第797話 姿を見なかった女性たち
「きゃぁぁぁっ!」
翌朝、女性の悲鳴で飛び起きる。
「んぅっ! アレックス。いきなり起き上がると、ビックリする……凄かったけど」
「レヴィア!? それより、今悲鳴が……」
「……心配ない。今のは歓喜の悲鳴」
俺の上に居たレヴィアがよく分からない事を言うが、離れてくれないので、抱きかかえたまま悲鳴が聞こえた場所に行くと、
「アレックス様の姿をしたプルムさんが増えてますぅ!」
「これで、順番待ちが少しマシになりますね」
「もしかしたら、昨晩みたいに前後同時になんて事も……」
レヴィアの言う通り、マーガレットや女性従業員たちが喜んでいた。
「……言った通り」
「……すまん。そうだな」
「……それより、続き。走って来るの良かった……」
続きを……と言いながら、レヴィアが気を失ったので分身を消し、屋上の温泉で身体を綺麗にする。
先程、俺の姿をしたプルムが六体いたんだが……確かララムバ村には元から三体プルムの分裂体が居たはずだ。
昨晩でまた三体増えたのか。
まぁあれだけの状態だったというのに、部屋も屋上も綺麗で、分身が増えているという事は、プルムが沢山取り込んだのだろう。
「アレックスー! 大変! アレックスが消えちゃったのー!」
「マリーナ。いや、あれは俺がスキルで生み出した分身なんだ」
「もう出さないのー?」
「そろそろ出発するからな」
昨日はマリーナとモニーを引きはがすのが本当に大変だった。
マリーナは、ある程度お腹がいっぱいになったところで満足して自らベッドへ向かってくれたが、モニーに至っては閉鎖スキルを使って、俺や分身に抱きつかないようにするハメになってしまったからな。
マリーナと共に部屋へ戻り、着替えを済ませ……モニーの所へ。
「父上、酷いです! 可愛い娘を閉じ込めるなんて!」
「いや、結界をベッドの広さまで広げておいたから、身動きが取れないという事はなかったと思うんだが」
「それはそうですが、隣の部屋で皆が楽しそうにしているのに、私だけ参加出来ないなんて!」
「参加がダメだと言っているんだって」
基本的に分身たちは自動行動だが、この部屋には入るなと指示しておいたので、モニーやニース、眠った後のマリーナは無事のようだ。
「パパー、おはよー!」
「おはよう、ニース。ニナと一緒によく眠れたか?」
「うん! あ、でもね、よなかにめがさめたら、ママがいなかったのー! ……あさには、となりにいたけど」
ずっとニースと一緒に居たニナが、夜中に居なくて朝には戻っていた?
何だろう。何かに巻き込まれたのか?
「え、えーット、ニナだってお兄さんの事が好きなんだから、仕方ないよー」
あ……そういう事か。
いやその……うん。ニース、仕方ないんだ。いろいろあったんだよ。
ひとまず、朝食をいただき、出発する事にしたのだが、
「おはようございます……」
「ヴィクトリア、おはよう」
「……アレックス様。どうして……どうして分身を消されたのですか?」
「え? いや、朝だし……」
「私は、皆が楽しんでいる部屋のど真ん中で一晩中放置されたんです! 朝になって、気付いたマーガレットさんがやっと外してくれたので、慌てて分身さんのところへ行ったら、いただく直前に消えてしまって……あんまりですぅぅぅっ!」
あー、そういえばヴィクトリアは拘束されていたんだっけ。
「えーっと……ざ、残念だったな」
「アレックス様! 今から一緒に温泉へ……」
「いや、仲間を迎えにいかないと行けないんだ」
「でしたら、私も同行させていただきますっ! こんなの辛過ぎますぅぅぅっ!」
ヴィクトリアが割と本気で泣きそうになっていて……ま、まぁ新しい船は少し大きくなっているし、乗れるだろう。たぶん……。
それから、トゥーリアとルクレツィアがやって来て……二人は物凄くご機嫌だな。
いや、何があったかは聞かないけどさ。
「あれ? レヴィアは朝まで起きていたから寝かせたんだけど……グレイスはどうしたんだ?」
「そう言えば……昨日は見てないねー」
「あっ! アレックス! もしかして……ちょっと見てくるっ!」
何かに気付いたルクレツィアが何処かへ走って行き、暫くして慌てて戻ってきた。
「えーっと、プルムー! ちょっと来てー! 流石に人前に出せる状態じゃないんだよー」
「え? ルクレツィア。グレイスが居たのか?」
「うん。居たんだけど……グレイスは私たちやレヴィアみたいに一晩中し続ける体力はないのに、個室で一晩中アレックスの分身と過ごしたんだろうねー。羨まし……じゃなくて、大変な事になっているんだー」
ルクレツィアが、命に別状は無さそうだ……と言って、プルムを連れて何処かへ行ってしまったが、本当に大丈夫なのか!?
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