第651話 西の大陸

「アレックス。見えてきたのじゃ」


 ミオに言われて目を向けると、前方に陸地が見えてきた。

 人魚族の村を出て、数日間レヴィアに船を引いてもらい……昼頃にようやく西の大陸へ上陸となる。

 この数日間は、船の中が暇だというミオとシアーシャに押し切られ、全員幼い姿でおままごとをする事になってしまい、子供役のユーリが寝た設定の後を……いや、母と姉と妹から父が襲われるおままごとって、おかしいんだが。

 ちなみに、母役がシアーシャで、姉がミオ。妹がプルム……うん、おかしい。

 それはさておき、浅瀬まで来たのでレヴィアが元の姿に戻り、浜辺まで歩いて行く事に。


「……北の大陸みたいじゃなくて、普通に上がれて良かった」

「そうだな。北の大陸は上陸が大変だったからな」

「アレックス様。船は空間収納に格納しておきました」


 レヴィアとグレイスに礼を言って、浜辺を歩いて行く。

 浅瀬を歩いてきた事もあり、足に大量の砂が付いているので、砂地を出たら泡魔法で足を洗おう。

 そう思っているのだが、それなりに歩いたはずなのに、まだ砂地にいる。


「なかなか砂地が終わらないな」

「そうですね。……ご主人様! もしかして、砂漠に上陸してしまったのでは!?」

「なるほど。これだけの砂地だからな。モニカの言う通りかもしれないな。ただ、西の大陸の全てが砂漠という訳では無いと思いたいが」


 砂漠がこの辺りだけなのだとしたら海へ戻った方が良いのだが、もしも西の大陸の大半が砂漠だとしたら進んだ方が良い。

 一先ずユーリにパラディンの防御魔法を使用し、空から周囲を見てもらう。


「パパー。このあたりは、おすなばっかりー! でも、すこしさきに、むらがあるよー」

「そうか。ありがとう。皆、すまないが村まで行ってみよう」


 ユーリが教えてくれた村を目指し、皆で砂地を歩いていると、突然プルムの足が止まる。


「……お兄さん。プルム、もう無理……」

「プルムっ!? 大丈夫かっ!?」

「砂が熱いの……」


 しまった。

 俺たちは靴を履いているが、プルムは靴に見えているが、あれも自身の身体の一部だ。

 ラヴィニアに水魔法を……って、ラヴィニアは離脱しているから、レヴィアか。


「レヴィア……だ、大丈夫か!?」

「……レヴィアたんも、ダメ。……でも、アレックスがアレをくれたら、きっと平気」


 こんな時に何を……と思ったが、どうやらレヴィアは本気で言っているようだ。

 治癒魔法を掛けたが効力はないし、本当にアレを出さなければならないのか!?


「そうだ! ザシャ! 暗闇を!」

「もう出してるよ。でないと、この日差しにシアーシャが耐えられないよ」

「その闇を少し広げてくれ。プルムとレヴィアを休ませる」


 結局、グレイスに船を出してもらい、ユーリからメイリン経由で天后に船ごと転移してもらおうと思ったのだが、


「パパー。あのね、おふねがみずのうえにないと、ダメなんだってー」


 撤退も出来ない。

 なので、ザシャに暗闇を出してもらい、船の中で暫く休む事に。

 この砂漠がどれ程のものか分からないが、場合によっては海まで戻り、レヴィアやプルムに天后のところで待ってもらわないといけないかもしれない。

 暗闇の中で、ひとまず俺の考えを伝えると、


「……アレックス。違う。解決策はわかってる」

「プルムも、お兄さんのを食べたら元気になると思う」

「ふふふ。結界は任せるのじゃ」


 レヴィア、プルム、ミオがすぐさま反応する。

 それだけではなく、暗闇の中で誰かが俺に手を伸ばしてきたっ!

 くっ! 暗闇に乗じて実力行使か!?

 本気を出せば、もちろん逃げられるが、仲間を相手にそんな事は出来ない。だが、すぐ傍にユーリも居る。

 どうすれば良いんだっ!


「……って、この触り方はモニカか」

「さ、流石はご主人様。まさかご奉仕の方法でバレるとは。だが、やるべき事に変わりは……」

「≪閉鎖≫」

「えぇっ!? ご主人様っ!? 酷くないですかっ!? ご主人様ぁぁぁっ! ……はっ! もしかして、これは新手の目隠し拘束プレイ!? ご主人様。モニカは幸せです。この私めに初めてのプレイを試していただけるなんてっ! さぁ、早くっ! どうぞっ!」


 ……うん。モニカのおかげで、変な事をすると俺が結界で動けなくするとわかり、皆が様子見してくれるようになった。


「ご、ご主人様。もしかして、放置プレイまでされていらっしゃるのですかっ!?」


 様子見してくれるようになったのは良いのだが、とりあえずモニカは静かにしてくれないだろうか。

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