第553話 海獺族の島、ティーウィーを出発

「終わったみたいだな。あの妻の表情……いや、これだけの人数の海獺族の女性たちを本当に一人で満足させたのか。ありがたいな」

「それはそうなんだが……実は俺、少しだけ覗いたんだ。今、そこに居る男と同じ姿をした者が居るだろ?」

「あ、あぁ。五体程が、白く汚れ捲った部屋を綺麗にしてくれているな。それがどうかしたのか?」

「あの分身みたいなのが、もっと沢山居たんだ。全部で、二十体くらいいたんじゃないだろうか」

「な、なるほど。分身……とでも言うのか? そういうスキル持ちなのか。凄いな」


 集会場の外から、海獺族の男性たちが中を覗いているようだが……幸い、レヴィアやラヴィニアに、プルムは俺の陰となる位置だから大丈夫か。

 彼らの妻の裸を見るのは良いが、レヴィアたちが居るから、やめてもらうように言っておくか。


「皆さん。一旦離れて欲しい……すまない。中の様子が気になるのはわかるのだが、俺たちの仲間も居るので、外で待っていてもらえると助かるのだが」

「あ、そうだったな。すまない。だが、俺たちは妻しか見て……!? 何……だと!? 平常時でそのサイズ!? う、嘘だろ!? 人間族の男はそんな兵器を持っているのか!?」

「ん? どれど……れ!? ま、待ってくれ。俺たちは、今晩からこれと比べられるのか!? そ、そんな……腕と指くらいの差があるじゃないかっ!」


 注意というか、お願いをしただけなのだが、海獺族の男性たちがよくわからない事を言いながら逃げるように去って行った。

 俺に何か変な物でも付いていたのか?

 自分の身体を確認してみたが、特に変なところは無く、不思議に思っていると、後ろで海獺族の女性たちとプルムが何かを話していて……あ、纏まったようだ。


「お兄さん。あのねー、族長さんというか、ここに居る全員がお兄さんについて行きたいって言うんだけど、魔物も現れて危険でしょ? だからトゥーリアちゃんと、族長さんの娘のルクレツィアちゃんが同行する事になったのー」

「わかった。二人は全力で護る事を誓おう」

「でねー、この島に残る族長さんたちが、お兄さんの事を忘れるなんて無理だから……って事で、プルムの分裂を残していって欲しいって言っているんだけど、良いかなー?」

「プルムが構わないなら、良いぞ?」

「おっけー! みんなー! という訳で、お兄さんと同じ、プルムの分裂五体がこの集会場に残るから、大丈夫だよー!」


 プルムの言葉で、族長を始めとした海獺族の女性や少女たちが胸をなでおろしているようだ。


「貴方……娘のルクレツィアに、人魚族の事は伝えています。本当は私も同行したかったのですが、立場上出来なかったの。どうか、娘を頼みます……というか、結婚するから私は義母なのね」

「あの、うちの娘のトゥーリアの事もお願い致しますね。あ、義母さんって呼んでくれても、名前で呼んでくれても良いので、ここティーウィーへ寄った時には、またお願いしますね」

「……えーっと、一先ず二人をお預かりさせていただきますね」


 それから、海獺族と一緒に昼食をいただき……何故か海獺族の男性たちが怯えていたが、西の海に向けて出発する事に。

 族長や海獺族の女性たちが見送る中、海獺族の男性たちが船を浜辺から押してくれて……レヴィアが海竜に姿を変える。


「えっ!? あの女の子は……ま、まさか竜人族だったのか!?」

「すまん。世話になった」

「あ、あぁ。トゥーリアやルクレツィアを連れて、また里帰りをして欲しい」

「わかった! では!」

「それから、竜人族の海竜種は……」


 海獺族の男性が何か言いかけていたのだが、レヴィアが凄い速さで船を引き、あっという間に姿が見えなくなる。

 何か伝えたそうな気がしたが……まぁトゥーリアの父親が言っていたように、いずれ二人を連れて戻って来る事もあるだろうし、何かあればその時に教えてくれるだろう。

 そんな事を考える一方で、船の上ではトゥーリアとルクレツィアから抱きつかれる俺を、ユーリが心配そうに見てくる。


「あのね、パパはこしがいたいんだってー。だから、ほどほどにしてねー」

「あー、昨日も今日も凄かったもんねー! でも、大丈夫! 私に任せてー!」

「マッサージができるのー?」

「ううん。実は私、薬師のジョブなんだよねー! 腰に効くハーブを使った湿布があるから、これをアレックス様の腰に……こんな感じかな」


 トゥーリアが俺の腰に何かを貼ると……腰が熱い気がするのだが、大丈夫なのだろうか。

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