第299話 元兎耳族の村でお泊り

「なっ……媚薬だなんて卑怯な!」

「不意打ち系スキルでお兄さんに攻撃しておいて、何を言っているの?」

「くっ! ならばいっそ殺せっ! 裸にされて吊るされ、その男の慰み者にされるくらいならば、いっそオレは死を選ぶっ!」


 いや、慰み者って。

 とりあえず、何をしていたのかと、名前を聞こうと思ったところで、再びカスミが口を開く。


「何か勘違いしているようですが、あなたにお兄さんのをあげる訳ないでしょう? そこで、私たちがしているところを指を咥えて……まぁ指すら動かせない状態ですが、見て居なさい。……という訳で、お兄さーん! あの愚かな女に見せつけてあげましょー!」

「いや、しないって。とりあえず、泊まる為の準備をしよう。リディアは、夕食の準備を頼む。俺は、壁を作って周囲から魔物が入り難くする。ブリジットは……」


 それぞれに指示を出した後、石の壁を生み出して、村の守りを強固にしておいた。

 兎耳族たちの村は簡易な柵で囲われていただけだから、夜中に魔物が襲って来る可能性があるし、流石に寝ている最中に襲われるのは困るからな。

 家も五軒しかないので、俺一人でサクッと終わらせたのだが……普段暮らして居る場所と違って、ここには周囲に高い木がある。

 上も塞げば安心出来るが、陽の光が届かなくなってしまうんだよな。

 夜は元から真っ暗なので構わないが、翌朝に困ってしまうし……どうしたものだろうか。


「む? アレックスよ。心配なら我が結界を張るのじゃ。常時と言われると辛いが、夜の間だけであれば大丈夫なのじゃ」

「あ、ミオの結界があったか。是非、頼むよ」

「まってー! ユーリも、おてつだいするのー!」


 ミオが結界を張ろうとした所で、ユーリがふよふと壁の上に飛んで行く。

 何をするのかと思ったら……あ、壁の外側に聖水を撒いてくれているんだな。

 ……で、出来ればダイレクトにではなく、何かの容器に移してから撒いて欲しかったが。


「おまたせー! パパー、ユーリがせーすいをつかったから、きっとだいじょーぶだよー!」

「そ、そうだな」

「う、うむ。だが、念の為に結界も張っておくのじゃ」


 ミオに結界を張ってもらい、魔物の心配が無くなったところで、リディアに呼ばれて食事に。

 中央にある一番大きな家で夕食を済ませ、熊耳族の木工職人というジョブを授かっている少女たちが、隣の家に作ってくれた大きな風呂へ。

 話を聞くと、木工職人というジョブは大工ではない為、家を改築して広くするには時間がかかり過ぎるという事で、隣の家を丸ごと脱衣所と風呂にしたそうだ。

 ちなみに、今回来ている熊耳族の中に、木こりというジョブを持つ者が居るので、村の周囲の木を切り倒し、それを使って作ったとか。

 ……そういえばシェイリーから、植物系に対する攻撃力が向上するスキルを授かっていると言う話を聞いていたが、おそらくこの少女から貰っていたのだろう。


「おぉ、凄いな。家を丸ごと風呂に……こんなに広くなるのか」

「全員で二十二人も居りますので、広めにしておきました」

「大変だっただろう。ありがとう」

「いえ、そのお言葉だけで十分……あ、いえ、出来ればご褒美をいただければと」


 お風呂を作ってくれた熊耳族の少女たちを労っていると……唐突に服を脱ぎだしたっ!?


「ふふ……ご主人様。これだけ広ければ、思う存分出来ますね。という訳で、早速お願いいたします!」

「結構歩いたし、私は先に汗を流してからお願い致します」

「ウチはあれくらいで汗はかいてないから、問題無いんよ。さぁ、アレックス! 子供を作るんよ!」


 家よりもかなり広い風呂へ全員一斉に入る事になり、当然のように分身を使わされて、いろんな意味で凄い事になる訳で。

 それにしても、ブリジットや熊耳族の少女たちが混ざっているおかげで、割合的に幼女の方が多いように思えるのは、どうしたものだろうか。

 いやまぁ、全員十歳前後に見える熊耳族の少女たちの所へ、鬼畜モードの分身を投入してしまった事があるので、今更だが。

 それから、全員を満足させたので、


「じゃあ、そろそろ寝ようか」


 風呂と同様に、一軒を丸ごと寝室にしたという家へ。

 五軒あるうちの左端から順に、寝室、風呂、キッチン兼リビング、倉庫という並びになっているので、また隣の家に移動だな。


「あれ? そういえば、五軒あるはずだが、一番右端の家は何だ?」

「お兄さん。右端の家は、あの女性が吊るされたままだから……」

「……あっ! 忘れてたっ!」


 全員で夕食と風呂を済ませているので、かなりの時間が経過しているのだが……すまん。本気で忘れてしまっていたよ。

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