第278話 フィーネのおまじないパニック

 マミとジュリに頼んで魔族領へ戻ると、メイリンが……というか、殆どの女性陣が待っていた。

 しかし、その中でもフィーネとメイリンが涙目で胸を押さえている。

 一方で、ユーディットやシェイリー、リディアやモニカあたりは平然としているが。


「旦那様! お待ちしておりました!」

「メイリン。何があったんだ? 胸を押さえているが、苦しいのか?」

「は、はい。とても苦しいのですが、ユーディットさんの治癒魔法では治らないのです。シェイリー様曰く、アレックス様のアレをいただければ治るのではないかと」

「苦しいのに治癒魔法が効かない!? どういう事なんだ!? ≪ミドル・ヒール≫!」


 ユーディットの治癒魔法と俺の治癒魔法は同じ中位魔法なので、効かないと言われたが、一応メイリンに治癒魔法を使ってみて……何も変わらず、涙目でメイリンが胸を押さえたままだった。

 とりあえず症状を聞いてみたいのだが、メイリンもフィーネも、無言で首を振るだけだ。


「旦那様。どうか何も言わずに、このままアレを頂戴出来ないでしょうか」

「だが、胸が苦しいのだろう? そんな状態で……」

「アレックス様ー! こんな状態だからこそなんですー! とにかく、いつものをしましょう!」


 メイリンとフィーネが胸を押さえたまま俺に近寄ってきて、だったら……と、他の女性陣たちも近寄って来た。

 いや、俺のアレで治る……って、本当なのか!?

 そんな事より、急いでステラに……プリーストに来てもらって高位の治癒魔法を使ってもらった方が良いのではないだろうか。

 そう思った所で、嬉しそうな表情のモニカが前に出て来た。


「ふふふ……何故かメイリン殿とフィーネ殿は、嫌がっておりますが……ご主人様! 私を見てください! ご主人様好みの女の子になりましたっ!」

「ん? 俺好みって何の話だ? ……あれ? というか、モニカ。いつもと何か様子が……えっ!?」

「お気付きになられましたか? えぇ、そうです。フィーネ殿のおまじないスキルにより、胸が小さくなったのです! ご主人様好みの貧乳ですよ! さぁ、ちっぱいになった私を思う存分可愛がってくださいませっ!」


 いつも、胸が零れ落ちそうなメイド服姿のモニカだが、今日は胸の部分が平らでペッタンコになっている。

 これはつまり、フィーネがおまじないスキルを使った際に、モニカの近くに居たメイリンやフィーネ本人が巻き込まれてしまったという事だろうか。

 よく考えたら、メイリンは決して胸が小さくないし、フィーネに至っては腕で隠せる程の大きさではない。

 それなのに、それぞれが片腕だけで隠せているという事は、つまりそういう事なのだろう。


「……ん? だが、ユーディットやヴァレーリエは変化が無さそうだが」

「私は変な力を感じたから、とっさに防御魔法を使ったのー。傍に居たエリーさんも守ったよー」

「ウチは普通に効かなかったんよ。まぁ竜人族だから、そんな状態変化は効かないんよ」


 なるほど。エリーとユーディットが影響を受けなかったのは良かった。

 フィーネのスキルの影響がどれ程かは分からないが、万が一にも、お腹の子供に何かあったら困るからな。


「さて、という訳で早速するのだ! アレックスよ。二人が困っておるぞ。早く分身するのだ」

「シェイリーはヴァレーリエと同じく、おまじないが効かなかったけど、便乗しに来たという事か?」

「その通りだ。我だけでなくミオや、そこのエルフも同じであろう」


 シェイリーに言われて目を向けると、既に脱いでいるミオが居て、その隣で何やら身体を震わせるリディアが……あ! これはもしかして……


「はっはっは。リディア殿も、フィーネ殿のおまじないスキルで貧乳になったというのに、元が小さすぎて気付いてもらえず……ひぃっ! ま、待ってくれ! リディア殿……せ、せっかくのちっぱいタイムで、ご主人様に沢山愛してもらえるチャンスだ! 怒りを抑えて……」

「乳女さん。誰の何が小さいのですか? 是非、教えていただきたいですね。ゆっくりと」

「り、リディア殿。目が、目が笑っていないのだが……リディア殿ーっ!」


 モニカがとんでもない事を口にして、リディアに精霊魔法で吹き飛ばされていく。

 一瞬、モニカと似たような事を思ってしまったが、口に出さなくて良かった。

 ……あ、メイリンとフィーネの口には出さないといけないらしいが。


「楽しそうポン! 私も混ざるポン!」

「アレックスさん。私は大きいままですよー! さぁどうぞ」


 マミとジュリも参戦し……急いで帰って来たが、結局いつも通りになってしまった。

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