第524話 再び穴掘り
「んー、この先が滝ですか。あなたは大丈夫だと思うけど、私は高さ次第では死んじゃうかもしれないわね」
「いや、流石にこのまま行く気は無いぞ? それに、この岸くらいの高さなら平気だろうが、高い滝なら流石に俺だって無理だからな?」
「……アレックスなら大丈夫だと思う。たぶん」
ラヴィニアとレヴィアは、俺なら滝から落ちても大丈夫だと思っているようだが、そんな訳はないからな?
ただ河へ飛び込むだけなら平気だと思うが、滝つぼは危険だという話を聞いた事がある。
確か水の流れで川底へ沈んでしまい、浮かび上がれないのだとか。
流石に水の底に居続けたら窒息……しないな。水中呼吸のスキルを持っていたよ。
いや、だからといって滝から飛び降りる気はさらさら無いが。
「とりあえず、この辺りに船を置いておいて、徒歩で目指すのが良いと思うんだ」
「でも、徒歩と言われましても、この河は歩けるような場所はありませんよ?」
「あぁ。だから、俺とニースで掘ろうと思うんだ」
最初に俺とレヴィアたちが逸れた時も、俺とニースで河の横を掘って、地上へ上がる道を作っていたんだよな。
今回は地上へ上がるのとは逆で、滝の下へ降りられるような道を作る訳だが。
「という訳で、ラヴィニア。すまないが、この流れが緩やかな場所に居る内に、岸へ船を寄せてくれないか? 俺とニースで穴を掘り、船をしまえるようにするから」
「わかったわ。じゃあ、早速……」
そう言って、ラヴィニアが船を岸……というか崖へ寄せてくれたので、俺とニースとで壁を掘っていく。
ちなみに、大丈夫だとは思うが、念の為パラディンの防御スキルで全員のダメージを肩代わり出来るようにはしている。
ユーリが弓で射られたような事は、絶対に繰り返してはいけないからな。
「パパー。とりあえず、船はこれで流れないんじゃないかなー?」
「そうだな。念の為、石の壁をだしておくよ」
ニースと二人で掘った穴へ船を格納し、石の壁を出して船をしっかり固定しておいた。
海と違って河なので、潮の満ち引きは考えなくても良いだろう。
「じゃあ、今度は下流に向かって掘っていくか」
「うん! パパーと一緒に掘るのは楽しいねー」
ニースと共に道を作り出したのだが……ラヴィニア、レヴィア、プルムがそれぞれ暇そうだな。
「あなた。船を引かなければ、私は自在に泳げるから、どれくらいの滝か見て来るわね」
「え? 大丈夫なのか?」
「もちろん。人魚族だもの。じゃあ、行ってくるわね」
そう言って、ラヴィニアがスイスイと泳いで行く。
あー、レヴィアに比べてラヴィニアは泳ぐのが遅いというイメージがあったが、適材適所というか、河なら小回りの利くラヴィニアの方が向いて居るのかもしれないな。
そもそも船を引くなんて事、ラヴィニアはやった事がなかっただろうし。
「アレックスー。レヴィアたんが暇だから、分身出して」
「何をするんだ……って、それはダメだ」
「どうしてー? というか、分身に掘らせたら良いんじゃない? そしてアレックスはレヴィアたんと子作りする」
「いや、分身の自動行動でそこまで細かい指示は出せないんだ。嫌な予感しかしないしさ」
「むー。プルムー、遊んでー!」
暇そうにしていたレヴィアが、同じく暇そうにしているプルムの所へ行き……何やら二人で話しだした。
きっと、どんな遊びをするのか考えているのだろう。
俺は俺で、ニースと共に道を作っていると……腰に何かが巻き付いた!?
「この弾力は……プルムか? 何をしているんだ?」
「あ、大丈夫だよー。お兄さんは、そのままニースちゃんと道を作っておいてー。プルムはプルムで、お兄さんたちの邪魔をしないようにするから」
「いや、邪魔とまでは言わないが、集中力は削がれるんだが」
「まぁそれは多めに見てよー」
そう言いながら、腰に巻き付いたプルムが、変な所へ手を伸ばす。
うん、訂正しよう。思いっきり邪魔をされているな。
「……暇なのはわかったのだが、何をする気なんだ!? 正直に話せば、協力しないでもないが」
「えっとねー。レヴィアちゃんが暇だっていう話だから、お兄さんのアレをもらって分裂して、プルム・エイト? を生み出そうかなーって思って」
「……生み出してどうするんだ?」
「んー、レヴィアちゃんが、お兄さんの姿まで育ったプルム・エイトと遊びたいんだってー」
「よし、却下だ。レヴィアはプルムと遊ぶように」
レヴィアが頬を膨らませるが、他に何か無いのだろうか。
……まぁ河しかないし、何も無いのか。
とりあえず手を動かしながら、暇そうなレヴィアをどうするか考える事にした。
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