第423話 カスミのお仕事
「さて、そろそろか」
それぞれソフィの魔力が相当溜まり、用事を済ませて戻って来た者たちからも何の文句も出なくなったところで、夕食を済ませて外へ。
夜も更けているので、流石に人通りが――特に女性が殆ど居ない通りを、カスミとミオの三人で歩いて行く。
ちなみに、気絶させている司祭を俺が運んで居るが、それはさておき、どうやら目的地の建物へ着いたようだ。
「お兄さん。いつもの待ち合わせ時間より早めに来たから、その司祭を置いておきましょうか」
「そうだな。今は気を失っているが、念の為に閉鎖スキルで動きを封じておこう」
「ついでに我のスキルで声が出せないようにしておくのじゃ」
という訳で、毎晩密会している場所へ司祭を座らせると、ミオのスキルで自由を奪う。
少し離れた場所へ身を潜めていると、
「司祭様……お待たせして申し訳ありません。今宵は心苦しいご報告となります。結論から申し上げますと、教会を影から支援しておりました、ベイラドの闇ギルド支部が何者かによって壊滅されました」
え? 闇ギルドの場所を聞き出す為にここへ来たのに、もう潰れているのか!?
思わず無言のままカスミに目をやるが、小さく首を振る。
カスミが知らないということは、サクラとナズナでもないだろう。
というかカスミと違って、この二人は俺の指示無しに勝手な事はしないだろうし。
だったらヴァレーリエか? リディアと一緒に買い出しへ行って居たし……虫の居所が悪くて、闇ギルドを潰したとか?
そんな事を考えていると、司祭を恐れているのか、男が早口でまくし立てる。
「そ、それでですね。一先ずギルドに居た者たちに話を聞き、潰した奴が女だという事は分かったんです。二十代半ばといったところで、ヒラヒラした服を着た、異様に素早い女だったと。まだ、どこの組織の者かは調べ切れていないのですが、笑いながら短剣で人を斬りつけるヤバい奴で……ただ、俺もその場に居て斬られたんですが、誰も死んでいないので、人を殺せない中途半端な奴――おそらく冒険者あたりではないかと思っているんですよ。とりあえず、ギルドの本部に応援をお願いしているところです」
ほぉ。そんな人材が居るのか。
特に悪人相手でも殺していないところが良いな。
しかし、それよりも困ったのが、闇ギルドの本部はこの王都ではないのか。
だったら、本部が何処にあるのか聞きたいが、司祭に喋らせる事は出来ないし……もう俺が出て行って、あの男から聞きだすか。
そう思ったところで、どうやらカスミが同じ事を考えたらしく、先に姿を現す。
「そこのオジサマ。ちょーっとお話しを聞かせても良いかしらぁ?」
「こ、この声に、そのシルエット! き、貴様! 昼間に俺たちのギルドを襲った奴じゃないか! どうしてここに!?」
「へ? カ……わ、私は知らないわよぉ?」
「ま、待て! 何が望みだ!? 金か!? 権力か!? どこの組織に雇われたんだ!? 俺たちにつけば、その倍……いや、三倍支払う! だから見逃してくれっ!」
「あ! この台詞……お昼も聞いたわね。もしかして、あの小さな建物の地下に居た、素人の集団……あれって、闇ギルドの支部だったの!? あまりにもお粗末過ぎて、闇ギルドだって気付けなかったわ」
あ、そういう事なのか。
昼にカスミたちが調査していた時点で、ついでに? 潰した相手が闇ギルドだったんだけど、カスミがそいつらを認識していなかったと。
「とりあえず、私が貴方たちに味方する事は無いわ。それよりも、闇ギルドの本部が何処にあるのか教えなさい。そうしたら、命は助けてあげるわよぉ」
「ふっ。そんな事を言って、人を殺した事が無いんだろ? そんな脅しに……ひぃっ!」
「……あのね。私は不必要に人を殺さないだけ。必要があれば殺すわよ? ……シノビだから」
カスミがいつものふざけた雰囲気を消し、殺気を放って……あ、男が失禁したな。
まぁ一般人が殺気を向けられたら、こうなるか。
それから、カスミがきっちり闇ギルドの本部を聞き出し、司祭共々縛ると、ミオの結界スキルで動けなくする。
「今回、我は来なくても良かった気がするのじゃ。早く帰って寝るのじゃ……はふ」
「そうだな。その闇ギルドの本部がある街へどうやって行くかは、明日考えるか」
「お兄さーん。ちゃんと聞き出した私にご褒美はー?」
一先ず欲しい情報が得られたので、ミオとカスミを連れて六合教の宿舎へ戻る事にした。
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