第277話 C級商人
「では、こちらをお持ちください。鑑定結果についても、記載させていただきましたので」
「分かった。では預かろう」
流石に商人ギルドが悪用したりはしないだろうし、自らここまでしてくれているのだから、大丈夫だろう。
「そういえば、先程南に街があると言っていたが、その行き方を教えてもらう事は出来ないだろうか」
「えーっと、商人ギルドとしては構わないのですが、この国が少し特殊でして、地図情報をお伝えする事が出来ないんですよ。ただ、ギルドメンバーであればお伝えする事が出来るので、この機会に商人ギルドへ加盟していただけると……」
「なるほど。とりあえず、説明を聞いても良いか?」
ギルドの女性に詳しく話を聞いてみると、商人ギルドに加盟すると、冒険者ギルドと同じように、依頼を請ける事が出来るらしい。
何かしらの魔物を倒してきて欲しいという冒険者ギルドの依頼に対して、何かしらの品物を売って欲しい……と言った感じで。
ギルド経由の取引は必須ではないが、ギルドを介すると、その金額に応じて等級が上がり、商人の信用に繋がるのだとか。
逆に言うと、商人ギルドに加盟していなかったり、加盟していても等級が低い商人は、信用が無いとみなされる為、大きな取引が出来ない事があるそうだ。
「ふむ。これから作物やポーションなどを本格的に取引していくのであれば、加盟していた方が良さそうだな」
「はい。最初はF級からスタートですが、今加盟していただければ、マジック・ポーションの事もありますし、D……いえ、C級スタートで、提携店の品を割引価格で買えたりしますよ?」
「そうか。……冒険者ギルドでは、何回か連続で依頼を失敗すると、降格となったりするが、そういうのは無いのか?」
「一定期間中に、等級に応じた金額以上の取引がないと降格というのはありますが、半年以上はありますので、大丈夫かと。ただし、信用を損なう不正な取引……偽物を納品したり、ギルドが定めた適正価格から著しく離れた金額で商品を売買したりすると、厳罰ですね。場合によっては、除名などもあるかと」
……適正価格か。
この前、レナが露店で交渉の上、七割引きで商品を買っていた気がするんだが。
「あ、この街の露店から買う分は大丈夫ですよ。店舗を構えていないですし、そもそもあの人たちは商人ギルドに属していませんし。まぁ正規の商人ギルド加盟者が、露店販売はともかく、露店で法外な値段の商品を売っていたら問題ですが」
露店に関しては、文化や風習などもあり、取締り出来ない国や街もあるそうだ。
なので、シーナ国の露店は大半が商人ギルドに加盟していない店なので、購入時は注意が必要だと言われてしまった。
うーん。もっと早くこの話を聞いておくべきだったな。
「わかった。では、俺がギルドに加盟しよう。代表者だけで良いよな?」
「はい、それは勿論! ではこちらの用紙に……ありがとうございます。アレックスさんですね? ……あれ? 何処かで聞いた名前のような……まぁいっか。では、こちらが商人ギルドのC級登録証になります。再発行には費用が掛かりますので、紛失にはご注意ください」
「ありがとう。で、話を戻すのだが、南にある街への行き方を教えて貰えないだろうか」
「畏まりました。ただ、私が教えられるのは、一つ隣の街までです。それ以上は、この国の法に抵触してしまいますので」
色々と面倒だなと思いながらも、一先ず次の街への行き方がわかった。
ゆっくりではあるが、シーナ国の中央へ行き、闇ギルドを潰さないとな。
しかし、問題は……今は魔族領からすぐの所に居るが、これ以上離れると日帰り出来なくなる。
向こうで何かあった時に、メイリン経由で情報は貰えるものの、すぐ戻れないのは困る。
昨日のように、いきなりトラブルが起こったりするかもしれないからな。
そんな事を考えていると、
「お、お父さん! 何かよく分からんけど、急いで戻ってきて欲しいんやって! メイリンお母さんが呼んでるねん!」
突然レナが慌てだす。
一体何が起こったのかはわからないが、マミとジュリに頼み、大急ぎで帰る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます