第132話 百合は大切にしましょう
騰蛇の姿が消え、皆も目を覚まし始めたので、一先ず当初の予定通りモニカとレイにお仕置きの掃除を依頼して、家へ戻る事にした。
……って、掃除道具などが何もないけど、モニカが水魔法を使えるし……レイが何も出来ないな。
仕方が無い。一番悪いのはモニカで、レイはとばっちりな気がしなくもないし、レイは解放してあげようか。
「アレックス。どこへ行くの」
「あぁ、改めて考えてみたら、レイは罰を受ける必要が無いと思ったからさ。掃除から解放しようと思ってさ」
大した用件でもないので、エリーの一緒に行くという申し出を断り、皆を先に戻らせ、一人で訓練場へ。
そこでは、まだ掃除が始まっておらず、何やらレイとモニカがヒソヒソと話していた。
「おーい、レイ」
「あ、アレックスはん! な、何やろ? そ、掃除やったら、今からモニカはんと一緒にやるで」
「いや、よくよく考えたら、モニカは罰を受けるべきだけど、レイはそれほどでもないかと思ってさ。レイは戻って来ても良いぞ」
「え……せ、せやけど、ウチも悪い所はあるし、モニカはんと一緒に掃除するわー」
「そうなのか? だが……」
「え、えっと、ついでにモニカはんに相談したい事もあるし……」
何故かレイがやたらとモニカと離れたくなさそうなので、一先ず離れる事にしたのだが……そうか。そういう事だな。
前にレイがモニカと激しくキスをしていたが、今日は俺がユーディットからチャージスキルを得てしまったが為に、レイが早々にダウンしてモニカと出来なかったから、二人でそういう事をするのか。
つまり、レイとモニカは女性同士であるものの、そういう関係になんだ。
昔から、百合の間に挟まる男は棒に当たると言うしな。あの二人が居る時には近寄らず、そっと見守る事にしよう。
「あれ? アレックス。レイを呼びに行ったんじゃなかったの?」
「いや、どうやら二人で相談したい事があるらしくてな。そっとしておく事にしたんだ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、とりあえず私は普段の作業に移ろうと思うんだけど……モニカさんが居ないし、サクラさんと一緒に行動するわね」
「そうだな。流石に魔物が出る場所に一人で行かせる訳にはいかないし、そうしてくれ」
既に昼からかなり時間が経っているが、だからこそ少しでも開拓作業に取り掛からなければと、皆がそれぞれの作業に取り掛かる中、
「アレックス。我は何をすれば良いのじゃ?」
ミオが何をすれば良いか分からず、困っている。
「そうだな。昨日、人形が増えたから、ノーラとゴレイムが急ピッチで小屋を建てているんだが、その手伝いとかって出来ないか?」
「ふむ。それはつまり、木を運んだりするのじゃな?」
「まぁそうだな。木はゴレイムが運んで、加工はノーラがするけど、どちらも忙しいからな。少しでも手伝いが出来るとありがたい」
「ふっふっふ、任せるのじゃ。今度こそ、我のスキルの真価を見せるのじゃ」
「……もう、あの召喚スキルみたいなのは使わなくて良いぞ?」
「違うのじゃ。我のもう一つのスキルなのじゃ」
本当に大丈夫なのか? と思っていると、ミオが懐から変な形の紙を取り出した。
「それは、式札……だっけ?」
「その通りなのじゃ。この式札を使って、低位の存在を呼び出すのじゃ。さっきと違って、完璧に制御出来るのじゃ」
「本当に大丈夫なんだな?」
「当然なのじゃ! 出て来るのじゃっ!」
ミオが式札を投げると一瞬で形が変わり、
「にゃー」
可愛らしい鳴き声が聞こえて来た。
「なぁ、ミオ。あれは……何だ?」
「……し、式神なのじゃ」
「俺には猫に見えるんだが」
「ね、猫の式神なのじゃ」
猫の式神……って言うけど、俺には普通の三毛猫にしか見えないんだが。
「で、あの猫が式神だとして、何が出来るんだ?」
「……い、癒し……働く者たちを癒すのじゃ」
いやまぁ癒しにはなるかもしれないが、結局何か作業が出来る訳ではないんだよな?
ちなみにシェイリーや騰蛇とは違い、ミオの呼び出す下位の式神は、式札を消耗する代わりに召喚時間などが無いそうで、
「お兄さん! 可愛い……猫ちゃん可愛いっ!」
「アレックスー。猫、癒されるー!」
「マスター。私の開発室に猫は困り……くっ、愛らしい目を向けてもダメです。ここは精緻なマジックアイテムが……ま、マスター! 困ります! 猫が、猫が可愛いですっ!」
ニナやユーディット、ソフィから可愛がられる事に。
その一方で、
「お兄ちゃん! ボクの方が可愛いよね? 可愛がってよー!」
「わ、我はアレックスの妻なのじゃ。猫よりも、我を愛するのじゃ!」
獣人族のノーラとミオが、謎の対抗心を燃やしながら俺に抱きついて……って、ミオが呼び出したんだけどな。
一先ず、新たな住人? が一匹増える事になった。
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