第726話 情報収集
大きな街が見えたが、何故かナターリエがぐったりとして、動かなくなってしまった。
周囲を見渡すと、起きているのは……ディアナ、ツェツィ、ユーリに、ミオとザシャか。
「アレックスよ。馬車を跳ねさせ過ぎなのじゃ。まぁ激しい揺れを隠す為なので仕方ないのじゃが」
しまった。ディアナたちが喜ぶので、故意に手頃な石を踏んでいたが、眠っている女性が大半だったな。
「それよりアレックスよ。あのナターリエを沈めた激しい突き……この腰の痛みが治ったら、当然我にもしてもらうのじゃ」
「私もしてもらうからね! ナターリエの声、凄かったもん。私は馬車の揺れよりも、ナターリエの声で起きたからね」
ミオもザシャも何を言っているのだろうか。
よく分からないが、先程の岩場で頑張ったおかげか、今すぐではなくて良いという事だったので、ヒマだというディアナを連れて街へ魔族領の情報収集をしに行く事にした。
「わーい! にーにとお出かけー!」
「ユーリもいくのー!」
「わかった。ツェツィはどうする?」
ディアナが行くというので、ツェツィも行きたそうにはしているのだが、
「お母さんが気絶しているって聞いたから、ツェツィは傍にいてあげる事にするー」
「そうか。すまないな」
「ううん。ツェツィなら大丈夫だから、お父さんはディアナちゃんと行ってあげて」
ナターリエと一緒に残る事を選択した。
うん。何かツェツィが喜びそうな物を街で探してみよう。
ちなみに、ミオもザシャも、腰が痛いので休憩するというので、俺とディアナとユーリの三人だけで行く事に。
街から少し離れたところで馬車を止め、ミオに結界を張ってもらい、かつザシャの闇で外から見えないようにしてもらった。
……まぁザシャの闇は、昼間だと逆に目立つというデメリットもあるのだが、ミオの結界と組み合わせれば大丈夫だろう。
早速街の門から中へ入ると、
「――っ!」
一瞬俺に視線が集まる。
何だ……と思ったが、人間が少ない大陸だったな。
更に天使族のユーリをおんぶしているし、目立たない訳がないか。
「にーに。まずはどこへ行くのー?」
「そうだな。情報収集の定番は酒場なんだが、この時間に開いているかな?」
とりあえず大通りを進んで行くと、酒場の看板があり……まだ昼前にも関わらず、店は開いていた。
だが中へ入ってみると、酒場というより、食事処として昼は営業しているみたいだな。
またもや視線を感じつつ、適当な席に着いて、飲み物と軽食を頼む。
「お待たせしましたー」
「ありがとう。ところで、少し聞きたいんだが……」
「あ、はい。実は私も聞きたい事があるんです」
飲み物を運んで来てくれた鼠耳の女性に話し掛けると、何故か逆に質問したいと言いだした。
何だろうか? とりあえず、先に話を聞く事にする。
「じゃあ、先にどうぞ」
「あの、もしかして貴方って、アレックスって名前じゃないですか?」
「そうだが……どうして、俺の名前を?」
「あはは、やっぱり。いえ、貴方を探している人が昨日来ていたので」
「えっ!? 俺を!?」
一体、何だろうか。
タイミング的にはブラックドラゴン絡みだろうか。
だが、奴に仲間が居るようには思えなかった。
……ブラックドラゴンは、レッドドラゴンやイエロードラゴンの上位種だと言うが、ヴァレーリエもナターリエも凄い魔力を持っている。
その上位種のブラックドラゴンは、二人よりも更に凄い魔力を持っているから、俺のように分身スキルを使えたりするのか?
だが、奴は間違いなく倒した。
分身スキルではなく、何か別のスキル……か?
「その俺を探していたという男は、竜人族だったりするのだろうか?」
「竜人族? いやいや、人間族の貴方や、こっちの天使族のお嬢ちゃんも珍しいけど、竜人族は更に珍しいですし、私なんて今まで一度も見た事ありませんよー! 普通に獣人族の男性でしたよ」
獣人族が俺を探す……?
このタイミングで?
うーん、わからないな。
ブラックドラゴン繋がりだとすれば……もしかして、別の呪いがあったのか!?
ナターリエたちには死を与える呪いだったが、奴の意志や記憶を強制的に継がせる呪いとか!?
だとしたら、その獣人族の男性を助けてあげなければ!
「その男性は、まだこの街に居るのだろうか?」
「さぁ……そこまではわからないです」
「そうか。ありがとう」
急いでその男を探しに行こうとしたのだが、
「にーに。待ってー! ウチ、まだ食べてないよー!」
「パパー。もうすこしまってほしいのー!」
「……ゆ、ゆっくり食べていいからな。えーっと、すみません。魔族領って聞いた事がありますか?」
ディアナもユーリも、まだ注文したものを食べていないので、元々聞こうとしていた事を女性に聞き……何も得られなかった。
とりあえず、大通りに出れば、向こうから接触してくる……よな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます