第803話 ようやく辿り着いたニナの故郷
「で、では、出発……しようか」
「お兄ちゃん。どうしたのー? 何か変だよー?」
「い、いや、大丈夫だ。問題ない」
船に乗り込んだノーラが、不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
だが今も尚、俺の分身がネーヴやドロシーたち、ウラヤンカダの村の女性たちから襲われているとは言えない。
というか、分身が一体しか居ないのに対して、女性が二十人以上居るから、ありとあらゆる所を……うん。結衣にはいつも世話になる。
「……アレックス。出発はいいけど、何処へ?」
「この北大陸の南西方面や、北西方面は行った事がないから、その辺りを調べるというのが一案ある。だがその前にニナを故郷に帰してあげるのが先かと思っているんだ」
「……レヴィアたん、西大陸まで泳ぐ?」
「いや、このままモニーからメイリン経由で天后に連絡してもらい、一度アマゾネスの村へ戻ろうと思う」
「……わかった」
という訳で、レヴィアにそのまま船の上で待機してもらい、天后の転移スキルでアマゾネスの村へ。
西大陸の地下洞窟へ行くし、白虎にも会うだろうからと、メンバーを見直して、ニナ、ノーラ、グレイス、ミオ、モニーはすぐに決まった。
フョークラは、アマゾネスの村で待つか聞いたのだが、
「だ、ダメですっ! アレックス様には、私の村へ来ていただかなければ」
「……そうだった。フョークラも故郷に帰りたいんだったな」
「はい! 是非、村の皆を紹介させてください」
植物が殆ど無い地下洞窟へ行くのだが、ついてくると。
大丈夫だろうかと思いつつも承諾し……モニカを連れて行くかどうかで、少し悩む。
「モニカ。俺たちは今からニナの故郷、ドワーフの国へ行くのだが……一緒に来るか? このアマゾネスの村や、第四魔族領で待つという選択肢もあるが」
「私は……アレックス様と共に居る」
「わかった。では行こうか」
ドワーフの国では変な事にならないだろうし、モニカが行きたいというのであれば、一緒に行こう。
ヴィクトリアもついて来たがったが、久々に村へ帰って来たという事もあり、今回は残る事に。
そして、
「マリはアレックスと一緒に行くー」
「構わないが、地面の下だし、水がない場所だぞ?」
「別に良いもん。マリは平気ー」
マリーナが意地でも着いて行くと言わんばかりに抱きついてくるが、今は分身が大変な事になっているので……いや、触手まで使ってしがみつかないでくれよ。
まぁ今回はニナを故郷に連れて行くだけだし、ネーヴたちさえ満足すれば、後は大丈夫だろう。
分身一体で村の女性全員の相手をしているので、かなり大変なようだが。
「……っと、そうだ。天后に聞きたい事があるんだ」
「何でしょう? 私も混ぜていただけるのでしょうか?」
「な、何の話だ?」
「え? もちろん、結衣さんとマリーナさんの話ですよ?」
いや、結衣はともかく、そこにマリーナを含めるのは勘弁して欲しいのだが。
「……こほん。そういう話ではなく、ハヤアキツヒメという神を知らないかと思って」
「名前は聞いた事がありますの。セオリツヒメとペアのような神ですね」
「そう、そのハヤアキツヒメなんだが、何処に居るのだろうか」
「すみません。流石に場所までは存じておりませんが、水に関する場所ではあるのだろうとは思いますの」
残念ながら、天后も知らないか。
ひとまず、神様や水に詳しそうな者に聞いていくしかないな。
だが、それはそれとして、グレイスに前の船を出してもらい、天后の力で西大陸へ。
いつもの通り地下に降り、ドワーフの女王から貰った地図に従って、トロッコを進める。
……と言っても、途中の分岐ポイントに居るドワーフ族の兵士に言って、ポイントを切り替えてもらうだけだが。
そうしてトロッコを進めていると、切り替えポイントではなく、トロッコの終点に着いてしまった。
途中で道を間違えていなければ、ここがニナの故郷のはずなのだが。
「すまない。ここはモザビーという国で合っているだろうか」
「その通りだが……何者だ? 人間族に、獣人族……ダークエルフだとっ!? 貴様ら……誰か来てくれっ! 応援を頼むっ! ダークエルフだっ!」
「え……アレックス様。私、何かやっちゃいました?」
やっとニナの故郷へ着いたと思ったら、何故かドワーフ族の女性兵士たちに囲まれてしまった。
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