第384話 謎の分身スキル

「えーっと、リディア……」

「……あっ! ち、違うんです! アレックスさん。さっきのはちょっと私ではないというか、料理を粗末にしたモニカさんが悪いというか……」

「あぁ、さっきのはモニカが酷かったな」


 食事中にふざけ過ぎたモニカに教育的指導を行ったリディアが我に返り、少し落ち込んでいたので全力でフォローする。

 モニカはもちろん、ドロシーも反省している様子なので、リディアの行動は良かったと思う。

 ……未だにレヴィアやナズナが怯えている気がしないでもないが。

 しかし話題を変え、いつもの明るい雰囲気で食事を終えたと思ったのだが、


「あ、あのアレックスさん。私の事を嫌いになってしまいましたか?」

「え? まさか。リディアは何も間違った事はしていないし、そもそも俺がリディアを嫌いになる訳がないじゃないか」


 リディアはまだ気にしているようだ。

 最初に魔族領へ来た時から一緒に居てくれて、今の俺があるのはリディアのおかげであり、恩人であり、恋人であるリディアの事を嫌う訳がないだろう。

 という話をしたのだが、


「では、アレックスさん。私の事を嫌いになられていないという証明をお願い致します」

「あ、レヴィアたんもー! き、恐怖を忘れさせて欲しいよー!」

「あ、あの、ご主人様。ドロシーもお食事が欲しいです」


 リディアと震えるレヴィアに、落ち着いたドロシーが求めてきて……って、ヴァレーリエたちも来たっ!


「そういう事なら、ウチも参加するんよ!」

「マスター。私にも魔力補給をお願いいたします」

「あ。そろそろ参加して良い雰囲気ですよね? アレックス様ー! 我々にもおこぼれをお願い致しますー!」


 ソフィやメイドさんたちも入ってきて……リディアが不安そうな表情をしているし、仕方が無いか。


「≪分身≫」


 諦めて分身スキルを使用すると……何か変だ。

 いつもと感覚が……んんっ!?


「あの、アレックス様。分身が物凄く増えております。しかも、最初から全裸の分身が何体か居るのですが」

「全裸!? それでか。やけにスースーするなと思ったのだが……って、どうして全裸なんだよっ!」


 分身は、その名の通り俺の姿をそのまま分けるので、衣服や装備まで全く同じ姿で現れる。

 だが、今回新たに増えた分身たちは何も身に着けておらず、ナズナの言う通り全裸で出現していた。

 でも、それにしても多過ぎないか!?


「全裸の分身は六体だから、俺を含めて十二人……って、どうしてこうなったんだ!?」

「ふっふっふ。アレックスよ。そんな細かい事はどうでも良いのじゃ。十二人も居るのであれば、皆満足出来るのじゃ。最近は雌が増えすぎて、困っておったのじゃ。さぁ楽しむのじゃっ!」


 そう言って、ミオが早速全裸の分身と所へ行き……くっ、やはり全裸の方とも感覚が繋がっているのか!

 つまり俺からすれば十二倍……ってヤバすぎないか!?

 どうしてこうなった……って、タイミング的にはドロシーから何らかのスキルを貰ったとしか考えられないか。

 ……って、十二倍はダメだっ!

 ミオに続いてリディアたちやメイドさんたちが全員参加して……耐えられる訳が無いっ!


……


 気付いた時には、部屋がとんでもない事に……なってないな。

 リディアに話を聞こうと思ったが、満足そうな表情で気を失っているので、俺から離れないレヴィアに聞いてみると、


「それぞれから零れ落ちたアレックスのは、ドロシーが全部吸収した。足に触れただけで吸収出来るみたい」


 木の精霊だけあって、あの根っこの性質が残っているようだ。

 ……昼前の毒の葉植物のような事は避けないといけないので、そこは注意が必要だが。


「とりあえず、どんなスキルを得たのかは確認したいな」

「ご主人様。という事は、私の出番ですね?」

「え? ……あぁ、まぁそうなるな」

「では、レヴィア殿。ご主人様と代わってもらいたい」


 モニカの帰還スキルは便利なのだが、使い方は不便なんだよな。

 そう思っていたのだが、レヴィアが離れようとしない。


「やだっ! モニカに代わったら、アレックスが何処かへ行っちゃうもん。しかも、暫くしたら分身も消すし」


 まぁシェイリーの所へ行ったら、だいたい分身を出す事になってしまうからな。


「し、暫くは消さないし、出来るだけ早く戻って来るよ」

「むー。早く帰ってきてよねー」


 物凄く嫌そうだけど、満足している状態だからか、レヴィアとモニカが交代し、


「あぅっ! き……≪帰還≫」

「え……もう、アレックスったら」

「アレックス様。フィーネもお願いしたいですー!」


 全裸で家に戻ってきてしまった。

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