第419話 激怒する司祭

 俺がテレーゼから貰った魅了スキルは、効果が弱い物の、周囲に居る女性を魅了状態にしてしまう。

 また、レイやレナが作る俺のアレを材料としたポーションは、効果が凄い物の、飲むと強い魅了状態となる。

 そして、俺とそういう事をすると、魅了とは関係無しに親密になってしまい、後でプリーストの治癒魔法などで魅了状態を解除しても、その親密さは消えない……という事か。

 いや、それをしてしまった時点で責任は取るつもりだが……そもそも俺は、女性を魅了状態にしようとは思っていないからな?


「六合……俺の分身スキルを発動させたが、逆に俺のスキルを発動しないようには出来ないのか? この魅了スキルとかを」

「残念ながら無理ですね。私はジョブを授ける方だから。スキルを封じるのとは反対の力よ」

「そう言われると、そうか。例えば、治癒魔法が使える者が攻撃魔法も使える……とは限らないもんな」


 とりあえず、あの司祭という男を起こして、ここで気絶している女性たちの魅了を解除出来るか聞いてみるか。

 まぁ六合の話だと、和合スキルによって魅了を治したところで既に手遅れな気もするが。


「≪リフレッシュ≫……おい、大丈夫か」

「ん……お、お前っ! よくもワシの教会で! ここを何処だと思っておるのだ! 六合教の本部だぞっ!?」


 神聖魔法で司祭という男を起こすと、俺の顔を見るなり怒り出した。

 とはいえ、怒られても仕方が無いので、暫くは怒りが収まるまで話を聞こうと思っていると、衣服を整え、ドレスのような姿の六合が前に出る。


「まぁ、そう怒らないでください。それについては、私も良い経験が出来ましたし」

「はぁ? 誰だ、お前はっ! この兎耳のガキもお前の女か!? こんな幼いガキにまで手を出すなんてな! そっちの狐耳のガキもそうだし、そっちの青髪のガキも……男か女かも分からんようなガキばっかりではないかっ! この腐れ外道の変態がっ!」


 凄い言われようだが、俺の事はまぁいい。

 だが、六合やミオ、レヴィアたちに対して暴言を吐くのは許せん!

 一発殴ろうかと思ったのだが、それより先にレヴィアの跳び蹴りが……って、ダメだっ! 流石にレヴィアが攻撃したら、普通の人間は死んでしまう!


「レヴィア、ダメだっ!」

「――!? ……命拾いした。アレックスの言葉が無かったら、殺してた」

「……ひぃっ!」


 俺の言葉でレヴィアが身体を捻り、空中で軌道を変え……教会の壁に大穴が開いたけど、司祭は無事だったようだ。


「お主……どうやら、死にたいようじゃな。だが、アレックスが殺すなというのじゃ。さて、どうしてくれようか。とりあえず、動けぬようにさせてもらうのじゃ……≪閉鎖≫」

「な……っ!? 何だ、これはっ!? 指一本動かせない……」

「お主の身体に密着するように結界を張ってやったのじゃ。さて……殺さなければ良いのじゃな? 両腕くらいは、無くしても良さそうなのじゃ」


 いや、良くないから。

 ちょっとミオは冗談がキツい……冗談だよな?

 俺も怒ってはいるし、殴るつもりではあるが、やり過ぎは良く無いぞ?


「司祭さん。私が良いと言っているのですから、良いですよね?」

「だ、だから、お前は誰なんだっ! どこの子供だっ! ワシはこの六合教の司祭だ! 六合教のトップであるワシにこのような事をして……お前たち、六合様の怒りで死ぬ事になるぞっ!」

「私の怒り? 私は公平だけでなく、平和や調和を司る者でもあります。その私が人を殺す? 何を言っているのかしら?」

「お前の話などしていないっ! ワシが言っているのは、六合様の話だっ!」

「ですから、私がその六合だと言っているのです。貴方……この教会に居るくせに、私の姿が見えていなかったのですか? いつも礼拝堂に居たのに」

「何を言っておるのだ!? おい、この頭のおかしいガキを……ごふぁっ!」


 まったく。この男は反省しないというか……六合たちに失礼だろう。


「アレックス。私の事で怒ってくれるのは嬉しいのですが……その者が死にかけていますよ?」

「え? かなり軽く殴ったのに……あ! ミオの結界でこの男の身体が動かなくて、俺の拳の衝撃が一切逃げなかったからか!?」

「お兄さん。カスミちゃんとしてはー、そもそもお兄さんの力が強すぎるだけだと思うなー」


 六合に言われて、慌てて治癒魔法を使い、事なきを得た。

 しかし、カスミに言われるまでもなく、かなり手加減しているんだけどな。

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