第574話 人魚族に伝わる薬

 分身と逢瀬スキルを解除し、アマゾネスの村に居る俺の本体へ意識が戻る。


「……アレックス。今回は凄かった。レヴィアたん、満足……」

「アレックス様。今回も凄かったですー!」

「……アレックスさん。向こうで、どれだけされていたんですか? ちょっと自重された方が……」


 レヴィア、ルクレツィア、リディアとそれぞれ反応が異なるが、一体どういう状況だったのだろうか。

 こっちはプルムの分裂たちが綺麗にしてくれるから、どれくらいの状態だったのか分からないのだが……その分裂の数が増えている事と、アマゾネスの女性たちが倒れまくっているので、概ね理解した。

 うん。リディアの言う通り、自重したい。

 そんな事を考えながら、リディアが用意してくれていた昼食をいただき、再び第一魔族領へ行く方法を考える事に。


「ソフィさんの魔導装置ではダメそうなのですか?」

「あぁ。ソフィが求めていた物は無事に見つける事が出来たんだが、空に関連する物ではあるものの、空を飛んだりするような物ではないらしい」

「そうですか。しかし、それにしては随分と長くなかったですか?」

「いや、実はその後にもいろいろあったんだ」


 リディアがジト目を向けて来るので、カスミが帰って来た事とか、ムギが大きくなっていた事、そして雛鳥が有翼族の子供になった事を説明する。


「カスミさんはともかくとして、大きくなったとはいえムギさんに……しかも、雛鳥って、どうなんでしょうか」

「うっ……いや、玄武を救う為に有翼族を探そうと必死だったんだよ」


 苦しい言い訳をしていると、突然左手から大きな声が聞こえて来た。


「あぁぁぁっ! それっ! アレックス様、それーっ!」

「え!? トゥーリア、どうしたんだ?」

「今のお話だよーっ! アレックス様は、有翼族を見たんだよねー?」

「あ、あぁ。幼い子供だったが」


 何故か興奮した様子のトゥーリアが走り寄って来て、有翼族の話に物凄く食いついてくる。

 有翼族に何か引っかかる事があるのだろうか。


「あ! もしかして、トゥーリアは有翼族の棲家を知っているとか?」

「ううん、知らないよー。でも、アレックス様が実際に有翼族を見たっていうのが重要なのー!」

「どういう事だ?」

「えっとねー、これを見てー!」


 そう言って、トゥーリアが半分程液体が入った小さなビンを取り出した。


「これは?」

「この薬は、人魚族に伝わる薬なんだけど、調べた所、どうやら身体の一部を望む形に変える事が出来るみたいなの!」

「身体の一部を望む形に変える!? ……って、人魚族に伝わる薬をどうしてトゥーリアが持っているんだ?」

「あはは、まぁ今はその話は良いじゃない。それより、この薬をアレックス様が飲んで、有翼族の羽をイメージすれば、腕が翼になって空を飛ぶ事が出来るはずなんだよー!」

「本当か!? それは凄い! ……が、それは事前に確かめられるのか?」

「既に私が実践済みだよー! このビンの半分を飲んだんだけどー、三十分程おっぱいが大きくなったもん!」


 トゥーリア曰く、薬の成分を調べて自ら半分飲んだ所、思った通りに身体が変化したのだとか。

 その後、ラヴィニアにも話を聞いていて、ひれを人間の脚にして地上で暮らせるようにする薬があるという話を聞いているらしい。

 人魚族が使えば、効果は一日続くが、人魚族以外だと一時間しか効果が無いそうだ。


「なるほど。残りが半分だから、同じく三十分は有翼族となって、空を飛べるはず……という事か」

「そういう事ー! アレックス様が実際に見たものでないと、変えられないらしいから、有翼族を見たのはとても良かったと思うよー!」

「しかし、有翼族でなくても天使族ではダメなのか?」

「えっとねー、ラヴィニアにも確認済みなんだけどー、出来る事はあくまで身体の変化なんだってー。だから、腕が翼になっている有翼族は大丈夫なんだけど、天使族の翼は腕とは別に背中から生えているでしょ? そういうのはダメみたいなの」


 出来る事は、あくまで変化であって、翼を生やすというのは出来ないという事か。

 とはいえ天使族の翼も、肩や背中の変化だと思うのだが……まぁダメだというのだから、従うが。


「というわけで、アレックス様! この薬を飲めば、空を飛んで第一魔族領へ行けるはずだから、頑張ってー!」

「わかった。ありがとう。後で、ラヴィニアにもお礼を言わないとな」


 さて、行く手段は何とかなりそうだ。

 次は、宙に浮く第一魔族領をどうやって探すかだな。

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