第681話 土の道の移動
「≪土壁生成≫」
砂漠の上でスキルを使用し、三人ほどが並んで歩ける程度の長い道を作る。
暫く歩き、道が途切れたら再び道を作り出し……皆の移動速度が格段に上がった。
俺とディアナは、砂の上でも同じ速度だが、他のメンバーの移動が速くなったので、全体的に移動が早くなった結果だと思う。
……とはいえ、日差しがキツいのは変わらないので、シアーシャがグッタリしているが。
「シアーシャ、大丈夫か?」
「アレックス様が抱きかかえてくださっているので、何とか」
「うーん。私もアレックス様に抱きかかえていただきたいです……」
グレイスに口を尖らせられたり、時折ディアナに競争しようと言われてシアーシャが目を回したり……と、いろいろあったものの、そんな感じで数日移動し続けた結果、ようやく砂漠を抜ける事が出来た。
皆の移動を苦しめた砂地がなくなり、足下が固い地面に変わっている。ただ……
「砂漠ではなくなったが……相変わらず木や水がないな」
荒れ地というか、荒野と呼ぶのが正しいのだろうか。
第四魔族領と違い、一切植物が無い……という訳ではなく、所々に草が生えていて、それを牛? のような動物が食べているのが見える。
足下が砂ではないので、土壁生成スキルを使わずとも歩けるが……相変わらず周囲に何も無いな。
ちなみに、ここまで道を大量に作ったので、土壁生成スキルはレベル四になっていたりする。
レベル五になったら、どういった変化があるか気になるので、このまま使い続けても良いのだが……何かあるな。
「これは……何だ? 人工的に掘られた洞窟? 地下に行く場所か?」
荒野の中に少し窪んだ場所があり、レンガで四角く囲われた穴がある。
当然自然に出来た穴ではない。
だが、荒野の真ん中で、周囲に建物などが一切ないのが気になるな。
「うーん。地上に街も村も無いので、考えられるのは二つですね。一つは、神様を祀る地下寺院へと続く入口ですね」
「この辺りは、だいたい獣人族が住んで居るよな? 獣人族の神様といえば、白虎だという認識だが」
「はい、その通りです。砂漠よりは幾分かマシですが、それでも厳しい場所ではあるので、涼しい地下に寺院を作った……という可能性はあります」
「なるほど。もう一つは?」
「墓地ですね。いわゆる、カタコンベと呼ばれるものです」
カタコンベ――地下墓地か。
墓を暴く趣味はないが、白虎を祭る寺院であれば、ちょっと調べてみたい。
現状、白虎の話はよく聞くものの、西大陸での魔族領の情報が一切出て来ていないので、何かの手掛かりになるかもしれないのであれば、行ってみる価値はあると思う。
「うぅ……お、お墓ですか」
「グレイスは、あまり得意では無さそうだな」
「そ、そうですね。正直言って、そういうのは苦手です」
まぁいわゆるゴーストだからな。
ゾンビやスケルトンといった魔物であれば物理攻撃も効くが、同じアンデッドでもゴーストやレイスといった死霊系の魔物には物理攻撃が効かない。
グレイスは元々双剣使いだったから、魔法が使えないと苦手だと思ってしまうだろうな。
「まぁ墓だったとしたら、すぐに引き返せば良いだろう。あと、パラディンの俺と天使族のユーリの傍に居れば、ゴースト程度なら近付く事すら出来ないと思うけどな」
「あ、アレックス様……素敵です! どうかお傍に……お傍に居させてください」
そう言って、グレイスが抱きついてきた。
まぁアンデッドには聖属性が良く効くので、万が一近寄ってくる奴が居ても、大丈夫だろう。
「……そうだ。グレイス殿、そんなにゴーストが苦手ならば、良い物があるぞ」
「モニカさん。何ですか? 藁にもすがりたい気持ちなので、是非教えてください」
「うむ。通常の魔物にも効くが、アンデッド系には更に有効な、聖なる水――聖水というのがあってだな。ここは私が一肌脱いで、出来立てほやほやの……」
「アレックス様! 私はアレックス様とユーリちゃんが居れば大丈夫です! さぁ参りましょう!」
グレイスが俺の腕を取り、モニカから逃げるように穴の中へと進もうとする。
地下ならシアーシャも大丈夫だろうし、ファビオラやディアナも平気そうなので……皆にパラディンの防御スキルを使用し、中へ入る事にした。
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