第455話 飛んで火に入る海の魔物

「アレックスー! これ、しゅごいの! 歩きながら……もっと!」

「いや、レヴィア。それより、海の方を見てくれ」

「んっ……ラヴィニアが気持ち良さそうにしてる。アレックス、レヴィアたんも見せつけろって事?」


 レヴィアの目線の先を追ってみると、家が動いていないからか、ラヴィニアが水中の方が良いからか、それとも両方か……俺の分身の一体と共に、ラヴィニアが海面から気持ちよさそうな顔を出して居た。

 ……って、ラヴィニアの様子を見に来た訳ではなくてだな。

 ミオも言っていたが、何かが迫ってきているような気がするんだ。


「あ、アレックスさん。む、向こうから、大きな魔力が~~~~っ!」

「リディアっ!? リディアーっ!」


 ミオに続いてリディアも気絶した……って、分身を解除すれば良いんだっ!

 ようやく解決策に気付いて分身を解除すると……


「あなた……酷いです。こんなに中途半端な状態で。あと少しでしたのに」

「ご主人様。こんなところで止めるなんて……六合殿たちも絶対に怒っていると思いますよ?」


 ラヴィニアとモニカが頬を膨らませる。

 いや、それどころではないんだってば。


「ラヴィニアもモニカも、向こうを――リディアが言っていた方角を見るんだ。何かが来るぞっ!」

「……確かに、何かが迫って居るように思えます。ですが、海中で……見て来ましょうか?」

「……仕方が無い。様子だけ見て来てくれ。≪ディボーション≫」


 ラヴィニアにパラディンの防御スキルを使用すると共に、閉鎖スキルを解除して見に行ってもらう事にした。

 ……って、ミオが気絶しているからか、隔離スキルも解除されているな。

 いや、ミオを気絶させてしまったのは俺なんだが、とにかくラヴィニアが戻って来るまで全力で警戒しなければ。


「あの、ご主人様。真剣な顔で海を見つめられておりますが、レヴィア殿とは続けるのですね」

「あ……そうだった。レヴィア、一旦終わるぞ」

「えー……まぁでも、沢山愛してもらえたから、良いよー。じゃあ、綺麗にしてあげるー」


 ズルい! と言いながら、モニカがレヴィアと共に……って、待った! ラヴィニアが戻って来たからっ!


「ラヴィニア! どうだ?」

「あ、あの……巨大な貝が向かってきます」

「貝? えっと、貝って向かって来るのか?」

「はい。海の中では普通に泳ぎますが……ただ、あの大きさの貝は見た事ありませんが」

「ラヴィニアが見た事が無いというのは相当だと思うが……魔物の可能性もある。ラヴィニア、海から上がるんだ」


 手を差し伸べ、ラヴィニアを引き上げたところで、ふと思う。

 もしもエリーの人形が居たら、海に向かって雷魔法を使ってもらえば、周辺の魔物を一気に倒せたのではないだろうか。

 ……いや、俺たちも危険だし、ダメか。

 人形たちに言って、気絶しているミオとリディアを家の中に入れて貰い、海面に目を凝らしていると、何かが水面に近付いてきたようだ。

 その直後、人くらいの大きさの貝が海から姿を現したかと思うと、そこから大きく跳躍してきたっ!


「なっ!? 貝は跳ぶのかっ!? ……というか、この大きさは魔物だよな? よっ!」


 跳んで来て、俺に噛みつこうとしていた? 貝をキャッチすると、開いている貝を力任せに閉じる。

 そのまま、閉鎖スキルで動けないように閉じ込めた。


「……レヴィア。ミオとリディアが、何かが近付いてくると言っていたのだが、この巨大な貝だよな?」

「うん。内包している魔力が多い。でも、魔族とかではなさそう」

「そうなのか。流石は海と言ったところか。これだけ広い海だからか、普通の魔物が巨大で、かつ魔力も多いのか」

「そうかも。……アレックス。お腹空いたし……これ、食べる?」

「なるほど。それはアリだな。俺もスキルを得られるし、よし食べよう」


 最近は女性からスキルをもらう事が多かったが、元々は魔物を食べる事によってスキルを得る事が出来るエクストラスキルだったんだよな。

 貝だし、防御系のスキルだろうか。それとも、やはり海や水に関するスキルだろうか。

 よくよく考えたら、この海の上での生活は、スキルを大量に得るチャンスだと気付き、リディアを起こして調理してもらう事にした。

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