第418話 六合からもらったスキル

「という訳で、この教会に私の助けを求めて来る者へ、公平に力を与えていただけです。ところが、そんな教会でアレックスさんがあんな事を始めるから、我慢出来なくなってしまって……」

「それについては、本当にすまないが……こほん。六合はミオの知り合いで、シェイリーや騰蛇の仲間って事で良いんだな?」

「そういう事なのじゃ。まぁ厳密に言うと、シェイリー――青龍は神獣なのじゃが、騰蛇や六合は上位式神なので少し違うが……まぁアレックスは気にしなくて良いのじゃ」


 先ずは六合が何者なのかを聞き、ミオもその話に同意した。


「んー、というかミオはともかく、アレックスは騰蛇の事まで知っているのですね。大丈夫でしたか? かなり狂暴だったと思うのですが」

「はっはっは。心配無用なのじゃ。六合も身を持って知ったと思うが、騰蛇もアレックスのアレに屈したのじゃ。今では、アレックスに会いたがって、会えば即身体を差し出す程なのじゃ」

「あの騰蛇が……でも、わかります。アレックスのは凄かったですから。まさか私が気絶させられるなんて、想像もしていませんでした」

「アレックスが本気を出したら仕方ないのじゃ。我も気絶させられたし、あっちに居る竜人族たちですら気を失っておるのじゃ。そういう意味では、この中ではあの娘が最強なのじゃ」


 ミオの視線の先には……あー、ソフィか。

 気絶しないという意味ではソフィが一番凄いかもしれないな。

 だが、体力ではヴァレーリエが一番凄いと思うし、スピードではカスミ。魔力では……って、そんな事を考えている場合ではないか。


「すまないが、この倒れている女性たちの魅了を解除してもらう事は出来ないだろうか」

「残念ながら、私の力はそういった類ではないのです。どちらかというと、逆で和……こほん。いえ、何でもありませんよ?」


 え? 六合は今、何を言いかけたんだ?

 物凄く気になるのだが。


「では、六合が公平に与えているという力は、何なんだ?」

「ジョブの変更ですね。成人した際に神から授けられるジョブが、どうしても自分に合わないという場合、その者の深層心理からなりたいジョブを読み取り、変更してあげています。ですので、本人も気付いていない願望が反映される可能性もありますが」

「あー、ジョブチェンジと呼ばれているあれか。ジョブを変更出来るなんて凄いよな……ただ、六合はここへ来た者には、誰にでも力を与えるのか? 例え悪人であっても」

「はい。私に助けを求める者であれば、公平に助けます。ただ公平に、一人一回までですけど」


 まぁ六合はこういう奴か。

 ずっと公平という事に拘っていたもんな。

 あと、俺たちを襲って来たウェイという奴も、ここへ来てジョブチェンジを行い、魔法が使えるようになったんだな。


「そういえばクララの事を、うちの聖女と呼んでいたが、あれはどういう意味なんだ?」

「彼女はジョブチェンジを行い、聖女のジョブを得たところで、聖女になれた恩を返したいと、ここで働かせて欲しいと本人から志願してきたと聞いております」

「待ってください。聖女って、そこで倒れている女性ですよね? その方は、聖女のジョブが与えられた直後に、ここの教会で強制的に働かされる事になったと本人から聞いているんですけど」


 六合の話を聞いていたら、どこから話を聞いていたのかは分からないが、目を覚ましたアコライトの女性――イライザが割り込んで来た。


「イライザさん……だったかな。先ずは、本当に申し訳ない。実は君が気を失っている間に、その……」

「あ、大丈夫ですよ。む、むしろ初めてを貰っていただけて嬉しいと言いますか。私、あの……つ、妻にしてくださいっ!」

「……待って! 抜け駆けは良くない。私も、アレックスさんの妻にしてもらう。エリーさんやフィーネさんと一緒。だから気を失っていない時に、もう一度ちゃんとして欲しい」


 イライザと……グレイスだったか。どうやら魅了状態らしく、正しい判断が出来ているとは思えない。

 もちろん、魅了状態でない上での発言であれば、責任を取るつもりだが。


「アレックスよ。この者たちもこう言っておるのじゃ。早速続きをするのじゃ」

「いや、彼女たちが魅了状態だからだろ。とにかくプリーストを探さないと……そういえば、さっき豪華な服を着た男が居たな。アイツを起こせば、治してもらえるのだろうか」


 ここぞとばかりにミオが続きを……と言ってくるが、また大変な事になるからやめてくれ。

 その……関係の無い者が居ない場所であれば問題ないのだが。

 しかし、カスミたちが倒れた女性たちをベンチに寝かせているが、あの男だけは誰も触れたくないと言って、未だに床の上に倒れているな。

 あとで俺が起こすとして……とりあえず謝らなければ。


「あの、アレックス。一つ言わせてもらうけど、このイライザとグレイスは、魅了状態ではないわよ?」

「え? ど、どういう事だ?」

「たぶんだけど、アレックスって他人のスキルを使えたりする? 一つ、私の力を持っているのよ」

「六合も、シェイリーのように他人のスキルがわかるのか。どんな力を持っているんだ?」

「あ、全ては分からないわよ? 青龍ほどスキルに詳しい訳ではないから、私が知っているスキルの事しか分からないわ」


 なるほど。俺の分身スキルを勝手に発動させたように、六合も人のスキルを見る事が出来るものの、詳しく知りたければシェイリーに聞いた方が良いと言った感じか。


「それでアレックスは、さっき私が言いかけた和合スキルを持っているわね」

「和合スキル? どういう効果なんだ?」

「その……男女が交わる事で、仲良く――親密になるというスキルね」


 うーん。そもそも親密な仲でなければ、そういう事をしないから意味が無いスキルなのでは?

 ……って、ちょっと待った!

 これ、魅了スキルと合わさると、最悪じゃないのか!?

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