第467話 モニカVSヴィクトリア
崖の上に出ると、レヴィアの案内でモニカが居るという場所へ。
昨日訪れたヴィクトリアのテントの近くへ向かうと、モニカとヴィクトリアの声が聞こえてきた。
「さ、三千、六百……」
「ふっ、ヴィクトリアよ。もうへばっているのか? そろそろ諦めたらどうだ?」
「な、何を言っているのだ? これしきの事でへばる訳がないだろう。五十……七っ!」
何かの数字を数えているようだが……って、人だかりが出来ていて、二人の様子を見る事が出来ない。
ここに居るのは全員女性のようだが……ヴィクトリアが言っていた、アマゾネスという部族だろうか。
「あ、アレックスさん!」
「ん? ジェシカ……これは一体、何の騒ぎなんだ?」
「いえ、その……朝になると、アレックスさんの分身が消えてしまったので、スクワットで対決だと言っておりまして。何でも、下半身が重要だからと」
スクワット……確かに下半身を鍛える運動ではあるが、何の為にその運動をしているんだ?
ジェシカが道を作ってくれたので前に出てみると、モニカとヴィクトリアが全裸で大きく足を開いた状態でスクワットを……いや、マジで何をしているんだよ!
「ジェシカ。全裸なのは何故なんだ?」
「えっと、アレックスさんが外で……その、ついでにヴィクトリアの羞恥心を克服させる為だそうです」
「そ、そうか」
「アレックスさん。私はまだ少し抵抗があって、親や姉妹の前では厳しいですが、仲間内の前でならもう大丈夫ですから」
……ジェシカは何の話をしているのだろうか。
とりあえず、対決が全く終わりそうにないので、二人の前へ行って、やめさせる。
「ご主人様っ! 私には及びませんが、このヴィクトリア……なかなか見どころがありますよ!」
「アレックスさん。正直言って、妹に見られていたと気付いた時は泣きそうでした。ですが、何とか耐えきりましたよっ!」
「ふっ。だが、人前でおし……聖水を出せないようでは、まだまだ。これからも自主トレーニングに励むように」
「わかりました。いつか、モニカさんを超えてみせるんだからっ!」
そう言って、足が限界なのか、ヴィクトリアが抱きついてくる。
モニカはまだ余力があるようで……って、とりあえず服を着てくれ。
ここに集まっている人たちの目が、物凄く冷たいから。
そう思っていると、中から一人の少女が走り寄って来た。
「あ、あの……貴女が、アレックスさんなのですかっ!?」
「あぁ、その通りだが?」
「……お、お姉ちゃんに変な事をさせないでくださいっ! お願いですっ! お姉ちゃんは、私たち遊撃部隊の隊長なんですっ! 何があったか知りませんが、お姉ちゃんを元に戻してっ!」
「えーっと、お姉ちゃんというのは、ヴィクトリアの事か?」
「そうだよっ! お姉ちゃんは、こんな変な事をする人じゃなかったもん! もっと格好良くて、立派な人だったもん!」
昨日会ったばかりなので、以前のヴィクトリアがどのような者だったのかは知らないが、少なくとも妹の前で全裸で開脚しながら運動するような女性ではなかったのだろう。
どうしようかと考えていると、俺に抱きついたままのヴィクトリアが顔だけ上げる。
「違うの。私たちは知らなかったの。アレックスさんは凄いのよ……今夜、それをアレックスさんがきっと証明してくれる。興味がある者は、月が出たら私のテントへ来なさい。では、解散!」
「お姉ちゃん……」
ヴィクトリアの言葉で、妹を含め、アマゾネスの女性たちが散って行った。
えっと、ヴィクトリアは夜に何をする気なんだ!?
怖いので触れずに居ておくが、
「ヴィクトリア。この辺りに森はないだろうか」
「森……ですか? でしたら、ここから少し北へ行った所にありますが……」
「なるほど、ありがとう。あと、申し訳ないのだが、今から少しだけモニカと別の場所へ行って来る。出来るだけ早く戻って来るから、それまでリディアたちをテントで待たせてくれないだろうか」
「それは構いませんが、モニカと何をされるのですか? 私はご一緒させていただけないのですか!?」
「すまない。モニカのスキルは本人以外の女性には使えないんだ」
「一体何のスキルを……って、ズルいですっ! 朝から外でモニカと……」
空気を読んだモニカがすぐに転移スキルを使ってくれ、六合の所へ。
クララを経由して、港町の魔法陣からシェイリーの所へ来たのだが、
「アレックスよ。どうしたのだ? 何やら元気がないようだが、皆が待っておるぞ」
「ち、違うんだ! イネスを……イネスを呼んでくれっ!」
「はいっ! 勿論、居りますよ。うふふ……ご指名だなんて、嬉しいです」
いや、違う! イネスが来てくれたのは嬉しいが、してもらいたい事が違うんだぁぁぁっ!
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