第417話 公平を司る六合

「ミオ。もう良いだろ? 六合に俺の分身スキルを解除するように言ってくれ」

「ん? どういう事なのじゃ? アレックスが分身を出して、六合を手籠めにしたと思っておったのじゃ」

「そんな事する訳ないだろ。むしろ俺が襲われた側だよっ!」


 ミオだけでなく、レヴィアやヴァレーリエにソフィまでやって来たから、もう分身や複製が止まる事なく出しまくり……それにリンクして俺も出てしまうので、クララが大変な事になってしまっている。

 既にナズナやモニカたちが気を失っているというのに、この状況でクララが気を失っていないのは凄いと思うが……逆に大丈夫だろうか。


「ちょっと待ってね。えーっと、気絶してしまった女性を除いて、今意識のある人の中では……うちの聖女が一番多くしてもらっていて、そちらのエルフさんが一番少ないわね。公平にするため、分身たちをエルフさんに集結させなきゃ」

「ま、待って! 私は体力が無いから程々で……回数よりも、アレックスさんに愛を――気持ちを注いでもらう方が嬉しいんですっ!」

「はっはっは、リディアよ。残念ながら、この六合はそういうところで融通が利かないのじゃ。諦めて、分身たちの相手をするのじゃ。一度に複数というのもなかなか良いのじゃ」


 六合がリディアに無茶ぶりをし、ミオが当たり前だと言わんばかりに……って、リディアに無理をさせるなよっ!?

 いや、しているのは俺の分身なんだけどさ。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! 私は乳女さんと違って、そっちはした事が無くて……はぅぅぅっ!」

「あら。分身二人で同時にしたら気を失ってしまったわね。余程良かったのね。じゃあ、後は皆がうちの聖女の回数に追いつけばオッケーね」

「リディアっ! クララ、ちょっとだけ離れてくれ……いや、本当に」


 リディアを介抱したいのだが、クララが俺を離してくれない。

 というか、クララが常に俺へ抱きついている以上、絶対に皆の回数がクララに追いつく事はなくて、公平にならないから、ずっと分身を解除してもらえない……それは困る!

 となると俺が今すべき事は、クララを満足させて気絶させる事だっ!

 これまではクララが俺に抱きつき、離れようとせずに動いていたが、今度は俺から攻めるっ!


「お、お兄さん……な、何これ!? 今までと全然違~~~~っ!」


 この状況を終わらせたい一心で、クララが俺から離れさせる事に成功したので、礼拝堂のベンチに寝かせると、次は床に倒れているリディアを抱きかかえ、同じくベンチへ。


「よし。さぁ六合! これでクララは気を失ったから、カウント対象外だろう? 全員公平に回数が同じはずだ。さぁ俺の分身を解除してくれ!」

「……るい」

「え? 何と言ったんだ?」

「うちの聖女だけズルいっ! 一番回数が多いし、分身じゃなくてアレックス本体だし、何より今のは何!? 分身よりも遥かに激しかったじゃない! 公平に、今のを起きている全員にしなさいっ! 先ずは私からっ!」

「えっ!? いや、今のは腰への負担が大きくて……」

「問答無用っ! 私は公平を司る六合よ! 私の前では全てが公平に……んっ、さぁ早く! ……って、待って! 分身が後ろから……待って! ついさっきが初めてなのに、いきなり二本は……おほぉぉぉっ!」


 結局、分身の鬼畜モードで六合が気を失ったので、試しに分身を解除してみると……お、解除出来た。


「ミオ。後で六合の事を教えて欲しい。カスミ、ヴァレーリエ、ソフィ。床で倒れている女性をベンチへ寝かせてくれ。あとレヴィアは、俺と一緒に水魔法で女性たちと教会を綺麗にして欲しいんだ」


 カスミたちからは分身を解除するなと言われたが、とりあえず服を着て、レヴィアと共に女性たちの身体を綺麗にしていく。

 女性たちはクララやグレイスに、アコライト――誰かがイライザと呼んでいた気もするが、合計で二十人くらいか。

 そこに六合も加え……って、一人中年男性が倒れているな。

 六合が現れた時に放った魔力に巻き添えにされたのだろう。確か、司祭とか呼ばれていた気がする。

 思いっきり関係者っぽいし、六合から話を聞いた後に、こいつからも話を聞いてみるか。


「……って、六合は目覚めるのか? ……≪リフレッシュ≫」

「ん……あ、あれ? 私は一体……」

「気にするな。それより、聞きたい事があるんだ」


 治癒魔法を使うと六合が目覚めたので、早速話を聞く事にした。

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