第878話 騎士の判別
ブラックドラゴンの姿になったオティーリエが、騎士団の倉庫のようなものを尻尾で薙ぎ払う。
その音を聞いて、詰所から騎士たちがわらわらと現れる。
「なっ!? ドラゴン……だと!?」
「待て! 第一騎士隊の副隊長を食べたドラゴンだ!」
「あっ! あの夜の! あれ以来、副隊長の姿が見えないのは……そんなっ!」
騎士たちがオティーリエの巨体を前にして怯んでいるが……副隊長を食べたというのは何だ?
オティーリエがそんな事をするとは思えないのだが、その話かま広がり、完全に怯えている。
「オティーリエ。太陰。この騎士たちの中から、悪人と繋がっている者だけを成敗したいのだが」
「とりあえず全員吹き飛ばしてから考えても良いかしら。流石にそんな区別がつけられないわ」
「私もドラゴンさんと同意見かなー。とりあえず殺すつもりで攻撃して、生き残った者だけ調べるとかかな?」
もしかしたら太陰なら何か出来るかも……と思ったが、流石に無理か。
「フョークラは……」
「うーん。素直になる薬を飲ませる事が出来れば分かるけど……この状況で飲ませるのは難しいから、一旦気絶させるなり、無力化させてからかなー」
「マリはねー、とりあえず全員にアレックスのを飲ませればわかると思うんだー!」
フョークラの薬は確かに凄いのだが、剣を構える集団にあの薬を飲ませていくのは中々難しいな。
前にフョークラが飲ませた時は、相手が完全に油断していたし。
……仕方がない。オティーリエのいう通り、拳で語らうか。
そう思ったところで、ミオが待ったをかける。
「ふむ。そうじゃ、良い事を考えたのじゃ。アレックスよ、我に任せるのじゃ」
そう言って、ミオがオティーリエに何かを指示し、唐突にデイジー王女の仮面を取った!?
「なっ……デイジー王女!? おぉっ! ドラゴンにばかり目がいっていたが、あの怪盗レックスも居るではないかっ!」
「という事は、あのデイジー王女は本物!? お、おい! お前たち! デイジー王女を取り戻すのだっ!」
「お、おー」
隊長格の男がデイジー王女を救出するように声を掛けるものの、誰一人として向かって来ない。
オティーリエが……ブラックドラゴンが怖いというのは分かるが、騎士としてそれで良いのか?
そう思っていたら、三人の馬に乗った女性騎士たちが向かってきた。
「私がドラゴンを引き付けます! 貴女は、あの怪盗を! そして、デイジー王女をお救いするのです!」
先頭の女性がオティーリエに向かって行き、二人目の女性が俺に向かって突っ込んで来る。
二人とも長いランスを構えて馬で突進してくるが、その攻撃は確かに威力はあるのだが、小回りが利かない。
だから……
「よっと!」
「え? ランスを……止めた!? 素手で!? ……きゃあっ!」
しまった。突き出されたランスを脇で抱えるように止めてしまったので、馬の上の女性が吹き飛んできた。
落ち方によっては重傷になってしまうので、ランスを捨てて抱きとめる。
その一方で、オティーリエに向かって行った女性は……オティーリエの咆哮で馬が萎縮して止まってしまった。
だがランスを捨て、剣を抜いてオティーリエに向かって行き……
「はぁぁぁっ! ……あぅっ!」
尻尾でペチンと弾き飛ばされ、太陰の近くに転がる。
ミオの指示なのか、オティーリエが手加減しているようだ。
そして、その間に迂回してデイジー王女のところへ馬を走らせた三人目は、マリーナの触手に絡めとられ、馬だけがそのまま逃げて行った。
「くっ! 次だ! 全員で行けぇっ!」
「う……お、おー」
「いや、無理だろ。ドラゴンは怖いし、仮面の男なんて馬上槍を片手で止めたんだぞ!? 人間じゃねぇよ」
いや、人間なんだが。
確かに力は強い方だと思うが、酷すぎないか?
「ふむ。王女を救おうという気概がある、本物の騎士はこの中には三人しか居なかったようなのじゃ」
「ミオさん。では、もう良いですよね?」
「うむ。残っているのは、ただのクズなのじゃ」
「じゃあ、そういう訳で……さようなら」
あー、ブラックドラゴンを前にしても、真の騎士なら向かって行くだろう……という事か。
最初の三人を除いた騎士たちに向けて、オティーリエが炎のブレスを吐き……こ、殺さないように手加減は頼む。
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