第738話 もう一つの移動方法
「どういう事だ?」
モニカの転移スキルでアマゾネスの村へ行ったはずなのに、どういう訳か水中で、ラヴィニアが居る。
ひとまず、ラヴィニアが俺とモニカを水の上に引き上げてくれた。
「……って、あなた。モニカさんの中に……じゃあ、次は私の番ね」
「いや、これはモニカのスキルを使う為に必要な行為で……」
「ダメっ! 久しぶりに会ったし、早く子供も欲しいし、私たちは正式に夫婦何だから良いでしょ」
「いや、それはそうなんだが、今は本当に急いでいて……」
「じゃあ、分身で手を打ちましょう。そうね最低でも十体は出してね」
いや、十は多いだろ……と思いつつ、時間がないのも本当なので、ラヴィニアの要求通りに分身を出す。
「本当は、あなた自身が良かったのに」
「すまないな。その、また来るよ」
「えぇ、楽しみにしているわ。私も、もう少しゆっくりしたら、あなたの所へ戻るわね」
「あぁ、わかった。……しかし、それはそれとして、ここは何処なんだ?」
「え? 私たち人魚族の村よ。前に来たでしょ?」
「それはそうだが……どうしてモニカの転移スキルでここに来るんだ?」
不思議に思いながら、クネクネと腰を動かすモニカに聞いてみると、
「そ、それは、前にここへ来た時、溺れた事があって……咄嗟に転移スキルを、使い、ましたっ」
なるほど。
それで転移位置が変わり、ここへ来たのか。
よく考えたら、アマゾネスの村で転移スキルを使っていないので、何にせよ転移は出来ないな。
どうしようかと考えていると、奥から人魚族の女性たちがやって来た。
「あぁっ! アレックス様がいらっしゃるわっ!」
「アレックス様ぁぁぁっ! アマンダの後で良いので、是非私たちにも子種をぉぉぉっ!」
「あなた。急いでいるのでしょう? ここは私が食い止めるから、戻ってください」
そう言って、ラヴィニアがウインクして、奥へ。
「モニカ、すまない。もう一度転移を」
「んっ……わ、わかり、ましたっ! ≪転移≫」
「うふふ。さぁみんな。アレックスさんの分身をお借りしましたわ。今から皆で大乱……」
視界が変わる直前、ラヴィニアのはしゃぐ声が聞こえて来たが……ふ、深く考えないようにしよう。
あ……今更思い出したんだが、川の神セオリツヒメから、川にアレを流すなと怒られた事があったな。
……は、早めに分身を解除するようにしよう。
「ふむ、アレックスよ。あの炎の剣はどうしたのだ? 移動用の魔法陣を構築するのではなかったのか?」
「いや、実は色々とミスもあって、モニカのスキルでアマゾネスの村へ行けなかったんだ」
「なるほど。どうする? 魔法陣の準備は出来ておるが……」
視界が変わるとシェイリーが不思議そうに首を傾げ、俺の説明でどうしたものかと悩み始めた。
そんな中で、ユーディットが手を挙げる。
「それなら、旦那様が逢瀬スキルで向こうの誰かのところへ行けばいいんじゃないかなー? あの身体を作るスキルを使えば、向こうでも炎の剣のスキルが使えるんじゃない?」
「なるほど。ちょっとやってみるか……≪逢瀬≫」
早速逢瀬スキルを使い、サマンサの元へ。
事情を説明すると、村の隅にある、今は使っていない倉庫を提案してくれた。
そのままサマンサに移動してもらい、周囲を見させてもらう。
「なるほど。広さは十分だ。ここに第四魔族領――俺たちが拠点としている場所と魔法陣で繋いでも良いだろうか」
「もちろん。何かあった時に、ここから行き来出来るのであれば、私たちも助かるしな」
「恩に着る。あとは、そうだな。出来ればで良いのだが、交代で誰かが警護をしてくれると助かる。向こうには戦闘を得意としない者や、子供も大勢居るからさ」
「任せておけ。アマゾネスの女性は成人であれば誰でも戦える。アレックスの為なら、それくらいお安い御用だ」
「では、向こうに居る者に合図を送るから、端へ移動してくれ……≪偽造≫」
偽造スキルで俺の身体を作り出すと、その中へ入り込む。
さて、ヴァレーリエの炎の剣は出せるだろうか。
「≪フレイムタン≫」
スキルを発動させると、手の中に炎の剣が生み出される。
その直後、足下に魔法陣が描かれ、シェイリーの前へ戻ってきた。
「無事に上手くいったようだな」
「あぁ。シェイリー、ありがとう」
「ほほぅ。これが第四魔族領か。転移の魔法陣……凄いな」
無事にシェイリーが魔法陣を完成させてくれた……と思ったら、サマンサが第四魔族領へやって来た。
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