第739話 今度こそ出発?

「なるほど。このような場所があるから、アレックスは私の村に定住してくれないのか」

「サマンサ?」

「いや、別に何をどうこうしようという訳ではないんだ。ただ、かなり土地が広く、人も多くて開拓が進んでいるなと思っただけさ」


 シェイリーの魔法陣が完成し、いざ西の大陸へ……という所でサマンサがやって来て、辺りを見回す。

 時間があれば、この地を説明して回るのだが……と考えていると、


「サマンサさん。ここは、小屋が一つしかない場所だったのを、アレックスさんと一緒に開拓していったんです。良ければご案内しましょうか?」

「なるほど。では、是非お願いしたい」

「はい、わかりました。アレックスさん、サマンサさんは私がご案内しておきますね」


 リディアがサマンサの相手を買って出てくれたので、お願いする事にした。


「じゃあ、俺とニナは西の大陸へ行ってくるよ……って、逢瀬スキルのままだったな」


 逢瀬スキルと偽造スキルを解除すると、


「ん……アレックス様ぁ」


 視界にフィーネの顔が広がる。

 ……いや、ラヴィニアの所へ残してきた分身や、モニカの転移もあって、こういう状態なのは分かっていたが、列を作って待つのは勘弁してくれないだろうか。

 後にも列が続くが、フィーネで終わりだと宣言し、早く終わらせ……くっ! 相手が悪いか。

 フィーネが中々満足しないっ!


「……」


 ニナが何も言わずに待ってくれているけど、きっと早く故郷へ帰りたいはず!

 分身を一体追加し、二人掛かりでフィーネを満足させ……たっ!


「すまない、ニナ。待たせてしまったな」

「ううん、大丈夫だよー! それよりニナも……あはは。後でお願いするー!」


 早く行こう……というニナの無言のプレッシャーだと思っていたのだが、そっちだったか。


「ニナ殿。心配せずとも、西の大陸は凄いのだ。馬車で移動する際に……こほん。まぁ百聞は一見にしかずだ。早く行こうではないか」


 モニカがよく分からない事を言いながらもニナを促し、分身を解除した俺と共にアマゾネスの村へ。

 いろいろあって時間が経ったからか、レヴィアたちも起きていたので、改めて次の目的地を話す。


「皆、これより再び西の大陸へ戻り、地下にあると思われるドワーフの国と、第二魔族領を探そうと思う」

「……また、西の大陸。しかも地下。レヴィアたん、一緒に行けない」


 レヴィアが頬を膨らませて抱きついてくるが、こればっかりはどうしようもないからな。

 それから皆で話し合い、俺、ニナ、モニカ、グレイス、ミオ、シアーシャ、ザシャの七人で行く事に。


「にーに。ウチは第四魔族領っていう所で待っていればよいのー?」

「あぁ、ファビオラも、そっちへ行くと言っているし、一緒に行こう」

「はい。私たち以外にも獣人族の方が居ると聞きましたので、その方が良いかと」


 向こうにはビビアナやボルシチに、兎耳族も居るからな。

 きっと、そちらの方が過ごしやすいだろう。


「うぅぅ。あなた……私を留守番だなんて、酷い」

「いや、ナターリエとツェツィは、雷の力を持つだろ? 鉱物を扱うドワーフの国がには連れて行かない方が良いという話だからさ」

「ドワーフの国には、雷は鉱物をダメにするっていう言い伝えが昔からあるんだー。ごめんね」


 ナターリエには申し訳ないが、ドワーフのニナが言うなら間違いないからな。


「えー! お父さんに会えないのはヤダー!」

「そうよね。ツェツィちゃんも、お父さんのアレが欲しいもんね」


 いやあの、ナターリエはツェツィに変な教育をしないように頼む。

 そんな事を考えていると、パタパタとユーリが飛んで来て、いつものように背中に抱きついてくる。


「パパー! ユーリはいかなくて、へいきー?」

「平気かと聞かれると寂しいから平気ではないが、今回は地下だからな。ユーリが自由に飛び回ったり出来ないのもどうかと思ってさ」

「そっかー」

「それに、最近はずっと俺と一緒に居てくれたから、ユーディットに会えていないだろ? ヨハンナさんも寂しいみたいだしな」

「そうだねー! ユーディットママやヨハンナおばあちゃんにあいたいー!」

「よし。じゃあ、第四魔族領で待機する者は一緒に行こう。向こうは……そうだな。メイリンに紹介しよう」


 ディアナ、ファビオラ、ナターリエ、ツェツィーリエ、ユーリと共にメイリンのところへ。

 ちなみに、レヴィア、トゥーリア、ルクレツィアは、第四魔族領の近くに海が無いという理由で、アマゾネスの村に残っている。

 まぁこの三人は海と共に生きる感じだからな。


「という訳で、メイリン。すまないが、この四名とユーリを暫く頼む」

「それは良いのですが、誰か私の子を連れていってくださらないと、旦那様と連絡が取れずに困ってしまいます」

「あ……そうか。いつもユーリが居てくれたけど……どうしようか」


 メイリンの人形が居てくれないと、連絡手段に困る事に気付いたのだが、


「ふっ……ほな、ここはウチの出番やな!」

「えっ? レナ?」

「いや、レナはエリラドの街の孤児院で頑張っとる。ウチはレミ。まぁレイお母さんを元にしているって意味ではレナと同じやけど、よろしく! おとん」


 レナと全く同じ姿のレミが同行する事になった。

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