシャは仲間の血を飲もうとするのは止めてくれ。それが出来ないようなら……」

「も、もうしませんの! ヴァレーリエさんにも、額から血が出るまで地面に擦り付けて謝りましたのぉぉぉっ!」


 今は血が止まっているものの、うっすら傷が付いているので、おそらく本当だろう。

 というか相手がヴァレーリエなので、その程度の傷で済んで良かったとさえ思えてしまのだが。

 ちなみに、ヴァレーリエが怒りながらも昼食を作ってくれたそうで……ヴァレーリエを労い、魔法陣でザシャとシアーシャも連れて第四魔族領へ移動する。


「えぇぇっ!? ここは一体……ま、待って! さっきの玄武並み……いや、それ以上に魔力の高い存在が居るっ!?」

「む? アレックスよ。珍しい者を連れておるな。こっちは魔族で、そっちは吸血族か?」


 シェイリーがザシャとシアーシャを見て……呆れているな。

 まぁシアーシャはまだしも、ザシャは魔族だからな。

 見た目には普通の少女だが、シェイリーやヴァレーリエのように魔力が視える者にはすぐ分かるし、俺も聖騎士だからか、何となく分かるんだよな。


「いろいろあったんだよ。で、ちょっと魔法陣を使わせてもらうぞ」

「それは構わぬが……いや、どうせここへ戻って来るのであろう? その時、纏めて伝えよう」

「え? その言い方は気になるんだが」

「後のお楽しみだ。行ってくるがよい」


 結局シェイリーは何の話かを教えてくれず、もう一つの魔法陣を使い、シーナ国の南東にあるクワラドの街の屋敷へ。

 ちなみにカスミの提案で、ユーリは第四魔族領で待機とし、イネスの人形のイリスが同行する事に。

 ユーリは長らく俺と一緒だったからな。

 久々にユーディットにも会いたいだろう。

 そんな事を考えながら、クワラドの屋敷の魔法陣がある部屋を出ると、ヘレナとクララ、屋敷に勤めるメイドさんたちと、この屋敷に待機してくれていたイネスの人形イースが廊下に並んでいた。


「事前にイースさんから聞いていたけど、本当に……本当にアレックス様が来てくれたぁぁぁっ!」

「ヘレナ。留守の間、この屋敷と魔法陣の警護を担当してくれて、ありがとう」

「いえ、お安い御用です! ですが、それよりも早くご褒美をお願いしますっ!」

「って、どうしていきなりスカートを脱ぐんだっ!?」


 何故かヘレナが下半身を露出し、廊下の壁に壁を突くと、俺に尻を向け始めた。


「あ、アレックス様! 私にも……私にもお願い致しますっ! 早くぅっ!」

「ご主人様っ! 我々も首を長くして、来ていただけるのをお待ちしておりましたっ! 是非お願い致しますっ!」


 よく見ると、ヘレナの隣に居たクララと、メイドさんたち十数人も同じ様に尻を突きだして……いや、何をしているんだ!?


「あはは、パパー。腰のマッサージは私たちに任せてね! リビングに居るから、限界が来る前に私の所へ来てねー!」

「って、イースにイリス!? その乾いた笑みは何なんだっ!?」

「お兄さん。さぁ、始めましょうか。この為に、イリスちゃんに来てもらったんだから。この屋敷はイースちゃんも居るし、お兄さんなら大丈夫よ。という訳で、分身してね」


 イースとイリス……二人のイネスの人形がリビングへと姿を消し、カスミに抱きつかれ……サクラやナズナまで脱ぎ始めた。

 えっと、カスミたちが来てくれたのは、周辺の情報収集の為じゃなかったのか!?

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