第829話 軟化する女性達

 フョークラが飲ませた薬により、騎士団の支部長があっさり引き下がって行った。

 中々に恐ろしい薬なのだが、この薬を作ったフョークラとしても、想定以上の効果だったらしい。


「ですが先程の薬は、女性相手だとそれ程効果は無いかもしれませんね」

「そうなのか?」

「はい。どうやら男性のアレを無能にする毒との相乗作用で、これ程の効能があるみたいです。ですので、アレを無能にする薬の効き目がない女性には、あまり……と言ったところです」


 まぁその……なんだ。

 ひとまず、男性相手には恐ろしい薬だというのはよく分かったよ。


「それより、君たちは大丈夫か?」

「は、はい。えっと、助けていただいて、ありがとうございます……で、良いのでしょうか? それとも商売敵というか、私たちは商品として奪い合いに巻き込まれたのか……」

「おっと、説明出来ていなくてすまない。俺たちは、ドワーフの国から依頼されて、君たちを助けに来たんだ。海ではドワーフの国の船が待機しているし、先に運ばれた五人の女性たちも保護している」

「えっ!? そ、そうだったんですね! すみません。牢を素手で破壊したりされたので、何か人外の戦いに巻き込まれたのかと……」

「いや、古い建物だと言っていたし、単に壁が脆くなっていただけだと思うんだが」

「……あっ、はい。きっと、そうですね」


 何故かドワーフの女性たちに距離を置かれている気がする。

 いや、剣で壁を斬って、万が一にも壁の反対側に居る女性たちに当たってはダメだと考えて拳で穴を開けたのだが、それが裏目に出たというか、素手でも危険だと思われてしまっているのかもしれない。


「クックック。囚われていて不安だったとは思うが、アレックスは信じられる。それは、騎士であり、クルセイダーのジョブを授かっている私が保証しよう」

「いやあの、こう言ってはなんですけど、この国の騎士に保証されても……」

「クケェッ! 確かにな! だが、これからは違う! 私とアレックスが正義の力をもって、この国を変えていくのだっ!」


 いや、俺はドワーフの女性たちを救い出すつもりではいるが、国の改革は俺の役目ではない気がするのだが。

 国に巣くう悪を潰す事はやるが、政治的な事は然るべき者に対応してもらいたいところだ。

 しかし、それよりも今は、このドワーフの女性たちを船に連れて行きたいのだが、何故かこの場を離れようとしてくれない。

 俺よりも女性の方が話を聞いてくれるだろうから、モニカやグレイスを連れてこようかと思っていると、俺の背中に抱きついていたモニーが床に降りる。


「貴女たちが、これまで酷い目にあったというのは分かった。だから、父上について来れば、これまでの暮らしが劇的に変わる事を私が証明しよう」

「人間族のお嬢ちゃんが? ……一体、何をどうやって?」

「簡単な事っ! これを見なさいっ!」


 そう言って、モニーが俺のズボンを下着ごと膝まで下ろす! ……って、何をしているんだっ!


「わっ! す、凄い……」

「通常状態で……これ!? 実は人間族じゃなくて巨人族なのかな? 巨人族を見た事はないけど……」

「ふっ! 父上の実力がわかっただろう。父上についてくれば、凄い夜を過ごす事が……はぅっ! 父上、痛いですー」


 慌ててズボンを上げ、モニーには軽めの……かなり弱めのデコピンをしておいた。

 まったく。奴隷にされていた女性たちに、何てものを見せるんだよ。


「す、すまない。今のは心から謝罪する」

「こ、こほん。その……えっと、ひとまず一緒に捕らえられていた五人と相談したいし、会わせてくれるのであれば、貴方たちについて行こうと思うのだが」

「そ、そうよね。それに、国へ連れて帰ってくれるっていう訳だしね。あと、この街から海までは距離があるし、一泊……いえ、二泊はするはずよね!」


 何故かはわからないが、ドワーフの女性たちが急に態度を軟化……もしかして、フョークラが薬を使ったのだろうか?

 先程の騎士たち程ではないものの、女性にも少しは効果があると言っていたし。


「いやー、流石アレックス様ですねー。さっきの薬なんて使わなくても、女性を説得出来ましたね」

「え? フョークラが何かした訳ではないのか?」

「いえ? というか、私ではなくモニーちゃん……あ、それより早く行きましょうよー! 私もご褒美が欲しいですし」


 よくわからないが、ひとまずフョークラは薬を使っていないのか。


「ク……ククッ。あ、アレックス……は凄いのだな。う、うむ。それでこそ、我がパートナーだ。は、ははは……」


 何故かブレアの態度も変な気がするが、ドワーフの女性たちを連れて、馬車へ戻る事にした。

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