第727話 捜索

 ディアナとユーリが軽食を食べ終えたので、大通りへ。

 ひとまず、二人にパラディンの防御スキルをかけた状態で歩いて行く。

 ちなみに、街へ入った時と同じで、ユーリをおんぶしながら、ディアナと手を繋いでいる。


「にーに。ウチも抱っこー!」

「うーん……わかった」

「わーい! にーに、大好きー!」


 この状態は、何かあった時に攻撃しにくいデメリットがあるものの、何らかの攻撃を受け、突然ディアナと分断させられる可能性が極めて低いメリットがある。

 直接攻撃されるよりも、分断させられ、ディボーションの効果範囲から離される方が困るので、このまま大通りを歩く事に。

 ただこれによって、元から目立っていたのが、更に視線を集める事になってしまったが。


「うーん。大通りを通り抜けたが、何もなかったな」

「にーに。向こうに大きな広場があるみたいだよー! 案内板に書いてあるー!」

「なるほど。では、そっちに行ってみようか」


 ディアナが見つけた看板に従って歩いて行くと、大通りからすぐのところに芝生の植えられた広場があった。

 獣人族の憩いの場所なのか、芝生に並んで座る男女が多い。

 その広場を歩いていると、


「あっ! あの人間族……アレックスって人じゃない!?」

「凄いな。本当にアレックスだ」

「うわっ! アレックスが動いてる!」


 何だか、そこら中の人から名前を呼ばれるのだが。


「にーに。人気者みたいだねー」

「……この辺りに、俺の事を探し回った者が居るのかもしれないな」

「ウチたちも、そこの芝生に座る? その探している人が来るかも」

「なるほど。ディアナの意見はもっともだな。そうしようか」


 少し歩き、木陰を見つけたので、その下の芝生に腰を下ろす。

 だが、ユーリは相変わらず背中から抱きついてきているし、ディアナは胡坐をかいて座った俺の脚の上に抱きつくようにして腰を下ろす。


「ディアナ。向きがおかしくないか?」

「にーには、向こうを見るでしょ? ウチは反対側を見張ろうと思って」

「……いや、体格差がありすぎて、ディアナは座ったら俺の後ろを見る事は出来ないだろ」


 あと、ディアナは周りに人が多くて、かつ視線を浴びている状態で、腰を押し付けないように。

 流石にこの状況はどうかと思うので、ディアナを抱きかかえると、向きを変え、俺と同じ方向を向くようにして座らせる。


「むー! にーにとくっつきたいだけなのにー!」

「いや、ここへ来るまでずっと抱きついていただろ」


 そんな話をしながらも、ディアナが俺にもたれかかってきて……うん。何も起こらないな。

 ユーリが立ちっぱなしなのも可哀想なので、右脚にユーリを。左脚にディアナを座らせて、更に待つ。


「……今日は来ないのか?」

「どこか別の街へ移動した後なのかも」

「パパー。ねむいよー」


 何も起こらなさ過ぎてユーリが眠そうにしているし、ミオたちを待たせているので、諦めて馬車へ戻る事に。

 帰りは、おねむのユーリを抱っこし、ディアナに歩いてもらって……


「にーに! おんぶ……ううん。肩車ー!」

「えっ!?」

「ほら。にーにの更に上から見れば、変な人が見つかるかもー!」

「そ、そうか。わかった」


 了承すると、ディアナが自ら俺の背中を登り、脚で俺の首を挟んで肩に座る。

 防御スキルを使用しているとはいえ、こけないように気を付けよう。

 その状態で大通りの隣の道を歩いていると、


「あ、あれっ!? に、にーに! ……にーに?」

「ん? ディアナ、どうしたんだ?」

「あ、あのね……さっき、そこににーにが居たの。凄くよく似ていたの!」

「それは、どこだ?」

「えっとね、そこの細い道に入って行ったよー」

「わかった。このまま進むから、そいつを見つけたら教えてくれ」


 ディアナが俺そっくりの人物を見たと言う。

 左手でユーリを抱きかかえ、右手でディアナの脚を支え……流石にこの状態で走れないので、早歩きで進んで行く。

 ディアナは両手両足で俺の頭と首にしがみついているので、もう少し速度を上げても大丈夫かもしれないが……それでしがみ付くのに必死になって見失ってしまったら、本末転倒だからな。


「にーに、居たっ! 次を右に曲がったよっ!」

「わかった!」


 ディアナの指示で進んで行くと、人気のない公園のような場所へ。

 俺の目にも、はっきりと俺そっくりな人物の姿が見え、その隣にフードを被った男が居た。


「待て! お前が、俺を探している獣人族の男ではないのか!?」

「ん? まさか……本物のアレックスなのか!?」

「そうだ! お前は誰なんだ!」

「まさか、本物の方から来てくれるとはな。探したぞ! アレックス!」


 そう言って、男が目深に被っていたフードを上げた。

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