第682話 地下寺院?
神聖魔法で盾に灯りを点け、穴の中へ。
獣人族の村や街にあった地下への入り口は、所々から光が射し込むようになっていたのと、光る苔が生えて居たり、魔法で照明が灯されていた。
ところが、この穴の中は完全な闇で、入り口から差し込む光しかない。
そんな場所で、横に二人並ぶのが精一杯という階段を暫く降りて行く。
「……何だかちょっと懐かしいな」
「そうですね。魔族領を思い出します」
俺の呟きにモニカが応える。
俺が第四魔族領へ来たばかりの頃は、ニナが穴を掘り、地下洞窟に繋がって、暗闇の中をエリーやモニカたちと一緒に探索していたからな。
そこでシェイリーを助け、ソフィと出会い……うん。本当にいろいろあった。
あれが三か月くらい前の事になるのだが、随分と時間が経っているように感じてしまうのは、新たな仲間が増えたり、知らない土地へ行ったりと、様々な事があったからだろう。
「にーに。魔族領って?」
「あ……そういえば、ディアナには俺たちの目的を話していなかったか」
西大陸へ来てから、事ある毎に獣人族の村人などに白虎や魔族領の話を聞いていたのだが、ディアナに至っては黒髪という事で、そっちの話ばかりしていて、第二魔族領を探している事を話していなかったな。
「……という訳で、俺たちは白虎を救出すべく、その居場所を探して居るんだ。おそらく、魔族領に居ると思うのだが、その場所の情報も無くてな」
「うーん。魔族領かどうかはわからないけど、ウチは虎耳族のトコに居たよー」
「えっ!? そうなのか!?」
「うん。だって、ウチを奴隷にしたのは虎耳族の人たちだもん」
え!? ディアナを奴隷にしていたのが虎耳族だって!?
虎耳族っていうくらいだから、何かしら白虎に関係がある種族なんだよな?
それなのに、他の種族の者を奴隷にしている……?
……いや、種族は関係ないか。
今まで、人間が他人や他の種族の者を奴隷にしていた話だって、散々聞いてきたからな。
リディアもユーディットも、人間の手によって奴隷にされていた訳だし。
「ディアナ。その虎耳族っていうのは、どこに居たんだ?」
「流石に具体的な場所は分からないけど、もっと沢山木が生えている場所だったよ」
「なるほど。ひとまず、もっと西大陸の内側へ行かなければならないという事だな」
ディアナと話しながら進んで行くと、階段が終わり、平らな道になる。
とはいえ、道幅が広くなった訳ではなく、真っすぐな通路となっていた。
前を灯りで照らしながら進んで行くと、突然広い場所へと出る。
まさに第四魔族領そっくりだと思っていたのだが、少し違って、地下にレンガで作られた建物があった。
「これは……ファビオラが言っていた地下寺院か?」
「うーん。私も話に聞いただけなので、実物を見た事がなく、何とも言えないです」
「そうか。ひとまず、中へ入ってみるか」
そう言うと、俺の隣を歩いているグレイスが、俺の腕に強くしがみ付く。
流石にここで待っていろとは言えないのだが、白虎に関する情報があるかもしれないので、少し調べてみたい気持ちが強い。
「グレイス。無理について来なくても大丈夫だ。一旦地上へ戻り、誰か……そうだな。ザシャと一緒に待つか?」
「い、いえ。私なら大丈夫です。アレックス様がお傍に居てくれれば」
「そ、そうか……だが、無理しないようにな」
改めて、先頭を俺。その横にグレイスが居て、俺の背中にユーリが抱きつく。
二列目は、ディアナとミオで、その後ろにはシアーシャとファビオラ。
最後尾をモニカとザシャが歩く。
そのまま建物の前へ行くと……中に何かの気配がするな。
だが、人ではない。
おそらく……
「パパー! このなかだけどー……」
「いや、ユーリ。大丈夫だ。俺もわかっている」
「はーい!」
当然ユーリも感じたようだが、この建物の中に居る気配は、ゴースト系の魔物だ。
グレイスは大丈夫だろうか。
チラっとグレイスの顔を見てみると、俺の視線に気付いたグレイスが、引きつった笑みを浮かべながら、大丈夫だと言う。
……とりあえず、少しだけ入ってみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます