第879話 騎士隊長の証言
「うがぁぁぁっ! 誰か、火を……」
「鋼鉄の盾が、紙切れみたいに引き裂かれた!」
「早く、裏門へ! こんなの勝てっこねぇ!」
オティーリエが暴れだし、騎士たちを片っ端から吹き飛ばしていく。
とりあえず、殺さないようには頼む。
いくら腐っていても、命まで奪うのはやり過ぎだからな。
という訳で、マントに火がついて転げ回っている男に近付くと、そのマントを踏みつけ、破り捨てる。
「もう火は点いてないぞ」
「え? あぁ助かっ……この、よくもやりやがったな!」
焼け死なないようにしてやったのだが……まぁ怒るのも無理ないか。
とはいえ、見逃すつもりはないが。
「我が剣の錆びに……ごふっ」
「隊長が一撃で!? ……おい、今の内に逃げるぞ!」
まぁ王女を助けようとしない奴らが、上官を助けたりはしないよな。
「フョークラ。コイツを頼む。聞きたい事がある」
「はーい! じゃあ、素直になるお薬を出しておきますねー!」
「あぁ、任せた。俺はオティーリエが討ち漏らした奴らを殴ってくるよ」
騎士たちは数が多いので、ドラゴンの姿のオティーリエも全てを倒す事は出来ない。
なので、一目散に逃げていった奴らを順に殴っておいた。
それなりに殴って戻ってくると……女性騎士が十人くらい増えてる?
「この女性たちは?」
「うむ。囚われの王女を助けようともせぬクズじゃが、フョークラが実験に使いたいと言うので、集めてきたのじゃ」
「ふふっ、以前からいろいろと試したい事があったんですよー! 何故か男性には効かないので、女性の被験者が欲しかったんですよー!」
フョークラが物凄く嬉しそうにしているが、くれぐれも命は奪わないように頼む。
そんな俺の視線に気付いたのか、フョークラが慌てて口を開く。
「あ、あくまで薬の実験で、毒ではないですよー!」
「……その割には、女性たちが怯え過ぎていないか?」
「あー、素直になるお薬をさっきの男性に飲ませたからでしょうか? それとも、被験者一号に飲ませた薬が効き過ぎたからかな?」
フョークラの視線に釣られて顔を向けると、全裸の女性が倒れていて、
「――っ!? ~~~~っ! ~~~~~~っ!」
「あははは。面白ーい!」
「変なのー! どうしてビクンビクンって動くんだろー?」
マリーナと助けた女の子が指で女性に触れる度に、身体を跳ねさせている。
「フョークラ。あれは?」
「えっと、皮膚の何処に触れても気持ち良くなれる薬を試したら、鎧や服が触れるだけでもダメみたいで、自分から服を脱いだんです」
「えぇ……」
「で、そんな事になるとは思っていなくて、マリーナさんたちに触る試験をお願いしていたから……今は試験とか関係無しに、無邪気に遊んでいます」
「それ……治せるのか?」
「勿論です。今回は試験用なので、一時間もすれば勝手に効力が切れますよ」
とりあえず、マリーナはともかく、あの女の子には変な事を教えない方が良さそうなので抱きかかえると、
「マリもアレックスの方が良いー!」
「わ、私もアレックス様が良いです」
マリーナとデイジー王女もついてきた。
次はフョークラの薬を飲んだ騎士隊長に色々聞こうと思っていたので、変な事を口走らないように、聞き方には気を付けないとな。
「さて、騎士隊長だというアンタに問うが、ザガリーが奴隷売買をしていた事を知っているか?」
「勿論知っている」
「何故、騎士隊長であるにも拘らず、それを知っていてザガリーを止めなかったんだ!?」
「我々にも見返りがあったからだ。見逃す代わりに、我々にも金や女、良質な装備品が提供されていた」
流石に騎士隊長からのこの発言はショックだったのだろう。
デイジー王女がギュッと目を閉じる。
残念だが、これがこの国の騎士団の実情なんだ。
「……それから、ザガリーが別荘に少女を連れ去っているという話を聞いたのだが、その場所は分かるか?」
「あぁ。スラム街から少女を仕入れる時に護衛として一緒に行っていたからな」
「……そうか、地図を描いてくれないか?」
「わかった。少し待ってくれ」
……こいつが地図を描き終えたら、全力で殴ろう。
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