第652話 暗闇の中でアレ

「……アレックス。アレが欲しい」

「お兄さん。熱いよー」


 レヴィアとプルムが辛そうにしている。

 グレイスが出してくれた船に入り、ザシャが船の中に闇を広げてくれたおかげで、焼けるような直射日光は避けられた。

 だけど、そもそも気温が高く、二人が辛そうだ。


「仕方がない。レヴィアとプルムに……」

「待つのじゃ。それなら、我も欲しいのじゃ」

「ご主人様。そ、そろそろ放置プレイが長すぎると思うのです。わ、私にも早く……」


 弱っているレヴィアとプルムにアレを……という事で、分身したところで、ミオに襲われ、モニカが泣きそうになり、結局ユーリを除く全員とする事に。


「……アレックス。もっと欲しい。分身増やして」

「仕方がない。分かった」

「お兄さん。プルムも、プルムもー!」


 ここに居る女性と同じ数となるように分身を出していたが、レヴィアの言葉で分身を何体か追加する。

 ただ、分身も暗闇の中で何も見えておらず、手探り状態なので、間違ってもユーリに何かしないようにしてもらわなければ困るが。

 とはいえ、ユーリは部屋の隅に居て、その前に俺が座っているので、大丈夫とは思うが。


「んひぃっ! アレックス様っ!? そっちは違……す、凄いですのっ!」


 今の声は……シアーシャか?

 やはり闇の中で分身たちも変な事になっているようなので、しっかりユーリを守らないと。


「おほぉっ! さ、二本同時は中々なのじゃ」

「すみません。お邪魔しま……って、何これ? 黒い……きゃあっ!」

「アレックス様。わ、私も二本同時をして欲しいですー!」


 ん? ミオとグレイスの声に混じって、知らない女性の声が聞こえなかったか!?


「ご主人様っ! 今、もしかして皆で始めているんですかっ!? 私も……私も混ぜてくださいっ!」

「ま、待って! 私は初めてなのに……っ!」

「お兄さん。プルムは二本とは言わず、五本でも十本でも大丈夫だよー!」


 俺の結界スキルで動けないモニカが叫び、プルムがミオやグレイスと同じ事をしたがっている。

 とりあえず、モニカを放置しておくと、後で面倒な事になりそうなので結界スキルを解除しておいた。

 あとプルムは、無茶を言わないように。


「あ、動ける……ご主人様っ! いただきまーっすっ! ……あれ? 柔らかい? ご主人様じゃない……? 私とした事が、暗闇の中とはいえ、ご主人様を間違えてしまうなんて。ただ……かなり大きいな」

「ら、らめなのぉ……」

「ふむ。このサイズ……私と同じくらいか。となると、このメンバーだと、ザシャ殿か? だが、ザシャ殿にしては背が低いような……」

「うぅ。もう……ダメぇぇぇ~~~~っ!」


 って、モニカが独り言を呟いていたかと思うと、突然誰かが大きな声で叫びだした。


「今の声は誰だ? ……ザシャ。一時的に闇を消してくれ。レヴィアもプルムも、少しなら大丈夫だよな?」

「……レヴィアたんは、アレックスの魔力で元気になった。暫くは大丈夫」

「プルムも、大丈夫だよー! やっぱりお兄さんの魔力は濃厚で美味しいよねー!」


 レヴィアとプルムの声を聞いてザシャが船の中を包み込む闇を消すと、俺の分身たちがそれぞれの相手をしているのだが、船の扉の傍でモニカが見知らぬ女性の胸を揉んでいる。


「……って、モニカ! その女性は誰なんだ!? というか、分身解除っ!」


 モニカに胸を揉まれている女性が、後ろから俺の分身に立ったまま……うん。大慌てで分身を消したのだが、これは責任を取らないといけないと思う。

 背中でユーリを守っていたが、分身を全て解除したので、女性に慌てて駆け寄る。


「大丈夫か!?」

「貴方は……もしかして、さっきの凄いのが、貴方? でも、胸を優しく……って、女の人っ!?」


 おそらく俺の分身によって半裸にされてしまった思われる女性に、横から声を掛けると、正面から未だに胸を触っているモニカに顔を向け……驚きの声をあげる。

 というか、モニカは何をしているんだよ。


「あー、えっと、暗闇の中で誰の胸か当ててみようかなと思いまして……えっと、知らない人なので、当たる訳がありませんね」

「いや、とりあえずその手を止めようか」

「わかりました……って、ご主人様!? 分身が消えているんですがっ! 私、まだ何もしてもらっていませんよっ!」


 モニカが何か言っているが、当然この状況で変な事をするはずもなく……ひとまず、女性に謝罪する事にした。

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