第583話 第一魔族領の事情
二十代半ばから、三十代といった女性四人に囲まれてしまった。
力づくで脱出する事はもちろん可能だが、普通の村人……それも女性相手にする事ではないので諦める。
「あの、貴女たちの娘さんなんですよね?」
「えぇ。正確には、私とこちらの女性の娘よ。三人のうち、二人は姉妹だから」
そう言って、二人の女性が娘を宜しくーと、声を掛けてくるが、この二人も何処か似ている気がする。
……まぁ村人が少な過ぎて、血が近いというか、ここに居る四人ともが従姉妹とかだったりするのかもしれない。
「じゃあ、私たちが貴方を綺麗にするわねー」
「私たちは、妹さんの相手をしておくから心配しないでね」
そう言って、先程の二人が俺の両腕に抱きつき、他の二人がユーリの元へ。
「ユーリを見てくれるのは助かるが、俺は身体くらい自分で洗えるんだが」
「うふふ。貴方は私たちの可愛い孫の父親になるんだから、ちょっと味見……じゃなくて、下見というか、どんな男性か知りたいじゃない?」
「あの、二人とも既婚者で、旦那さんが居るんだよな? しかも、一夫一妻制の人間だよな?」
天使族みたいに一夫多妻制の社会ならまだ良いのだが、どう見ても普通の人間にだし、いろいろとマズいと思うのだが。
「大丈夫よー。私たちは人間だけど、こういう環境だから、大人になったらすぐ子作りって文化だし、妊娠していなければスワッピ……げふんげふん。まぁそういう事には大らかな村だから」
「むしろ、私たちだってまだ現役だしねー。妹さんを見ている二人は、今お腹に子供が居るからダメだけど、貴方のが余りにも凄そうだったら、娘たちの前に私たちとしたって良いと思うもの」
「そうそう。父娘は流石にこの村でも禁忌だけど、そうでなければ、だいたいは大丈夫よー」
えぇ……いや、最低限の事は守っているようだが、どうなのだろうか。
とはいえ、三十人足らずの村で、外部から人が来ないから、仕方無いとも言えるが。
「それより、先にお風呂よ。私たちと違って、娘たちは初めてだから……あー、十七歳のオリヴィアだけは、何度か獣人族に種付けを頼んでダメだったっていうのはあるけど、後の二人は本当に初めてよ」
「そういえば、貴方は初めてなのかしら? それとも経験豊富? 未だなら、お姉さんたちが手取り足取り教えてあげちゃうわよ?」
そう言いながら、二人の女性が妖艶な笑みを浮かべてくる。
「……いや、大丈夫だ。というか、俺も結婚しているからな?」
「あら、そうなの? でも、この村を助けると思って……ね。お願い」
「そうそう。じゃあ、経験豊富な貴方のを早速……え? えぇぇぇっ!? 腕が……腕が生えてるっ!? ……あ、違った。けど、こんなの……す、凄すぎない?」
二人の女性が、風呂で俺の身体を洗……って、洗い方が変じゃないか!?
どこで俺の腕や足を擦って……って、どう考えても、これは洗うって行為ではないだろ。
この村の文化だし、助けなければ村が滅んでしまうというのも分かるので、されるがままで居るのだが……いや、それにしてもやり過ぎではないか?
そんな状態で暫くすると、突然風呂場の扉が開かれる。
「お母さん? アレックスさんっていう人は未だなの? 私は慣れているから良いけど、クロエとシャーロットが待って……って、何してるの?」
「あ、オリヴィア。えーっと、あ、味見?」
「あははは。ごめんね、オリヴィアちゃん。アレックスさん……凄いから! 絶対に、オリヴィアちゃんも妊娠すると思うの。あー、でもシャーロットちゃんは小柄だから、ちょっと大変かもね」
オリヴィアと呼ばれた女性が、呆れた様子で俺たちを見てくる。
この状況を見ても、やれやれ……と言った感じで済むのは、このオリヴィアが凄いのか、それともそういう村なのか。
それから、二人の女性が満足したようで、ようやく解放されると、そのままオリヴィアに腕を組まれる。
「話は聞いていると思うけど、私はもう十七歳だし、村の為にも早く子供を生まなきゃいけないから……よろしくね」
「いや、村の為に……って、それで良いのか?」
「良いも悪いもないわよ。それしか、この村で生きていく術はないんだもの」
仕方ないとはいえ、何だかなぁと思いながら、オリヴィアに連れられて、別の部屋へ。
そこには、二人の少女が座っていた。
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