第714話 呪いを受けた少女

「アレックス。この亡くなっている女性なんだが、おそらく一瞬で亡くなっている。先程の呪いは、相当強かったようだ」

「じゃあ、仮に俺たちが急いで来ていたとしても……」

「助けるのは難しかったと思う。だが、この女性は……」


 倒れている女性を調べていたザシャが何か言いかけたところで、ディアナがやって来た。


「にーに! ユーリちゃんとシアーシャさんが大至急来て欲しいって!」

「パパー! こっち! いそいできてー!」

「アレックスさん! アレックスさんの力で、この少女を助けられるかもしれませんのっ! 急いでくださいませ!」


 モニカの言葉に続いて、先程の少女から離れずに、ユーリとシアーシャが大声で俺を呼ぶ。

 ザシャには悪いが、助けられる命は助けたい。

 急いでユーリたちの所へ行くと、シアーシャが状況を説明し始める。


「この少女は、あのブラックドラゴンの呪いに苦しんでおりましたの。ですが、呪いが弱まっていたので……おそらく向こうで倒れている女性が呪いの大半を受け、その効力を軽減させたからではないかと」

「だから、ユーリがのろいをけせたのー! でも、このこの、せいめいりょくが、ほとんどないのー!」

「急いでアレックスさんのアレを飲ませないと手遅れになりますの! 早く脱いでくださいませ!」


 命の危機に瀕しているから、助ける為に俺のアレを飲ませる……となる理屈がわからないが、本当に一刻を争う事態だという事で、アレを少女の口に。

 ザシャと一緒に居た分身は解除したが、ミオやモニカたちと居る分身はそのままなので、結衣が離れてくれるだけでアレが少女に……うーん。罪悪感が凄いんだが。


「ユーリちゃん、どうですの!?」

「まだ! パパー! それ、もっとたくさん!」

「アレックスさん。私もお手伝い致しますので、分身を!」


 シアーシャを皮切りに、ディアナと結衣も参戦し、いつの間にかザシャも混じって分身たちが頑張り……ビクッと少女が動いた。


「シアーシャ。今、少女が動いた気が……シアーシャ?」

「~~~~っ! ……はぅっ!」

「お、おいシアーシャ? この少女の様子を見て欲しいんだが」


 ダメだ。シアーシャが気を失っている。

 急がなければと、分身を本気モードにしたのが、まずかったか。

 ザシャとディアナは気を失っていないが、シアーシャは元々体力がないからな。


「パパー! それ、ありがとう。たぶん、もうだいじょーぶだよー!」

「ユーリ、ありがとう。と、とりあえず、緊急事態だったから仕方ないけど、あんまりマジマジと見ないようにな」


 ユーリが、どうして? と不思議そうにキョトンとしているけど、それよりこの少女だ……って、何だ!?

 突然抱きついて来たぞ!?


「お、おい。君!? 何を……」

「んぅ……美味しい。もっと……」

「こ、こら。吸っちゃダメだ」


 ディアナよりも幼く見える金髪の少女が、俺のアレから離れない。

 だが、体力を回復させようとしているから、そのままにしておい方が良いとザシャに言われ……うぅ、本当に良いのか?

 だが、ザシャの言う通りそのままにしていると、少女が俺を放して身体を起こす。


「あの……魔力。ありがとう」

「え? あ、あぁ。大丈夫か?」

「うん。それより、お母さんは……お母さんっ!?」


 ザシャと共に亡くなっているのを確認した女性のところへ、少女が駆け寄り、その身柄に覆いかぶさる。


「お母さん……ヤダっ! ツェツィを一人にしないで! お母さーんっ!」


 察するに、この少女……ツェツィは母娘でこの牢に囚われていたようだ。

 ツェツィが目を覚ましたから分身を解除すると、ザシャが俺の傍にやって来て、耳打ちする。


「……さっき言いかけた事だが、この女性と少女は竜人族だ。おそらく娘を守る為に、母親が自ら呪いを受け入れ、その力を削減したのだと思う」

「……くっ! どうしてこんな呪いを……」

「……それはこの子に聞いてみるしかないな。落ち着いたら、少しずつ聞いてみよう」


 ザシャと小声で話し、ツェツィが落ち着くまで静かに待つ事にした。

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