挿話62 地獄の特訓を終えたシノビのツバキ

「やったじゃない! これだけやれば、アレにも慣れたでしょ」

「……そうね」

「じゃあ、今夜にも早速父上に夜這いね」


 酷い目にあった。

 十本以上のアレに囲まれて、全方位から……いや、それはまだマシな方か。

 顔や胸は当然、髪やおへそまで汚されたかと思ったら、次は私に全員のを三回ずつ出させろって。

 全員三回出させるまで終わらないと言われ、右手と左手と足まで使って……まぁ幸い、それ以上の事はなかったけどね。

 何でも、初めてのアレの味は、あの男のにした方が良いから……って。


「ふ……ふふふっ。この地獄の特訓をさせられた私は無敵よっ! 約三十回も出させたんだもの。アレの一つや二つ、簡単に出させてみせるわ! ふふふふふ……」


 一先ず、身体中が真っ白に汚れているので、お風呂で身体を綺麗に洗って……うふふふ。臭いが……アレの臭いが身体から取れないわ。

 もう悲しいという気持ちさえ生まれず、ただただ身体を洗っていると、突然子供たちが慌ただしくなる。

 祭がどうこうと聞こえて来て、どうしたのだろうかと思ったが、それも一瞬の事。

 もうどうでも良い。

 私は……房中術であの男を虜にするんだ。


「身体はともかく、服と髪の毛からまだ臭いが取れない……だが、それももういい。あの男は、そんな事を気にしないだろう」


 男なんて、出せれば何でも良いのだろう。

 とにかく、長時間の特訓による疲れを取る為、ぐったりしていると、


「――っ!? な、何なの!?」


 西の方から白い光が真っすぐ上に昇って行き、光の柱のようなものが生まれ、周囲を明るく照らした。

 光は一瞬で消えたけど、その一瞬は昼間のように明るかった。

 あれが何かは分からないが、そろそろあの男が風呂を終えている時間だと思い、服を着て……って、乾いてない。

 いや、どうせ後で脱ぐ事になるんだ。

 半乾きの服を着て、あの男の元へ行く為にトボトボと歩いていると、


「いやー、変わった祭だったねー」

「最初の花火には驚かされたな。凄い音だったし」

「あの光の柱の後の、ノーラ殿の歌が可愛かったな」


 大勢の子供たちが楽しそうに話しながら歩いてきた。

 祭……あぁ、そういえば何か言っていたな。

 二回目の洗髪中に、大きな音が響いていた気もしたが、それが花火という物だったのか?

 何やら歌の余興があったらしいが……しまった! よく考えたら、あの男も祭に行っているのか!

 どうやら特訓で余程疲れて居たらしく、頭が全然働かない。

 日を改めて出直すべきか? ……いや、そんな事をすれば、サクラ姉の娘のサラに、更なる特訓をさせられかねない。

 心と身体に鞭を打ち、子供たちが歩いて来ていた方へ走ってみると……既に誰も居なかった。


「くっ……やはり、疲れているのか。冷静な判断が出来ていない。だけど、もう嫌だ……もうアレは増やさないでくれ。私の顔にかけないでくれっ!」


 思わずその場に蹲ると、不意に誰かの声が聞こえて来た。


「せっかくフィーネ殿におまじないを使っていただいたのにっ! もう私のアレが疼いて仕方が無いのに、どうすればよいのだっ! ……ふふふっ。こうなったら、リザードマンの村でした事を、ここで……ここでやってやるっ!」


 よく分からない事を叫びながら、女性が暗闇の中で服を脱ぎ捨てていく。

 何をしているんだ? と不思議に思っていたのだが……あ、あれ? あの反り立ったシルエットは……ど、どうなっているの!?

 シノビである私は夜目が効く方で、暗闇の中でも人影がしっかり見えるのだが、大きな胸に、女性らしい腰つきとお尻。それに、さっきの声と、前方に居る人影が女性だと示しているのに、どういう訳かアレが生えているように見える。

 女性? それとも男性? そんな事を考えているうちに、その人影が近寄ってきて、


「ん? この辺りから、ご主人様のアレに似た匂いがする?」


 私のすぐ傍でキョロキョロと周囲を見渡しだす。

 シノビである私は、この人物から生えている大きなアレがハッキリ見えているけど、夜目が効かないのか、しゃがんでいる私に一切気付いていないようだ。

 だから、そのままアレが目の前に近付いてきて……あ、あぁぁぁっ! だ、ダメ……出させなきゃ。早くしないと、ペナルティで、顔や身体にかけられる量が増やされてしまう。

 大慌てでアレをギュッと握ると、特訓でやったように動かし始める。


「あひぃっ! な、何っ!? ま、待って! 違うっ! そんなに強く握ったら……おごぉっ! らめっ! 刺激が強すぎるっ! 無理っ! むりむりむりだからぁぁぁっ!」

「待って。サラ……ノルマを増やさないでっ! 今すぐ、今すぐ出してみせるからっ! やだっ! 顔はやめてっ!」

「な、何を言って……サラって誰だっ!? というか、私のはいくらやっても、ご主人様のように出たりは……あぁぁぁーっ! 待って! 私は既にイッ……ひぃぃぃっ!」


 何故!? どれだけやってもアレが出ない!

 目の前の人物がガクガクと身体を震わせて倒れてしまったけど、私はアレを離さず、ずっと頑張り続け……どうして出ないのよっ!

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