第172話 頑張るネーヴ

「あ、お兄ちゃーん! 見て見てーっ! ボク、頑張ったんだよー!」

「ノーラ。こんなに早く……ありがとう」

「ううん。人形さんたちも頑張ってくれたから。えっとね、多分人形さんたちも家を作るのに慣れて来たんだと思うんだー」


 東エリアに行くと、既に五軒の小屋が出来ていた。

 おそらく、これまで手伝ってきた人形たちが、作り方を学習したのだろう。

 先程の話だと、その学習した経験が人形たちに共有されるので、戦闘だけでなく、いろんな事で活躍してくれそうだ。


「アレックス。やはり人形たちは凄いぞ。一人に教えると、皆が出来るようになる」

「そうか。こちらも、人形たちを増やす事に成功したから、後で増えた人数を伝えるよ」

「それはメイリン殿に感謝だな。内政にまで口は出さないが、是非そちらも検討して欲しい所だ」

「分かった。そっちはメイリンと相談して決める事にするから、任せてくれ」


 一先ず、エリーの人形が五体増えたので、魔法攻撃班Bが組織され、他の班も再編成する事に。

 あとは、今すぐ食料が不足する事はないものの、人形が数十人増えているので、畑の拡張について話した所で、夕食に。

 そして、風呂の時間になり、


「ネーヴ。風呂が一つしかないので、前半後半に分かれ、皆で入っているんだが、ネーヴは前半で良いか?」

「よく分からぬが、その辺りは任せよう」

「じゃあ、ノーラたちと一緒に入ってくれ」


 前半組にネーヴを加えて風呂へ。

 ちなみに、ミオとニナに入れ替わってもらい、前半組を平和なメンバーに変えておいた。

 その間に後半組で食事の後片付けを行っていると、


「あ、アレックス! ユーディット殿から聞いたのだが、この地は一夫多妻制で、ほぼ全員がアレックスの妻だというのは本当なのか!?」

「ネーヴ? 概ねその通りだが、それより服を……」

「な……では私も含め、皆が呼んでいるアレックスという名は、真名というのも本当なのか」


 全裸のネーヴが走ってきて、質問攻めをしてくる。

 話を聞くと、ネーヴの生まれ育った国では、同性はともかく、異性で真名を呼ぶのは家族だけなのだとか。

 そもそも、俺たちには真名っていう概念すら無いんだけどな。


「くっ……私以外の妻とは一緒風呂へ入る仲。これは……もう手順などと言っている場合ではない。こうなったら、私から夜這いをするしか……しかし、まだ手を繋いですらないというのに」

「ネーヴ。とりあえず、服を……」

「ん? あぁっ!? 私とした事が、何とはしたない……いや、しかし何れ全てを曝け出すのだ。でも、まだ心の準備が……」


 独り言を口にしながら、何かを考え込むネーヴを脱衣所へ連れて行くと、身体にタオルを掛けておく。

 ついでに、着替えを済ませたニナが居たので、ネーヴを寝室へ連れて行ってもらう事にして、後半組も風呂へ。

 ……風呂では更に人形が増えそうになったが、メイリンに自重してもらい、寝室へ移動すると、真っ白なドレスに身を包んだネーヴが、ゆっくりと俺に近付いてきて、恥ずかしそうに口を開き、


「アレックス。その、今から私と……」

「≪夢見る少女≫……アレックス様。早くお風呂の続きをしよーっ!」

「マスター。私にも続きをお願いします」


 フィーネのスキルで眠らされてしまった。

 せめてネーヴが言おうとしていた言葉を聞いてからにして欲しかったのだが、今更仕方がない。

 一先ず、フィーネとソフィには待ってもらい、ネーヴを抱き上げてベッドに寝かせると、小さな寝室へ。


「二人とも。風呂で結構激しかったと思うのだが」

「それとこれとは別ですよー。やっぱり、こちらの部屋の方が、アレックスさんのでお腹いっぱいになりますらねー」

「お風呂は前菜。これからが本番です」


 二人とも程々に……程々に頼む。


……


 翌朝、フィーネのスキルで皆を起こしてもらうと、


「な、何故!? 何故、私はのうのうと眠っていたのだ!? 私はアレックスと……こ、こほん。おはよう、アレックス。良い天気だな」


 ネーヴが慌てふためいた直後、急に真顔になる。

 いや、ほんのり顔が赤いし、変な汗をかいていて、平静を装えていないが……昨晩のネーヴは何をする気だったのだろうか。

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