第276話 ステータスアップ・ポーション

 ウララドの街へ着くと、いつものようにジュリの家で樽から出され、


「アレックス様ー! おはようございますー!」

「父上。おはようございます」


 ケイトとツキに、俺の人形たちから出迎えられる。


「おはよう。あれ? レナは?」

「レナは、ウララドの街の薬屋で知らない薬草を見つけたそうで、その研究に没頭しています。向こうにいる人形経由で、レイさんと話しながら色々やっているみたいですね」

「そうか。ならば、後で必要な器具などが無いか聞いておこうか。まだケイトが住む家は決まっていないだろうから、ジュリの家に居るんだよな?」


 ツキからレナの話を聞いてので、一応確認してみると、


「あー、あの私がジュリさんの家を出るというお話なんですが、その……いろいろありまして、この家で居候させていただく事になったんです」

「そうなのか? ジュリ……良いのか?」

「え、えっと、何と言いますか……私からケイトさんに、この家に残っていただきたいとお願いしたんです」


 ケイトとジュリから、家を出るという話が無くなったと告げられた。

 ケイトは家を借りる費用が浮くのは助かるだろうが、居候はジュリに気を遣うとか言っていなかっただろうか。

 ジュリもジュリで、ケイトを家に居候させておくのは問題ないのか?


「ケイトもジュリも、二人が良いのであれば構わないと思うのだが……ジュリは良いのか?」

「は、はい。その、ケイトさんが居てくださると、警備としてアレックスさんの息子さんたちが居てくれますから」

「き、昨日はちょっと激しかったですよね。まさか、アレックスさんの息子さんたちが分身するなんて予想外で、女性陣で攻めるつもりが、逆に数で押されちゃって……三本同時とか初めてでした」


 あー……その、ジュリもケイトも程々にな。


「では、そろそろ商人ギルドへ行きたいのだが……」

「お父さん。レナはこちらの部屋です」

「レナ……入るぞ」


 一応尋ねて返事があったので中へ入ると、俺には枯れている葉っぱや、木の枝にしか見えない何かを、レナが観察しながら、ひたすら紙に何かを記していた。

 おそらくだが、あの葉っぱの特徴などを調べているのだろう。


「忙しい所にすまないな」

「ううん。大丈夫やでー。それより、お母さんが作った凄いポーションを見てもらいに行くんやろー?」

「あぁ。悪いが付き合ってくれないか?」

「もちろん! ほな、行こー!」


 レナについて来てもらって商人ギルドへ行くと、


「あ、以前にS級マジック・ポーションをお持ちになられたお客様ですね! お待ちしておりました。あれから、微弱な魅了効果が付与されてしまうのは改善されましたでしょうか?」


 前回対応してくれた受付の女性が、俺たちの事を覚えていたようだ。


「すまない。あのマジック・ポーションは、未だ改善出来ていないんだ」

「いえいえ、ポーションの改良や改善なんて一朝一夕で出来る事では無いと理解しております。出来ていたら良いな……と、一応聞いてみただけでして。それで、あのマジック・ポーションの在庫はございますか? この街ではないのですが、南の方にダンジョンのある街がありまして、そこで物凄い需要があるんですよ。小さくて邪魔になりにくく、回復量も凄いと、上級女性冒険者たちの必需品になりつつありますね」


 なるほど。この街には冒険者ギルドが無いから、別の街で売っているのか。

 確かにギルドが効能を保証すれば、女性冒険者には売れるだろうな。

 ……若干、魅了効果が気になるが。


「マジック・ポーションはお母さんが作ってるから、また持ってくるわー。……で、そのお母さんが新しいポーションを作ってん。ちょっと効果の程を見てくれへんかなー?」

「新しいポーションですか? ふむ……先程話題になったマジック・ポーションとは異なり、普通の大きさですね」

「うん。魔力が回復するマジック・ポーションとは根本的に違う物やから」

「根本的に違う? とりあえず、調べてみれば分かりますかね」


 レイから預かった新ポーションと共に個室へ移動すると、ギルドの女性が早速鑑定スキルを使用する。


「≪アイテム鑑定≫……こ、これは、魔力が増強するポーションですって!?」

「あぁ、そうなんだ。凄いポーションだとは思う。だが、魅了効果が強化されているのではないかと懸念していてな」

「あ……確かに。かなり強い魅了状態になってしまいますね。先程のマジック・ポーションは無視出来るレベルでしたが、こちらは飲み続けると危険ですね。しかし、飲むだけで魔力が向上する……言わば、ステータスアップ・ポーションだなんて前代未聞です!」


 まぁそうだろうな。

 ただ、喉から手が出る程欲しがる人が居そうなのも事実なので、どうした物かと思うのだが。


「あ、あの……とりあえず預からせてもらって良いですか? これは私一人で判断出来ない代物です」

「わかった。とりあえず、サンプルとして三本持ってきている。ギルドを信じて預けよう」

「ありがとうございます。ですが、物が物ですので、何か書類に残してお渡し致します。少しお待ちください」


 レイが作ったポーションが凄すぎて、商人ギルドが預かる事になってしまった。

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